誰よりもお金にくわしいお金のプロ、村上世彰さん。著書『いま君に伝えたいお金の話』にはただのノウハウではない、お金に対する真摯な考え方、深い哲学が詰まっています。お金に振り回されることなく、上手に付き合っていくために知っておきたいことを、いくつかご紹介しましょう。
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まずは「お金を生む卵」をつくろう
どうやったら貯金ができるのでしょう。さいしょに話をしたように、大人になると、日々の暮らしのために出ていくものも多くて、なかなか貯金ができないものです。
とくに社会に出たての頃はお給料は少ないのに、家を借りなければいけない、会社に着ていくスーツも買わなくちゃいけない、などと、入るものに比べて出ていくものが多いので、貯金にお金を回すのはとても難しいでしょう。
それでも、落ち着いてきたら、僕は、たとえば稼いだお金の7割を生活費として使う、1割を趣味や楽しみのために使う、2割を何かのときのための貯金にする、そのくらいのバランスがいいのではないかと思っています。この2割が、「お金を生む卵」になります。逆にいえば、稼ぐお金の7割くらいでできる生活をする、ということです。
でも、どうやってお金がお金を生むんだろう? 君がもらったお年玉を引き出しのなかに入れておいても、絶対に増えません。お金が増えるにはルールがあります。
それは、お金を「回す=めぐらせる」こと。お金を「流れ」にのせるということです。山の頂上のせせらぎが、海の手前に来る頃には大きな川になっているように、お金は流れると増えていくのです。
お金を得たときに、まず一番にみんなが思いつくのは、銀行に預けることだと思います。すでに口座を持っている人もいるかもしれないけれど、明細を見ると、金利というものが付いていると思います。これは、少ないけれど、お金が生むお金です。
銀行は、いろいろな人からお金を預かり、そのお金を、必要としている人に貸します。銀行からお金を借りている人は、銀行に金利を払います。銀行は、お金を貸している人から金利を受け取り、その一部を、お金を預けてくれた人に払っているのです。こうして、銀行に預けたお金は、一応、社会のなかを流れてはいるのです。
お金の価値は時代とともに変わる
でも、最近、銀行が預かるお金に付く金利はとっても低いから、銀行に預けてもお金はそれほど増えません。日本の銀行の平均的な金利は0.001%くらい。たとえば100万円を1年間銀行に預けても、金利としてもらえるお金はたった10円です。これでは、「金の卵」を生んでいるとはいえません。
そしてもうひとつ、銀行に預けておくとお金が減ってしまうということを覚えておいてほしい。この「減ってしまう」というのは実際の金額が減ってしまうということではありません。経済が成長している国においては、今日持っている100円は、5年後に同じ100円の価値を持っていないことがあります。こうしてお金の持つ価値が下がっていくことをインフレーションといいます。
たとえばいまから約50年前の1970年頃にはラーメン一杯を250円で食べることができました。ところがいまラーメン一杯を食べようと思うと、最低でも500円くらいかかります。
なぜ値段が倍になったのか? 答えは、50年の間に、1円の価値が半減したからです。50年前に100万円で買うことのできたモノをいま買おうとすると200万円を支払わなければならないのです。
そうした状況で50年前に100万円を銀行に預けたと想定します。金利を0.001%とすると、いま100万500円になっています。
さて、ここが考えどころです。たしかに額面上は500円増えたものの、100万円の価値自体が半減している。銀行に預けても、お金が「減ってしまう」というのは、こうした状況のことを指しているのです。
いま君に伝えたいお金の話
いわゆる「村上ファンド事件」で一躍、時の人となった村上世彰さん。当時、メディアから激しいバッシングを受けていたため、あまりよい印象を持っていない方もいるかもしれません。そのイメージがガラリと変わるのが、村上さんの著書『いま君に伝えたいお金の話』。ただのノウハウではない、お金に対する真摯な考え方、深い哲学がここには詰まっています。お金に振り回されることなく、上手に付き合っていくために知っておきたいことを、いくつかご紹介しましょう。