『ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた』(鈴木綾さん著)の発売前にゲラを読んで感想を送ってくださる方を募集しました。感想の文字数を(100字以上)としていましたが、実際、届いたのは、しっかりとした分量の文章ばかり。少しずつご紹介します。今日は、人生変動中に綾さんの文章に出会った37歳の女性からの感想です。
日本にいたら気付かないことがたくさん
新卒で入った会社を勤続12年目の5月に辞めて、少し休んでから、雇用期間が年度末までの短期バイトを半年した。その期間に次の仕事を決めて、年度末にその新しい仕事に就くために隣の県に引っ越した。引っ越しのいろいろな手続きのために、短期バイトは年度末より少し前に辞めていた。
勤続12年目で辞めた会社での仕事は楽しかったし、スリルがあったし、周囲の人たちに甘えていたし甘やかされていたなぁと、今振り返ると少し恥ずかしさみたいなものがある。この会社で出会った人と結婚してこどもを産んだ。そして、いろいろあって仕事を辞めて、離婚して、こどもとともに他県に引っ越して転職して、いまも働いている。こどもは保育園児から小学生になった。
著者の連載が始まったのは、仕事を辞めて、短期バイトと次の正社員の仕事を探しながら離婚の準備をしている最中で、つまり無職だった。幻冬舎plusはいつでも補給できる活字源として私の中で重要なサイトで(病的な活字中毒者です)、そこで始まったイギリスで働くMBA取得者で、私より少し年下の著者のエッセイは、当時の私を発奮させた。前職での栄光はいったん置いておいて、新しい大地へと踏み出すのだ。
著者の連載は素直に面白い。読みやすいのはもちろん、軽妙で刹那的(ご本人も本文中に書かれていたように)だけど上滑りしていていない文章が個性的。今回、連載をまとめて加筆したゲラを読ませていただいて、著者と友人になった気がして(失礼な感想ですみません)、「綾の近況を知りたい」という気持ちで読み進めていた。個性的な自伝を出版するにはもうじゅうぶんな素材がある人生を送られているなと思う。
また、著者は日本で働いていたら一生気が付かないことに気が付かせてくれた。「キャリアは自分で耕さなければいけない」とか会社にどんな質問をしたらいいか、とか。「自分は何をしたら昇格できるのか」なんて会社に聞いたらそのあと昇格の機会がこない気がする。政治やフェミニズムのことはよく考えるけれど、周囲の人と議論する機会は日本ではほとんどない。「左でも右でもないしそもそも政治とか興味ない」スタンスをとるのが一番無難、と刷り込まれている。
著者も書いているように、私も日本はもう発展しないと考えている。危機感とかじゃなく確定的な将来として見えている。私の大事な大事な娘が将来活躍するのは日本ではないほうが断然いい。あと、私も著者のようにキャリアデザインして世界で活躍していきたいから、具体的に動いていかなくてはと強く思った。
どこかで同じ時代を生きている著者の言葉が私の力になっている。
ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた
大学卒業後、母国を離れ、日本に6年間働いた。そしてロンドンへ――。鈴木綾さんの初めての本『ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた』について
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