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新しい趣味

2022.04.07 公開 ポスト

鳥居みゆきの趣味は“歯”“特殊メイク”“グロスイーツ作り”…そして見つけた「新しいこと」鳥居みゆき

ティッシュに詳しい、歯に詳しい、そしてグロスイーツも作れるし、特殊メイクも得意。芸人の鳥居みゆきさんはたくさんの趣味があるそう。でも、「趣味」と「特技」の違いって何? ふと湧いた疑問が鳥居さんの何かを刺激します。鳥居さん流の「新しい趣味」の世界――。

「趣味」を考えていただけなのに

趣味は幅広い。散歩が趣味、映画を観るのが趣味、趣味のことについて語るのが趣味、人によってさまざま。

私も趣味はたくさんある。まずティッシュに詳しい、歯に詳しい。何か手を動かす系だったら特殊メイク、グロスイーツ作り。と思ったところでふと、「趣味ってなんだろう?」と疑問が湧きあがった。

 
グロスイーツ

そういえば、よく履歴書に趣味・特技を書く欄がある。特技と似ているけど、わざわざ分けてあるってことは、なにか意味があるんだろう。

うーん、趣味と特技ってどう違うのか。趣味はまあよくあるのが料理とか、でもこれって特技としても書けそう。趣味に料理って書くのと特技に料理と書く違いはなんだ? その道で金を稼ぐようになったら? 稼がなくてもその道を極めたら特技にいけるのか? でも極めてなくても幻冬舎さんで趣味特集のコラムを書くことで趣味が仕事になったらそれはもう特技なんじゃ? 趣味が自己満足で特技が他者満足ってことかな。わからない。

でも今回は趣味。本来の意味を知ってから書こう。趣味のことを書くのに趣味の定義を知らないなんて駄目だ。そう、私はこういうことは真摯に取り組むタイプなのだ。

昔は辞書だったけど、今はスマホでちゃちゃっと調べられちゃうんだから楽だよね〜、そう、私は昭和生まれだが令和にもう馴染んでるタイプなのだ。

よし、いつもの通りローマ字入力で「syumi」と打って検索してやる。

そう、私は最先端の技術を駆使した最新のスマホ! から5つ前に出たスマホで小さい画面の小さいキーボードも目を細めてガンガン打てるタイプなのだ。

おわ、sのあとのy uを一つ右に押し間違えてしまった。令和対応型昭和人間も小さいキーボードには勝てない。「すいみ」と変換された。suimi、すいみ、スイミー。

そういえば昔、『スイミー』って本を読んだことがある。あれだけ有名な本、読んだことないって人のが少ないか。

スイミーは小さな魚を集めて大きな魚に立ち向かうというレオ=レオニの代表作。

ザ・いい話。なのだが私が読んだ感想は恐怖しかなかった。今で言う「同調圧力」のようなものを感じた。もちろんスイミーは正義感溢れる素晴らしい魚だし、頑張り屋さんだし、とても素晴らしい本なんだけど、当時の私には学校生活、クラスのグループ、協調性がうまく持てない自身と重ね合わせて恐ろしかった。

なんていうか突然やってきた転校生が、「皆、演劇やろう」と発言してきて、私たちの中でも上のほうに位置する、集合写真では前列、バスでは最後列に座りたがるテニス部とかに入ってる地味学園の中でも目立ってる子たちが「やってもいいかも、全員参加ね」のノリを出してきた感じというか、とにかく乗り気じゃなかったのに断りづらい子も中には居ただろうに。

そして、なんかミッション難しそうだし。一糸乱れず規則正しく泳がないといけない。何故? 巨大に見せるため。嘘でしょ? バレない? 本当に大きい魚に見えます? バレたあと先方に馬鹿にしてんのか!って怒られない⁉

ああ、そんなうまくいくかなあ。でもそんな発言したら、「なに、やりたくないの? 皆やるって言ってるのに、大丈夫大丈夫、毎日めっちゃ練習すりゃいいから」ブラックー!! スイミーさんブラックですよ、色的にもブラックですし。

もしかして、赤チームのが何気に難しいんではないかい? だってスイミーさん、絶対その色、間違いなく「目」担当ですよね? てことは、スイミーさん基準に取り囲む形で作りますもんね。そんで、ずっと演出家として自分らの練習に客席側からダメ出しして、本番だけ空けといた目の位置に入るパターンですよね? やだなー、灰皿投げるタイプの演出家に憧れて蛸壺とか投げてきたらめんどくさいなー。

赤軍責任重大かよ。でも皆やる気だし、いまさら一人だけやりたくないなんて言えない空気。やだなー、配役決めはくじ引きかな。自分で選んでいいなら配置的にも目元に近いところは失敗した時目立つからダメだ。じゃあお腹のあたり? ダメだ。最後列にいるテニス部とかに入ってる目立ってる子たちに「見えてまーすちゃんとやってくださーい」どやされる。

どこ担当だったら怒られずに済むだろう、視力悪いからって自動的に一番先頭になったら最悪。席替えいつも一番前だもんな、当日お腹いたいって休もう。

そんなことを考えていた。

大人になった今は気持ちの変化が起きているだろうからまた読んでみよう。その時その時で色んな受け取り方が出来る、それもまたやはり素晴らしい本なんだな。

趣味は語れなかったが、「すいみ」は語れた。いやこれだけ語れたら趣味と言っていいんじゃないか。私の趣味はスイミーです。嘘です。というか、趣味がスイミーって意味わかんないです。とりあえずスイミーについて考えすぎて疲れたんで、睡眠。

鳥居みゆき『夜にはずっと深い夜を』

「きたないものがきらいなきれいなおかあさん」「花言葉で未来を占う華子」「同窓会で自分の名前を思い出せない佐々木さん」……。壊れゆく日常のすきまから世界はねじれ始める――。過剰な愛と死への欲望に取り付かれた女たちが紡ぐ、狂おしいまでに悲しく美しい物語。

鳥居みゆき『余った傘がありません』

よしえとときえは四月一日生まれの双子の姉妹。二人には絶対に知られてはいけない秘密がある--。交換日誌をした小学校の担任、はじめて心をゆるした大学の先輩、結婚したかったのにできなかったあの人……。死を直前にして語られる交錯した人々の思い出。愛の刹那と人生の偶然。鮮烈な言葉と不意打ちの笑いが織りなす魅惑の連作長編。

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新しい趣味

毎日を充実させてくれるさまざまな趣味。以前から好きなもの…とはまた違う、このコロナ禍で新しく出会った、再認識した、喜びの世界。

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鳥居みゆき

1981年生まれ。秋田県出身。独特な不条理世界を演じるコントで異彩を放つお笑い芸人。バラエティ番組、ライブ等で活躍するだけでなく、『全然大丈夫』『やさしい旋律』『非女子図鑑』『臨死!!江古田ちゃん』など映画・ドラマにも多数出演。稀有な才能で圧倒的な存在感を見せる。趣味は、般若心経・瞑想・被害妄想。特技は、暗算。工業簿記二級・珠算二級・情報処理一級・ワープロ二級の資格を持つ。著書に、多くの本読みを唸らせた『夜にはずっと深い夜を』『余った傘はありません』などがある。

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