ゴシゴシこすってはいけない、いきなり水拭きをしてはいけない、フローリングのホコリに掃除機は禁物、ウイルスの除菌・消毒は正しくやらないと効果なし……。『病院清掃35年のプロが教える病気にならない掃除術』は、これまでの掃除の常識がくつがえされる驚きの一冊。掃除はただ部屋をきれいにするだけでなく、自分と家族の健康をも左右する大切なもの。本書でぜひ、正しい知識を学んでください。
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汚れがもれなく拭ける必殺技「三角折り拭き」
拭く時は必ず一方向です。前や後ろ、右や左など同じ場所を繰り返し拭いてはいけません。同じ場所を往復させると、集めた汚れを取りこぼしたり、拭き戻した場所に汚れを塗りつけてしまうからです。
そのことを視覚的に理解してもらうために、わたしがよくやるのが、ティッシュペーパーとモップを使った実験です。
丸めたティッシュペーパーを床に散らしてモップで前後左右にゴシゴシやります。すると一部のティッシュペーパーが置いてきぼりになることがわかります。
それに対して一方向にずっと動かし続けると、集めた汚れを置いてきぼりにしてしまったり、取りこぼしたりせず、1か所に集めることができます。
キッチンペーパーや除菌シートでテーブルを拭く時も同じです。ただ、キッチンペーパーや除菌シートは前後左右がわかりにくいですし、モップのように手首を折り返すのが少々困難です。
試しにキッチンペーパーを4つ折りにして一方向に拭いてみてください。一方向に動かし、突き当たったところでうまく折り返すことはできましたか。折り返す時にペーパーの前と後ろが入れ替わってしまったらダメですよ。
どうでしたか?
実際にやってみると想像していた以上に難しかったはずです。折り返す時に手首をひねったり、手を置き換えないといけなかったりで、なかなかたいへんだったのではないでしょうか。
わたしはそれが嫌だったのでどうにかできないものかといろいろ試してみました。その結果、編み出したのが「三角折り拭き」です。
三角折り拭きでは、ペーパーを四角形の4つ折りではなく、三角形の4つ折りにします。すると直角三角形ができます。拭く時は、三角形の直角部分を手前にし、先端部分を押さえながら一方向に動かしていきます。そしてテーブルの端に達したら、先端部分を軸に180度回転させ、再び一方向に拭いていきます。
三角折り拭きなら、手首を無理な方向にひねる必要もなく、ペーパーの前後もわかりやすい。従来の四角形の4つ折りではうまくいかない、できるけどやりにくい、という方は試してみてください。
拭くという作業は、汚れを集める行為です。集めた汚れは散らばっていた時よりも汚染度が高まっています。集めた結果、別のところに付着してしまったら、体によくありません。拭く時は必ず「一方向」を徹底しましょう。
まずは「乾拭き」から始める
もうひとつは、まずは「乾拭き」から始めること。いきなり「水拭き」や「アルコール拭き」をしてはいけません。
水拭きやアルコール拭きは、乾拭きでは汚れが取り切れなかった時の次の手段と思ってください。アルコールなどで除菌をする場合は、汚れが少ない状態で行うことが基本となります。
床やテーブルの上にふんわりと乗っている汚れは、絶対に乾拭きです。せっかくふんわりと乗ってくれているのに、水やアルコールを振りかけてベチャベチャにすることはありません。
汚れには水に溶けるものとホコリのように水には溶けないものがあります。溶けないものに水を振りかけても、悪化することはあっても、よくなることはありません。
「拭く」には、乾拭き、水拭き、洗剤拭き、アルコール拭き、大きく分けてこの4つの方法があります。では、乾拭きでダメだった場合、次に何を選べばよいのでしょうか。答えは、目の前の汚れを見ると自然とわかります。もし、わからない時は順に試してみるといいでしょう。
水で拭くのは、水に溶ける(水溶性の)汚れを取り除く時。乾拭きではダメ、水で溶かさないと落ちない。そのような汚れは水で溶かして落とします。
油汚れは、水では落ちません。水は油に弾かれてしまいます。だから、界面活性剤が含まれた洗剤が必要です。
水や洗剤では落としきれない時はアルコールです。アルコールは溶剤なので油を溶かしてくれますし、水や洗剤よりも汚れがよく取れます。
このようにひとつひとつ汚れを明らかにしていくと、いきなりの水拭きやいきなりのアルコール拭きということにはなりません。
いきなりの水拭きが成り立つのは、すでに汚れが取り除かれ、きれいになっている時です。仕上げとして水拭きをしてすっきりさせるのでしたらかまいません。それ以外は、ただ目に見えていないだけで、ホコリがいっぱいの状態です。そこをいきなり水拭きしてしまったら、ホコリを引きずり回すだけ。
水でやればすっきりするというのは、これまでのお掃除体験(とにかく濡れぞうきんで拭く)からくる思い込みです。
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