1日に2万回も空気を出し入れしている呼吸は、体調や老化のスピードに影響しているだけではなく、感情にも大きく影響を及ぼしているといいます。『すべての不調は呼吸が原因』(本間生夫著)から、体と心をより良い方向へコントロールする呼吸のコツを、抜粋してご紹介します。GW明けの月曜日、日々の「呼吸」で全身を快調にもっていきましょう。
(「不安定な呼吸が不安定な感情を生んでいる」 2020.10.31公開/「仕事や勉強のやる気が出ないときにおすすめの呼吸法」2020.11.21公開/「コロナ禍のマスク生活、口呼吸が多くなっている人は要注意」2020.11.14公開 より)
現代人は「浅くて速い呼吸」になっている
呼吸機能の衰えは、決して高齢者だけの問題ではありません。先に申し上げたように「実年齢が若いのに呼吸年齢が高い人」「実年齢が若いのに呼吸に不調を抱えている人」は大勢います。
いったいどうして、若くして呼吸機能を低下させてしまう人が多いのか。
それにはいろいろな原因が考えられます。加齢や呼吸器の衰えだけでなく、肺やのどの疾患、アレルギー、自律神経系の失調、喫煙や大気汚染の影響など、さまざまな可能性があります。もちろん、こうした原因がいくつも複合的に重なり合って、呼吸機能を弱らせていることも考えられます。
ただ、こうしたさまざまな原因がある中で、とりわけ多くの人の呼吸機能低下に影響していると思われるものがあります。
それが不安や緊張などのストレスです。
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たとえば、普段から「浅くて速い呼吸」「荒い呼吸」「弱い呼吸」をしているような人は、日々の不安や緊張、ストレスが呼吸を乱れさせている可能性大。なかでも、近年は年齢にかかわらず「浅くて速い呼吸」をしている人がたいへん目立ちます。
いまは、仕事や家事で時間に追われ、心がやすらぐ間もなく非常にせわしいリズムで生活をしている人が多いため、呼吸にもそういう「せわしいリズム」「余裕のないリズム」が反映してしまっているのです。いまの社会では大半の人が「浅くて速い呼吸」になっていると言っても過言ではないでしょう。
呼吸が変われば気持ちも変わる
ここで、不安などの感情と呼吸との関係性について、少し解説をしておきましょう。
私は、感情と呼吸は一体だと考えています。
みなさんは怒ったときに息を荒らげますよね。また、時間に間に合うかどうか焦っているときや、ゾッとするような怖い思いをしたときには呼吸が速くなるのではないでしょうか。一方、親しい人と談笑しているときやひとりでくつろいでいるときは呼吸がゆったりとしています。
このように、呼吸は、そのときそのときの心模様を反映しています。呼吸はわたしたちの感情を映す鏡。不安、悲しみ、怒り、焦り、恐怖などのネガティブな感情になったときに速く不安定になり、よろこび、幸せ、癒やし、安心などのポジティブな感情になったときに、ゆったりと安定するメカニズムになっているのです。
すなわち、不安定な感情が不安定な呼吸を招き、安定した感情が安定した呼吸を招くのだということ。なお、これは逆パターンも当てはまり、不安定な呼吸をしていると感情も不安定になってきますし、安定した呼吸をしていれば感情も安定するようになります。
言うなれば、感情が変われば呼吸も変わり、呼吸が変われば感情も変わる。まさに、感情と呼吸は一体として動いているわけですね。
呼吸が心と体をコントロールしている
私は、呼吸は「体を整える窓口」であり、「心を整える窓口」でもあると考えています。呼吸が変われば体も変わるし、呼吸が変われば心も変わる。呼吸が体と心をコントロールしていると言ってもいいでしょう。
みなさんのなかには「そんなバカな」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、考えてみてください。
呼吸はわたしたちの自律神経のシステムとリンクしています。自律神経は状況変化にスムーズに適応できるように心身のモードを切り替えているシステムで、その時その時の状況に合わせて心身のアクセルやブレーキを使い分けています。これをコントロールできるのが呼吸なのです。
呼吸が速いとき、自律神経は緊張し、交感神経優位にシフトして心身にアクセルを踏むように働きます。一方、呼吸がゆったりとしているときは、自律神経はリラックスし、副交感神経優位にシフトして心身にブレーキをかけるように働きます。このように、呼吸をシグナルとして、自律神経システムが動いていると言っていいのです。
みなさんご存じかもしれませんが、自律神経はわたしたちの血流、心拍数、血圧、体温、発汗、内臓の動きなど、さまざまな機能を調節しています。そして、自律神経のバランスが崩れると、こうした調節がきかなくなってさまざまな不調や病気に陥るようになります。言わば、アクセルやブレーキがうまくきかなくなって、体がコントロール不能のような状態に陥ってしまうわけです。
しかし、呼吸をちゃんと整えれば、こうした自律神経のバランスの崩れを防ぐことができるのです。たとえば、緊張や焦りで自律神経のバランスが乱れてしまいそうなときに、意図的にゆっくりした息の出し入れをして呼吸を整えれば、心身の落ち着きを取り戻すことができるはずです。それに、気がゆるんで仕事や勉強でやる気が出ないようなときに、意図的にスピーディーな呼吸をすれば、自律神経を高ぶらせて心身のアクセルを開くことも可能です。
鼻呼吸のメリットと口呼吸のデメリットを知る
すでにご存じの方も多いとは思いますが、口で呼吸をするのは、非常によくない習慣です。
人間は鼻で呼吸をするのが基本。“鼻で息をしても、口で息をしても、出入りする空気は同じなんだから、どっちだって構わないだろう”と思う人もいるかもしれませんが、じつは鼻か口かでけっこうな差がつくものなのです。
では、鼻と口とでいったい何がどう違うのか。
鼻呼吸のいちばんのメリットは、「保温機能・保湿機能つきの集塵(しゅうじん)フィルター」が備わっているところです。鼻から息を吸っていれば、鼻毛が天然のフィルターの役割を果たし、空気中のほこりや花粉、ゴミなどの異物を取り除いてくれます。
また、鼻腔からのどへと至る管を通るうちに、空気が適度な温度、適度な湿度に調整されるため、のどや気管にやさしいかたちで空気が送り込まれることになります。
それに、この保温機能・保湿機能により、低温や乾燥を好む風邪などのウイルスも繁殖しにくくなるでしょう。すなわち、鼻はたいへん優れた「エア・コンディショナー」の役割を果たしてくれているわけですね。
一方、口呼吸の場合は、こうしたエア・コンディショナーを通さずに、ダイレクトに空気が侵入してくることになります。
冬場、乾燥した冷たい空気がのどや気管、肺にじかに入ってきたらどうなるでしょう。冷たい外気の刺激はのどや気管の粘膜を傷めます。その刺激によって思わず咳込んでしまう人もいるかもしれません。
それに、乾燥した冷たい空気には、ほこり、花粉、ばい菌、ウイルスなどがうようよしていることでしょう。ほこりや花粉が侵入すればアレルギーなどの原因になりますし、風邪やインフルエンザのウイルスが侵入すれば、きっと大よろこびでのどの粘膜に取りついて繁殖するのではないでしょうか。
つまり、このように普段から口で息をしていると、免疫力が低下して、多くの不調やトラブルを背負いかねなくなるのです。しょっちゅう風邪をひいている人や頻繁にのどを傷めている人は、自分が口呼吸をしていないかどうか疑ってみるといいでしょう。
体調は習慣でできている
季節の変わり目、不安な社会事情、日々のストレス……アップダウンしやすい体調を整え、キープする方法を紹介。
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