「マスク依存の最大の被害者は、子どもたちです――」。
『80歳の壁』がベストセラー、話題の精神科医・和田秀樹さんは新刊『マスクを外す日のために 今から始める、ウィズコロナの健やかな生き方』の中でそう警告しています。
マスクだけではなく、長く続いた自粛生活自体のダメージは深刻で、うつ病を始めその健康被害が出てくるのは実はこれから。
コロナを恐れすぎずに、自らの免疫力を上げて健やかに生きるノウハウがつまった一冊を緊急出版しました。
マスク依存が心身にもたらす影響は深刻ですが、中でも子どもへのダメージが大きい理由を、本書より抜粋して解説します。
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自粛生活の最大の被害者は? ──それは子供たちです
とりわけ、この「マスクと表情」問題で、私が心配しているのは、母親の笑顔を満足に見たことのない子供たちの将来です。
かつて、こんなことが起きました。第2次世界大戦中、イギリスでは、ドイツ軍による毒ガス攻撃を恐れ、国民の多くがガスマスクをつけていました。若い母親も例外ではなく、当時の赤ん坊たちは、ガスマスクをつけた母親に育てられたのです。
すると、その20~30年後に何が起きたか──イギリスのいわゆる風俗産業で、ガスマスクをつけた女性とのプレイを好む男性が急増したのです。
彼らは、人生の最初の時期、自分を無条件に愛してくれた女性の表情、つまりガスマスクをつけた母親の顔を、性的行為の対象となる女性にも求めたのです。
さて、今、4歳の子供は、人生の半分以上をマスクをつけて過ごしてきたことになります。8歳の子供でも、物心ついてからの半分の期間はマスクをしていたことになります。私は幼児教育にも携わってきましたが、人生のほぼスタート地点からマスクをしている子供たちが、これからどのように育っていくのか、本当に心配しています。
すでにこの2年間、子供たちには、いろいろな変化が現れています。
たとえば、いわゆる同調圧力の問題があります。そもそも、子供は大人以上に、同調圧力に弱い存在です。近年、注目されている「進化心理学」では、「ヒトは、群れから離れると、生きていくことができないため、同調圧力に弱くなった」とも考えるのですが、子供はその傾向がさらに強いのです。
文明社会の訪れる前、子供は群れから外れると、ほぼ確実に命を落としたため、仲間はずれを極端に恐れるように進化してきたのです。むろん、同調圧力に弱いほど、マスクをするしないなどをめぐるプレッシャーからのストレスは大きくなります。
また、休校や学級閉鎖などが繰り返される影響で、生活リズムが崩れ、心身に変調を来している子供が増えています。「おなかが痛い」「頭が痛い」と訴える子供、あるいは、不安になりやすい子、落ち着きがなくなる子が多くなっているのです。
むろん、自宅にいる時間が長くなれば、ネットやゲームへの依存も進みます。外に出て遊べなくなり、自宅で過ごす時間が長くなると、食欲不振も進みます。国立成育医療研究センターの調査では、2020年度、神経性やせ症の外来患者数が前年比60%も増えたといいます。同症は、思春期に多い症状ですが、おそらくは人とのコミュニケーション不足によって外見へのこだわりが強まり過ぎたことから、それだけ食欲不振に陥っている子供が多いのです。
また、もともと学校が苦手な子供の場合、学校が再開し、新たな登校日を迎えたときに、抑うつ的な傾向が高まる恐れがあります。翌日に新学期がはじまる夏休み最後の日に、子供の自殺が増える「8月31日問題」の存在は知られていますが、休校と開校の繰り返しは、そうした“悲しい節目”の頻度を増やすことにもつながりかねません。
そして、今の子供たちの多くは、運動会で声援を送ることもできず、卒業式で合唱することもできません。そうした異常な日々から、子供たちを救い出す「決断」も、私たち大人の責任だと思うのです。
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マスクなしでも安心して過ごすための、免疫力の高め方とは?
続きは『マスクを外す日のために』をお楽しみください。
マスクを外す日のために
みなさんも薄々感じておられるのではないでしょうか。そろそろマスクを外しても大丈夫なのではないかと……。
欧米の多くの国がマスク着用義務の緩和や撤廃に踏み切っている中、日本だけが議論すらなされていません。
実はマスクには健康上のデメリットもあり、特に子どもたちへの悪影響は深刻。マスクのほかにも、長く続いた自粛生活自体のダメージははかりしれません。
「自粛・防御一辺倒」の対策に追われるのではなく、自らの免疫力を高めながら、マスクを外す日に今から備えませんか。コロナを恐れすぎずに生きる、新・健康論。