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逝きかた上手

2022.05.27 公開 ポスト

余命を知った医師が伝えたい「終活」と「遺品整理」のコツ石蔵文信

「夫源病」の名付け親としても知られる医師の石蔵文信さんは、64歳で前立腺がんが全身の骨に転移。
現在は外来を行いながら、自身の治療を続けてらっしゃいます。

延命治療や胃ろう、医師としての決断とそれをどう伝えるのか――
悔いのない最期のために、今から考えておきたいことをまとめた一冊『逝きかた上手』が発売されました。

「余命を知ったら幸せになった」という現役医師が伝える終活の心得を、特別に一部公開いたします。

*   *   *

(写真:iStock.com/HAKINMHAN)

「終活」で大切な遺品整理

がんが判明して、私がまず行ったことは「終活」です。

当時は体調も悪く、2~3カ月ももたない状況だと思ったので、亡くなった後のことを考えて急いで行動に移しました。

インターネットで検索すると、終活とは「人生の終わりのための活動」の略で、自らの死を意識して、人生の最後を迎えるためのさまざまな準備や、そこに向けた人生の総括を意味する言葉とのことです。

 

実は、私は母が亡くなった時、夫婦で「エンディングノート」を買いました。そこに書いてあることとは、遺産の配分、親戚関係などです。

つまり自分の履歴書のようなものです。そして一番大事なのは、預貯金や土地家屋などの財産のことです。私の場合は簡単で「妻に任せておきます」と書いてあります。

最近では、クレジットカードやポイントカードも大事です。亡くなったときのためにIDやパスワードは記録しておいた方がよいでしょう。さらにカードにポイントがついていることがありますので、私は積極的に使うようにしています。
 

借金のある方は、正直に書いておかないと残された遺族に大きな迷惑になります。親戚関係に関しても、ある程度書いておいた方がよいと思います。「隠し子がいる」などは一大事ですが、もしそういう事情があれば、後で家族が驚かないようにひそかに書いておくことも必要でしょう。

 

次に大事なことは「もしもの時のこと」、つまり終末医療のことです。私の場合は、医療関係者(医師)なので、「何もしないでほしい」と常々言っております。「何もしない」とは人工呼吸器、最後の点滴やチューブ栄養などをやめてくれということです。私にとって胃ろうなどは、絶対に避けたい医療行為です。

 

「エンディングノート」には、自分の趣味や好きなものを書く欄がありました。しかし、私は「そんなことを子どもたちに遺しても仕方がない」と思いましたので書いていません。メッセージを書く欄がありますが、何も書いていません。

 

幸い、これまでに私は20冊以上の本を出版させていただいたので、先日それをまとめて3人の娘に送りました。気が向いたら読んでくれるかもしれません。

最近は近況を伝えるためにYouTubeを始めました。自分の趣味や嗜し好こうなどを残すようにしています。興味がある方は「一般社団法人 日本原始力発電所協会 YouTube」で検索していただければ幸いです(登録をしていただければなおありがたいです)。

 

このような形で、いわゆる終活は1週間ぐらいで終わります。私が一番気になるのは、多くの高齢者が本当の最期の時期までどう過ごすかということです。つまり「終活が終わればその後は何もすることがない」では、やはり困るのではないでしょうか。

 

そこで今、私が行っているのが遺品整理です。死ぬ前に遺品整理というのは少しおかしいので、一般的には生前整理と呼ばれています。家族にとって困るのは、財産や終末期の医療以上に残された品々でしょう。

私にとって大切な鉄道模型も家族にとってはゴミ同然です。結構高価なものもありますので、きちんと処理をすればある程度のお金になります。幸いにも2人の男の孫に恵まれたので、私の遺志を継いで鉄道模型を持ち続けてくれる可能性があります。

 

実は5歳になる孫は、その素質があるようです。そのために私は鉄道模型をしっかりと完成させることにしました。これについてはYouTubeで見てやってください。

さらに屋上の家庭菜園などの整理や、さまざまな道具を現在整理中です。さすがにどう考えてもいらないものはさっさと捨て、残したいものをきっちりと完成して子どもや孫に伝える。このような遺品(生前)整理は数日では難しいです。

 

まだ死ぬ予定ではない方も多いと思いますが、70歳前後になってくれば、断捨離を兼ねて自分の遺品になる物の片付けを始めてみてはいかがでしょうか。私の場合は遺品を整理するといって、さらにいろいろ買ってしまいますが、結構楽しいものですよ。

へそくりも借金も正直に伝えておこう

関連書籍

石蔵文信『逝きかた上手 全身がんの医者が始めた「死ぬ準備」』

余命を知ったら幸せになった――。 64歳で全身がんになった医者自らが教える「死に支度」とは 切なくも明るい「終活」の教科書

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石蔵文信

大阪大学招へい教授 循環器・心療内科医
1955年京都生まれ。2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。

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