イヤな上司にゆとり社員、不条理なノルマに過剰コンプライアンス、残業ばかり増えて給料はちっとも上がらない……。私たちの働く環境は、どんどんシビアになっているようです。そんな中で日々、ストレスや疲れと闘っているあなたに手にとってほしいのが、精神科医・西多昌規先生の『会社、仕事、人間関係で「逃げ出したい!」と思ったとき読む本』。医師だからこそ語れる、科学的な見地にもとづいた処方箋の数々。今回はその中から、一部をご紹介します。
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「週末うつ」の3つの特徴
ビジネス雑誌や自己啓発書では、著名人のオフの過ごし方がたびたび紹介されます。スポーツや趣味などを楽しんでいるアクティブな姿が、取り上げられることが多いように思います。
著名人でなくても、オフを満喫している知り合いや、楽しそうに過ごしている人たちを街で見ると、自分のオフの過ごし方と比較してしまうのが人情です。まして、平日の仕事で疲れ果てて、休日に出かけるのが億劫で仕方のない人にとっては、自己嫌悪に陥ることもあるでしょう。
せっかくの休日の過ごし方に悩んでいる人が、意外に少なくありません。「週末うつ」という俗語もあるくらいです。週末うつには、個人的には3つの特徴があると思います。
- 週末になると昼近くまで寝坊してしまう
- 休みの日でも仕事のことが気になってしまう
- せっかくの休みでも気分がなんとなく晴れない
これらの3つの特徴が1つでもあれば、出かけるのに億劫さが伴ってきます。昼まで寝過ごしてしまえば、出かけてもすぐ夜になってしまいます。仕事のことが気になってメールや書類でも見てしまえば、そのまま処理する作業に入ってしまい、外出するタイミングを失うかもしれません。
いちばん漠然としていて、かつ「億劫」の源になるのは、「気分がなんとなく晴れない」です。曇り空のようになんとなく気分が乗らない、気分転換がいいことは頭ではわかっているが、どうもその気にならない。
「なんとなく晴れない」が重度になると、抑うつ気分といううつ病の主症状の一つになります。重症にならないうちに、少しでも気分を晴らすテクニックを知っておけば、休日だけでなく仕事に対するエネルギーも湧いてくるはずです。
まず、「週末うつ」傾向のある人は、「平日」には、比較的元気に過ごしています。それはどうしてでしょうか。「仕事」にヒントがあります。
自宅でゆっくり過ごしたっていい
仕事は、もちろん甘くはありません。過酷な仕事によってうつ病になってしまう人があとを絶たないのも、事実です。しかし仕事には、うつな気分を晴らす「抗うつ」的要素も含んでいます。わたしの拙い分析では、「つながり」「達成感」「社会貢献」という3つの要素が考えられます。
「つながり」は、ここでは他人とのおしゃべりなど「リアルな」つながりのことです。職種にもよりますが、仕事をしてれば「1日誰とも口をきかなかった」ということはないでしょう。「達成感」は、快楽物質であるドーパミンと関連して、気分を高揚させます。他人のためになる「社会貢献」は、自分のアイデンティティを強化します。
仕事の「抗うつ」効果が、休日は薄れてしまいます。さらに休日を楽しめない自分に嫌悪感が生じてくれば、からだは休めても気持ちはスッキリしないままです。
以上を踏まえて、休みの日に外に出かけて気分転換したいけれど、億劫で外出がなかなかできない人へのアドバイスを考えてみます。それは、考え方を少し変えてみることです。「休日は気分転換のために出かけなければならない」という強迫観念を、いったん捨てることです。
休日の中に、「自分にとって」楽しめる時間を作ることです。重要なのは、他人の楽しみと比較しないこと。読書、テレビといったインドアなものが好きならば、無理に外に出る必要はないと思うのです。
わたしの患者さんで、元々インドア派のうつ病の方がいました。家でDVDを見てゴロゴロしているのが、無上の楽しみという人です。その人が「休みの日は、どんどん外に出たほうが元気になる」と、友達からアドバイスを受けました。
そこでかなり頑張ってドライブやスポーツイベントへの参加、トレッキングなどにチャレンジしましたが、自分に合わない活動は非常に疲労がたまります。休日の疲労で、週の前半を乗り切るのがつらくなってきました。
会社に行けない日も出てきたので、休日は自宅でゆっくり過ごすように指導したところ、状態は回復していきました。
もちろん外出が嫌いでない人にとっては、家でゆっくりしてばかりでは、物足りないでしょう。しかし、休日は他人のものではなく、あなたのものです。100%マネをすることはありません。
「仕事がないだけラッキー」「からだを休められて御の字」くらいに気楽に考えることが、「週末うつ」に対するもう一つの処方箋かもしれません。
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