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「嫉妬心」とどう付き合うか?
人間社会では、比較からは逃れられません。人種のるつぼと言われるアメリカには、多様性を受容しやすい文化がその背景にあります。人種・性別の違いはあっても、優れている者には、賞賛を惜しみません。
しかし、ほぼ日本人だけで構成される社会において、しかも平等意識が強い日本社会では、自分との比較によって優れている者に対する「嫉妬心」がどうしても芽生えてきます。
先輩や上司が自分よりも有能なのは、受け入れやすい事実です。しかし、同期やまして後輩のほうが有能かもしれないという現実に、いずれは直面するかもしれません。
医学部でも、適齢期の先輩を飛び越して、若くして教授に就任する有能な人材がいるのは事実です。あるいは、医療経営で成功している若手の医者もいます。当然ですが、医療業界に限ったことではないでしょう。
年齢や入社がほとんど同じ同期の場合は、良きライバルになりえます。たとえ自分が劣っていたとしても、劣等感や嫉妬心は、さらなる頑張りへのエネルギーに変換できるものでしょう。
問題は、自分よりも有能な後輩が出現してきた場合です。同じ年次のころの自分と比較ができてしまうので、
「自分の入社○年目のころと比べても、あいつはデキる」
と、かえって嫉妬や落ち込みを経験してしまうことが多いのではないでしょうか。
「キングカズ」が尊敬される理由
しかし、各年代で優秀な人間が一定の割合で出現するとすれば、デキのいい後輩に追い抜かれることは、仕方のないことです。官庁などピラミッド型構造の組織では、トップになれるのはたった一人です。ほかの上の人たちは、天下りではないですがどこかに異動しなければ、先細りのピラミッド型組織は維持できません。
優秀でデキる若手、後輩がいれば、それはあなたにとっても組織にとっても、感謝すべきことです。嫉妬心を、いかに尊敬や敬意に変えることができるかが、「良き先輩」になれるかどうかの分かれ目です。年下の後輩だからこそ敬意を払った態度で接していれば、優秀な後輩ならば先輩にリスペクトを返してくるに違いありません。
頼りなかった後輩が成長して、自分を脅かし超えていくのは、先輩にとって避けては通れない道です。多少嫉妬してしまうのは、やむをえない心理なのかもしれません。
しかし、他人との比較は、結果的にはいいことがありません。つまるところ優秀な後輩に対しては、尊敬のまなざしを持って臨むのが、尊敬しうる先輩のやり方だと思います。見返りを求めるわけではないですが、後輩はあなたに対して礼を失することは、まずしないはずです。
後輩をリスペクトするエピソードとして、サッカーのキングカズ、三浦知良選手の逸話を紹介しておきましょう。セリエAのインテルの長友佑都選手が、三浦選手のメールにいたく感銘しているという内容です。
具体的には、
「後輩の僕にもリスペクトする気持ちが伝わってくる。メールでも敬語なんです」
先輩を追い抜こうとしている、あるいは追い抜いた後輩は、ちゃんと先輩を立ててくれるものです。嫉妬ではなく尊敬を持って後輩を扱うことは、お互いの成長にとってプラスに働くのです。仕事だけでなく、人間の大きさという意味においても、です。
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