フィンランドは、世界幸福度ランキングで5年連続第1位に!
マリメッコやムーミンなど可愛いイメージがありますが、実は教育・医療・デジタルなどの多分野で最先端を走っています。
ロシアやスウェーデンといった大国に挟まれ貧しかったフィンランドは、どうやって変わってきたのか。
フィンランド流の新しい考え方がわかる『フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか』より、一部を抜粋してお届けします。
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日本と対極のデジタル化政策
フィンランドではデジタル化が進んでいる。
国際的に高い評価を受けているが、まだまだ足りないところがあるとし、フィンランド政府は野心的にさらなるデジタル化を進めようとしている。現在、ワーク・ウェルビーイング発達計画を準備中だ。その目的は、2030年までにデジタル時代のワークライフ・イノベーションの発展と、ワーク・ウェルビーイングで世界一の国にすること、市民と社会のウェルビーイングを高めること、生産性を上げることなどが目的で、それは必然的にイノベーションと結びつくとしている。(中略)
IDナンバーで、医師との連絡や年金額予想ができる
フィンランドのIDナンバーは、1962年に年金保障センターという役所が年金を受けるすべての人に出した番号として始まった。1964年からは、国民年金機構が病気の際の保険としてフィンランドに永住するすべての人に与えるようになった。情報処理システムを使った、全国の統一的な人口登録が議論され始めたのも1960年代で、1969年に人口登録センターが設立された。本格的に情報処理システムによる人口登録が始められたのは1971年である。国民年金機構が管理していた情報は、1970年代に入ると人口登録センターの所管に移った。(中略)
デジタル人口情報局が管理するのは、フィンランド市民と永住権を持つ外国人。自分の情報は、デジタル人口情報局のホームページからログインして、オンラインでいつでも見ることができる。変更や追加も可能だ。
IDナンバーは日常のありとあらゆる場で必要で、それがなければ何もできないほどだ。生まれるとIDナンバーを得て、その後は保育園に入園する、就学前教育を受ける、小中学校に入学する、高校卒業試験を受ける、職業学校や大学に入学する、コロナワクチンを予約する、図書館のカードを作る、眼鏡屋でコンタクトレンズを作る、銀行口座を作る、求職・就業するなどの際に求められる。
さらに郵便局に届いた荷物の受け取り、国外からの荷物の税関手続き、動産・不動産の売買、確定申告、パスポートの申請、自動車やヨットなどの免許申請、結婚、遺産相続、養子縁組、子どもの認知、選挙投票。市民イニシアティブを起こすとき、市民組織を作って特許庁に登録するときなどにも必要だ。市民組織は15歳以上、3人以上で作って法人として登録することができる。
自分に関する個人情報は前述したデジタル人口情報局に加え、医療、税務署、年金センター、郵便局、交通などのデータベースやホームページにログインして見られる。異なる医療機関にかかっても同じ電子カルテに記録され、過去1年の診断や治療、処方箋なども見ることができ、終末治療の際に希望することなどを書き込むこともできる。
デジタル化によって、オンラインで用を足すことができる。前もって予約した時間に、看護師や医師とチャットも可能だ。医療機関や銀行、役所との交信は自分のメールからではなく、それぞれのホームページを通じたメールの方が安全性は高い。パスポート更新、確定申告、税関手続き、車やヨットの免許更新、年金額の予想などもオンライン上ですむ。車検の時期が近づいたり、探している仕事に近い求人があったりすると通知が来る。
デジタル化により統計が簡単につくれて、政策にも生かされる
デジタル化、集約化された情報はビッグデータになって、他の情報と連結されて選挙管理、課税、司法、行政の政策決定や計画、研究、統計などに使われる。政府の機関は、さまざまな統計を作って公開している。知識の検索が容易で、各省庁や専門機関による質の高い情報や統計が得やすい。文書主義の国なので、書類の破棄や改ざん、隠蔽はなく信頼度の高い統計や情報が提供されている。個人情報の保護に、充分注意が払われているのは言うまでもない。
フィンランドでは、さまざまな情報がデータベース・データバンク化されている。すべての法律を集めたデータバンクや、司法的手続きと情報を集めたデータバンクなど、信頼できる知識が得やすい。ビッグデータを使いこなして、デジタルトランスフォーメーション(DX)が現実になっていることは日本との大きな違いだ。日本のように財務省や国土交通省などが、書類や統計の改ざんや破棄を平然と行っている国のデータは、国内のみならず国際的な信用も得ることができないだろう。(中略)
高齢者にはデジタルスキルの支援
生年月日を使ったナンバーは、ほぼ60年にわたって使われてきた。IDナンバーそのものは名前と同じような扱いで秘密にする必要性は低いが、生年月日という個人情報をさらすことと性別を男女に分けることに対する批判があった。それを受けて2023年から2027年の間に、希望する人は生年月日と性別に基づかない番号に変えられるようになる。新生児には、新しいシステムでのIDナンバーが与えられる。個人ナンバーの非個人化であるが、この計画は政府の「ジェンダー平等アクションプラン2020 ― 2023」(2021年)で述べられていて、平等を進めるものと位置づけられている。(中略)
デジタル化のもう一つの問題は、高齢者にはむずかしいことだ。しかし、近親者やケアワーカーが教えるなど啓けい蒙もうに力が入れられている。国営放送Yleは、2018年に「すべての年齢の人にインターネットを」というキャンペーンを行った。4週間のキャンペーン期間に、さまざまなデジタルスキルを教え支援を可視化したという。そこには、年をとったからできないのではなく、年をとっても学び続ける生涯学習と啓蒙の考え方がある。ただし、アナログな方法は完全に消滅したわけではなく、デジタルスキルのない人のために残されている。
フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか
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