ネットのニュースでもよく見かける「不倫」「浮気」の文字。その文字が画面に表れる度に、なぜかその眼差しが厳しくなる人、いませんか。「けしからん」「ふしだらな」「ありえない」。正義の怒りが溢れてくるご様子。確かに、人の道からそれた行動。断罪されても致し方ない。一方で、「昼顔」「金魚妻」と多くの人がハマったドラマもまた「不倫」「浮気」が扱われていてーー。はたまた、昼下がり、一人でランチなどをしていると、隣りに集まっている奥様集団。聞き耳を立てずとも大きな声で交わされているのはパパ友や、アプリで出会った男性とのちょっとした遊び話。「なんだーーみんなうまくやってるくせに」。そう思ってしまうのは意地悪でしょうか。
「恋愛小説の女王」とも呼ばれる作家の小手鞠るいさんの最新刊『情事と事情』は何を隠そう、「不倫」「浮気」「略奪愛」のオンパレード。今年で物書き人生40周年を迎える小手鞠るいさんが「記念碑的作品」とも言う最新刊『情事と事情』に込めた思いとは。
だらしない女ときちんとした女。女癖の悪い男と誠実な男。天使と悪魔。結婚と不倫。純愛と情事。あなたは、どっちが好きですか。私はもちろん、だらしない女と、女癖の悪い男と、悪魔と、不倫と、情事です。だって、おもしろいじゃないですか、読むのも書くのも。きちんとした女と誠実な男が結婚したって、つまらない家庭しか築けませんよ。「幸福な家庭はどれも似たようなものだが、不幸な家庭はそれぞれに不幸なものである」と語ったのはトルストイですが、私はこう言いたい。「恋愛を描いた小説はどれも似たようなものだが、情事を描いた小説はそれぞれに不条理で病み付きになる」と。アメリカのテレビドラマシリーズを意識して、毎回ノンストップで読ませるエピソード7つ。今までの小手鞠るいとは、ひと味もふた味も違った悪魔的に優雅な情事小説です。
不倫に嫌悪感を抱いているあなたにも、不倫小説が大好きなあなたにも、自信を持っておすすめします。もちろん、恋愛小説が好きなあなたにも、嫌いなあなたにも。ーー小手鞠るい
次回から試し読みを掲載いたします。
事情のない情事なんてない。それはこれを読んでいるあなただって、同じはず。
情事と事情
小手鞠るいさん最新刊『情事と事情』試し読みです。