発売後から大反響!のベストセラー『80歳の壁』(和田秀樹著)。体力も気力も70代とは全然違う「80歳」の壁をラクして超えて、寿命をのばす――その秘訣がつまった本書から、試し読みをお届けします。
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80歳を過ぎたらガンがある。それに気づかない人も多い
私が長年勤めていた浴風会病院は高齢者専門の病院で、毎年、100人程度のご遺体を解剖させていただいておりました。
すると、本人は自覚していないにもかかわらず、体の中に大きな病巣があり、それ以外の病気が原因で亡くなっていた、という例が少なくありません。つまり、最後まで気づかない病気もある、ということです。
ガンもその一つです。
85歳を過ぎた方のご遺体を解剖すると、ほとんどの人の体にガンが見つかります。
つまり、幸齢者になれば誰の体にもガンがある、ということです。
世間の常識では「ガンは死に至る病で、早期発見・早期治療をすべき」とされていますが、じつは、それだけとは限らない。本人が気づかないガンもあるし、生活に支障のないガンもあるのだと、教えてくれているわけです。
とくに年を取るとガンの進行が遅くなるため、放っておいても大丈夫なケースは意外と多くあります。みなさんには、ぜひ、この事実を知っておいてほしいと思います。
ここから導かれる選択は何か?
それは、80歳を過ぎたら我慢をしない、という生き方です。
「ガンにならないために」と食べたいものを我慢したり、好きなお酒やタバコを控えたりする傾向がありますが、幸齢者は、すでにガンを持っていることが多い。
だったら、ガンにならないための我慢は意味がなくなります。好きなものを食べたり飲んだりしながら生きるほうが、むしろストレスが少なくていい、楽しく生きられるのではないか、と思うのです。
実際に、我慢を強いられてのストレスフルな生活より、好きなことをして気楽に生きる生活のほうが、免疫力が高まることがわかっています。これがガンの進行を遅くすることも知られています。
認知症は必ずやってくる。ならばいまのうちにしたいことをする
人はなぜ、認知症になるのでしょうか?
答えはとてもシンプルです。年を取るからです。
ただし、幸齢になってから発症する認知症の多くは、とてもゆっくりと進行する病気です。じつは発症の20年ほど前から少しずつ進行しているのですが、ほとんどの人は気づきません。そして発症後も進行は続き、止めることができません。
多数のご遺体を解剖して、わかったこともありました。ガンと同じように、85歳を過ぎた人のほぼ全員の脳に、異変が見られたのです。アルツハイマー型の脳の変性のような病変です。
つまり、認知症は病気というより「老化現象」に近いものであり、年を取ると誰にでも起こる症状、というわけです。筋力が衰えて運動ができなくなったり、肌にシワができたり白髪になったりするのと、同じことなのです。
「認知症の発症年齢」のデータを見ても、それは明らかです。
60代での発症はわずか1~2%ですが、70代前半では3~4%になります。
70代後半で10%、80代前半には20%を超えます。ここからは一気に増えます。
80代後半に40%、90歳で60%、95歳では80%の人が認知症になるのです。
「死ぬまで認知症にならなかった」という人もいますが、それは認知症になる前に亡くなっただけのこと。もう少し長生きしていたら発症していたことでしょう。
そうした事実から導かれる正解は、やはりこれしかありません。
いまのうちに、どんどん好きなことをして、楽しく生きること──。
代わり映えのしないつまらない生活をしていると、脳の働きは鈍(にぶ)ります。また、ストレスの多い生活によっても脳はダメージを受けます。
反対に、新しいことや好きなことをすると、脳は刺激を受け、活性化します。これによって認知症の発症を遅らせることは可能だと考えられます。
(第4回へ続く)
80歳の壁
70代とはまるで違って、一つ一つの選択が命に直結する80歳からの人生。ラクして壁を超えて寿命をのばす「正解」があります!