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フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか

2022.07.10 公開 ポスト

フィンランドでは老後も生命保険が不要で、公立病院は安くて質が高い岩竹美加子

フィンランドは、世界幸福度ランキングで5年連続第1位に!
マリメッコやムーミンなど可愛いイメージがありますが、実は教育・医療・デジタルなどの多分野で最先端を走っています。
ロシアやスウェーデンといった大国に挟まれ貧しかったフィンランドは、どうやって変わってきたのか。
フィンランド流の新しい考え方がわかる『フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか』より、一部を抜粋してお届けします。

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生命保険はいらない

私の夫は、大腸ガンの手術を受けたことがある。約3週間の放射線治療の後、手術の前日入院。手術後6日で退院し、その後、点滴による化学療法を4サイクル受けた。

病院には必要なものがすべて置いてあるので、持参したのは歯ブラシと歯磨きだけ。身軽に入院できて楽だ。入院中は様子を見にお見舞いには行ったが、小さい子どもの入院を除いて、家族が病室でつきそうという習慣はない。病院のケアが充分なのでつきそう必要がなく、妻がつきそうことを期待する考え方もない。

※写真はイメージです。(写真:iStock.com/byryo)

また、安静という考え方はなく、体を動かすことも治療の一部になっている。夫は手術の翌日から、廊下を歩いて少しずつ体を動かすように言われた。少し寒いと感じたら病院のガウンを着ればよい。

必要なら歩行補助の用具を使う。寝てばかりいると運動能力が落ちるのは事実で、フィンランドに寝たきり老人がいないのは、寝たきりにしないからというシンプルな理由による。入院期間が短いことも特徴で、大きな手術の後でも1週間程度で退院になる。もちろん治療が必要なら退院しないが、入院が短いのは基本だ。

4ヶ月の病気休暇が終わると、勤め先の大学の夏休みが始まった。合計約8ヶ月の自宅療養の間、治療と回復のプロセスをともにしたが、夫は自分のことは自分でしていた。幸い、現在は完治している。

病院までのタクシー代 or ガソリン代の補助がでる

家から病院までは車で30~40分の距離だが、化学療法は身体的にきついのでタクシーを使った。「国民年金機構タクシー」というシステムがあり、1回につき25ユーロ(3250円)まで自己負担だが、それを超える場合は国民年金機構が払う。1年間の自己負担の上限は300ユーロ(3万9000円)で、それを超える金額は国民年金機構が払う。請求された金額はまず自分で払い、後で払い戻しを受けるシステムだ。自分の車で行く場合は、ガソリン代の補助が出る。

公立病院の医療費はとても安く、質が高い

公立病院での医療費にも自己負担の上限額があって、2022年は年間692ユーロ(8万9960円)である。外科外来、外科手術、入院費、リハビリ、理学療法などを含んだ金額で、それを超える場合は国民年金機構が支払う。この金額は、2年ごとに経済指標インデックスに応じて調整される。つまり、公立病院の医療費はとても安く、医療とケアの質は高い

また、処方薬も580ユーロ(7万5400円)までが自己負担になるが、その後は1年間の自己負担額は50ユーロ(6500円)に下がり、ガンの薬などであってもとても安くなる。電子処方箋なので、どの薬局に行ってもよい。薬局に行くと、処方された薬と同成分だが値段の安い薬があることを教えてくれ、どちらにするか聞かれるので安い方を選ぶのが普通だ。

老後も生命保険は必要ない

私は自分自身の病気の経験も経て、病気になったときのための民間の生命保険は必要ないと思うようになり、それまで入っていた保険をやめた。日本では、医療費もさることながら介護保険や生命保険、医療保険などに少なくない出費が必要だ。2021年11月には介護保険料を払えず、預貯金や不動産などを差し押さえられた65歳以上の高齢者が過去最多の2万人を超えたことが報道された。介護保険料は、開始された2000年度と比べて、2倍近くに上がっているという。病気によって仕事を失うのではないかと心配する人もいて、医療システムと精神的な面も含めた安全への配慮の大きな違いを感じる。

関連書籍

岩竹美加子『フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか』

フィンランドは、国連による世界幸福度ランキングで5年連続第1位! 教育・医療・デジタル、多くの分野で最先端をいく。大学まで学費無償で、持ち家購入には補助があり、生命保険は必要ない。第二次大戦に敗北し、資源もなかった貧しい小国が、なぜ世界中が羨む国になれたのか。仕事もプライベートも充実し、税の「高負担」が負担にならない生活はなぜ実現したのか。現地に30年以上住み、大学で教え子育てもしてきた著者だからこそ知る秘密をすべて解説する。フィンランド流の新しい生き方がわかる一冊。

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フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか

フィンランドは、世界幸福度ランキングで5年連続第1位に!

マリメッコやムーミンなど可愛いイメージがありますが、実は教育・医療・デジタルなどの多分野で最先端を走っています。

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フィンランド流の新しい考え方がわかる『フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか』より、一部を抜粋してお届けします。

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岩竹美加子

一九五五年東京都生まれ。一九九一年より三十年以上にわたりフィンランドで暮らしている。ペンシルヴァニア大学大学院民俗学部博士課程修了(Ph.D.)。早稲田大学客員准教授、ヘルシンキ大学教授等を経て、現在同大学非常勤教授(Dosentti)。著書に『フィンランドの教育はなぜ世界一なのか』(新潮新書)、『PTAという国家装置』(青弓社)、編訳著書に『民俗学の政治性』(未來社)、共著にFolklore: Critical Concepts in Literary and Cultural Studies(Routledge)等。

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