年功序列、終身雇用など、かつての日本の働き方が崩壊する一方で、まだまだ学生たちの間で健在といわれる「大企業神話」。それは何十年前と変わらない「人気企業ランキング」にも表れています。株式会社スタートライズ代表取締役社長、清水宏さんの『新卒はベンチャー企業へ行きなさい』は、そんな「大企業神話」にとどめを刺す一冊。就職活動を控えている学生はもちろん、転職を考えている社会人にも読んでいただきたい本書より、一部を抜粋してご紹介します。
* * *
AIに負けない人材になるための「鷹の目力」
AIが職場に普及して、細分化された業務が自動化されたとき、多くの会社員が必要とされなくなるか、より高度な業務へのシフトを要請されることになります。
このとき、多くの会社員、特に大企業で働いてきた会社員は、細分化された業務のスペシャリストとなってしまっているので、他のセクションや他の企業では使えない人材になってしまっている可能性があります。
しかし、このようにAIが普及したときでも必要とされる人材があります。
それはビジネスの全工程を俯瞰して見ることができる「鷹の目力」を持っている人材です。
そのような人材に20代あるいは30代前半の内になることができていれば、企業が手放すことはないでしょうし、もし転属や転職を考えた場合でも、若いですから比較的容易だと想像できます。
しかし、ビジネスの全体を俯瞰できる「鷹の目力」を身に付ける機会を得るためには、大企業の場合ではどうしても執行役員クラスにまで出世していなければなりません。これではほとんどの社員が「鷹の目力」を手に入れるチャンスが無いと言えます。
一方ベンチャー企業の場合は、一人に任される業務が広いですから、早くから「鷹の目力」を手に入れることができます。そのため、運悪くそのベンチャー企業が倒産したり、ステップアップのために転職しようとしたりするときも、どの会社でも力を発揮できるビジネススキルを身に付けていることになります。
あるいは自分で起業するときにも役立ちます。
ベンチャー企業で「鷹の目力」を鍛えやすい理由
ベンチャー企業では「新・バッターボックス理論」により、すぐに新規事業立ち上げのチャンスが巡ってきます。これは、「鷹の目力」を身に付ける絶好のチャンスです。
一方、大企業でも様々な業務を経験できるジョブローテーションがありますが、これは細分化された業務の最適化でしかないことは既に述べました。
それでは、大企業における新規事業立ち上げでは「鷹の目力」を身に付けるチャンスは無いのでしょうか。
結論から言いますと、非常に難しいでしょう。
まず、大企業で新規事業を立ち上げる場合は、いきなり大規模で始められます。維持しなければならない企業自体の規模が大きいため、回収する金額も大きくする必要があるのです。また、予算も潤沢です。
そしてプロジェクトチームも数十名から数百名で編成されるか、あるいは外部スタッフをたくさん抱えられるように大きな予算が用意されます。
その結果、はじめから営業チーム、企画チーム、開発チーム、購買チームなどといった分業化が行われ、業務の細分化が行われます。
このようなチーム規模と編成になってしまいますので、結局、全体を見ることができるのは、社内で選ばれた実績のあるエリートに限られます。そこではまだ実績が無い若い社員が、チャレンジする機会は与えられません。
そしてプロジェクトは綿密な計画に基づいて一気に展開されます。スタッフは自分の担当する業務だけを追いかけるのがやっとでしょう。
ですから、プロジェクトが成功しても、参加したメンバーには達成感はあるかもしれませんが、敷かれたレールに乗っていっただけで、特にスキルが身に付いたとは言えません。
しかしベンチャー企業では、いきなり大きな収益を必要としませんから、新規事業も小さなテストと改善を繰り返しながら育てていくことができます。その事業の成長と共に、新規立ち上げに加わったメンバーも成長していけるのです。
そしてそのような成長体験は、できるだけ若い内にしておくことが必要です。遅くとも30代前半までですね。
そして事業の立ち上げと成長を、全体を俯瞰しながら体験して身に付けた事業運営スキルは汎用性が高いですから、AIが普及しようとも職場が変わろうとも、役に立ちます。
新卒はベンチャー企業へ行きなさい
年功序列、終身雇用など、かつての日本の働き方が崩壊する一方で、まだまだ学生たちの間で健在といわれる「大企業神話」。それは何十年前と変わらない「人気企業ランキング」からも明らかです。株式会社スタートライズ代表取締役社長、清水宏さんの『新卒はベンチャー企業へ行きなさい』は、そんな「大企業神話」にとどめを刺す一冊。就職活動を控えている学生はもちろん、転職を考えている社会人にも読んでいただきたい本書より、一部を抜粋してご紹介します。