イヤな上司にゆとり社員、不条理なノルマに過剰コンプライアンス、残業ばかり増えて給料はちっとも上がらない……。私たちの働く環境は、どんどんシビアになっているようです。そんな中で日々、ストレスや疲れと闘っているあなたに手にとってほしいのが、精神科医・西多昌規先生の『会社、仕事、人間関係で「逃げ出したい!」と思ったとき読む本』。医師だからこそ語れる、科学的な見地にもとづいた処方箋の数々。今回はその中から、一部をご紹介します。
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「なんとなく不安」から抜け出す方法
なんだかモヤモヤしているのだが、
「何に対して不安なのかも、わからない」
という場合は、どういう心理が考えられるのでしょうか。
「不安」と「恐怖」は、専門的には区別して使用されます。「不安」は特定の対象がない、「なんとなく」という特徴を持っています。一方で「恐怖」は、具体的に恐れる対象が存在します。高所恐怖や閉所恐怖などが有名です。
動悸や過呼吸、異常な発汗などからだの症状として現れてしまう場合は、病的な不安として扱うべきです。ただ、ここで扱う不安は、「モヤモヤする」「スッキリしない」「落ち着かない」というレベルを想定して、話を進めていきます。
「不安」には対象がないと書きましたが、「モヤモヤ」「スッキリしない」の奥底には、何らかの不安対象が潜んでいる場合が少なくありません。無意識のうちに自分で抑圧してしまっているため、自分でも何に不安なのかがはっきりわからないのです。
何に不安か今ひとつはっきりしない人は、たまにで構わないので今自分が不安に感じていることを、白紙に書き出してみることをおすすめします。たとえば、白紙を3分割して「仕事」「家庭」「自分」に分けて、それぞれ5つずつ懸案事項を書き出してみます。
自分の問題を書いて目に見えるようにするのは、実はつらい作業です。回避したい問題に強制的に向かわせることを「直面化」と言いますが、紙に書くという作業は簡単な「直面化」を強いていることになるわけです。
わたしの場合の一部を紹介すると、「老いた両親の今後」「勤務医を続けるかどうか」などです。もっと深い問題も抱えているのですが、公にするのはご容赦ください。
リストアップしただけで問題が解決するわけではありませんが、「理由がわからない不安」を緩和する作用は、あると思います。
話す機会を作る
ただ、書いているだけでは、つらくなってくる、あるいはますます不安になってくる場合も考えられます。できれば、他人に小出しにしながらも話す機会があったほうがいいでしょう。その意味でも、たまに仲のいい友人たちと集まる機会を持つことは、重要です。
わたしの場合は、たまの学会参加が重要な清涼剤の役割を果たしています。ノルマを離れることができる、新しい知識を得られるだけでなく、久しぶりの友人と飲んで話す機会が持てるのも、学会の魅力です。
「自分の思うような仕事ができない」「仕事の環境が整っていない」などと腐っていたときもあったわたしですが、学会での友人や先輩・後輩との会話の中で、キャリア上の活力やヒントを得られたことも少なくありません。
幹事として自分で友達を集めることができれば言うことはないのですが、みなさん忙しくスケジュール調整だけで滅入ってくることが多いのも、社会人の悩みです。会社の講習会やセミナー、パーティーなどの機会を活用して、親しい間柄で短い時間でもいいので2次会を開くのも、1つのアイデアです。
とにかく手を動かす
自分だけでできることは、書くこと以外にあるのでしょうか。それは、手を動かす、からだを動かすことです。不安解消のいちばんの治療法は、実は手作業や運動なのです。不安障害の方でも、からだに強く症状が現れない人には、薬よりもむしろ作業をすすめています。
本棚の片づけや部屋の掃除、クローゼットの整頓などは、手近でできる作業です。片づけなど単純作業は、行った結果も目に見えます。なにより、不安を和らげるセロトニンの活性が上がります。片づけである必要はありません。外に散歩に行く、買い物に行くなどといった行動でも、構いません。
何もせず部屋で悶々としている、これがいちばん良くありません。「モヤモヤしているな」と思ったら、適当な格好で構わないので、近所の商店街やコンビニにでも行ってみてください。家でモヤモヤしているよりは、停滞を破る前向きな行動です。
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