「夫源病」の名付け親としても知られる医師の石蔵文信さんは、64歳で前立腺がんが全身の骨に転移。
現在は外来を行いながら、自身の治療を続けてらっしゃいます。
延命治療や胃ろう、医師としての決断とそれをどう伝えるのか――
悔いのない最期のために、今から考えておきたいことをまとめた一冊『逝きかた上手』が発売されました。
「余命を知ったら幸せになった」という現役医師が伝える終活の心得から、特別に一部公開いたします。
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孤独死は、本当に不幸なことなのか
『死ぬ瞬間の5つの後悔』は、多くの終末期の人をみとってきたオーストラリア出身の介護専門の著者(ブロニー・ウェア氏)が、その経験をまとめた本です。
ネットなどで紹介されている5種類の後悔を見ると、いろいろと示唆に富んでいて、考えさせられます。
まず大前提として「後悔しないためにどうすればいいか?」という問いの答えを出すことは、なかなか難しいと思います。
多分ほとんどの方が、死ぬ瞬間にいろいろな後悔をしてきたと思います。死ぬ瞬間でなくても、毎日毎日後悔の連続だという人もいるでしょう。私もその一人です。だから「人生の最後にいろいろな後悔があっても当たり前だ」と思うことが大切ではないでしょうか。
五つの後悔の中に「友人と連絡を取り続ければよかった」という項目があります。それは孤独を解消するためには必要な方法かもしれません。若い元気な時は孤独に対する不安は少ないように思えますが、年を重ねるにつれて孤独がつらく感じるようになり、終末期にはかなり大きくのしかかってくるようです。
孤独を回避する一番の方法は、家族を作ることです。家族がいても折り合いが悪ければ孤独を回避することはできませんが、それでも自分の親族がどこかで生きているという安心感はあるでしょう。
もう一つの方法は、この本にあるように友人を作って連絡を取り合うことです。しかし、これも万全ではないように思います。友人は自分と同じような年ごろの方が多いわけですから、すでに亡くなって連絡できなくなる友人も増えていくでしょう。
さらに連絡が取れたとしても、自分と同様にかなり弱っていれば会うこともできません。たとえ元気な友人がいても、懐かしい話くらいはできても、血縁ではない友人の看取りまで面倒を見ようという人はそれほど多くはないでしょう。
ですから「友人と連絡を取る」という方法も、あまりあてにならないように思います。ではどうすればよいのでしょうか。
よく「遠くの親類よりも近くの他人」と言うように、地域での人間関係を大切にすることだと思います。
私はいつも「孤独死は仕方がないが、亡くなってから3日以内に発見されるような生活を送っておくことが大切だ」と話しています。女性の場合は、孤独死をしても数日後に発見される可能性が高いといわれています。それは日ごろからお付き合いしている方が多く、姿を見なくなったら心配して駆けつけてくれるので、死後早いうちに見つけてもらえるからのようです。
逆に男性の場合は、顔見知りの方ぐらいはいるのですが、普段からお付き合いをしている人が少ないため、姿を見なくなっても誰も気に留めてくれず、遺体の発見が遅れるといわれています。
高齢になってからの孤独はかなりつらいですから、孤独死を念頭に入れながら、元気な時から地域での人間関係を築いていくことが望ましいように思います。もしそれができないようなら、孤独を受け入れるしかないような気がします。
皆さん、元気なうちからよく考えておきましょう。