フィンランドは、世界幸福度ランキングで5年連続第1位に!
マリメッコやムーミンなど可愛いイメージがありますが、実は教育・医療・デジタルなどの多分野で最先端を走っています。
ロシアやスウェーデンといった大国に挟まれ貧しかったフィンランドは、どうやって変わってきたのか。
フィンランド流の新しい考え方がわかる『フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか』より、一部を抜粋してお届けします。
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給食や教材も無償
フィンランドは小中一貫の教育で、小中学校は基礎学校と呼ばれ9年生まである。教育で最も基本的な原則は無償、ウェルビーイング、子どもの権利、平等に要約できる。
教育費は小学校から大学まで無償。給食は保育園から高校まで無償。教科書と教材は、小学校から高校まで無償だ。小中学校では、ノートなど学用品ももらえる。従来、高校の教科書は有償で親が買う必要があったが、2021年秋から高校まで義務教育になったことに伴って無償化された。
また、日本の学校にあるような学級費やPTA会費、お揃いの体操服、家庭科キット、算数セット、習字道具、卒業アルバムなどさまざまな出費も一切ない。無償は、貧富の差による教育格差を広げないための政策だ。給食は教室で食べるのではなく、小学校から高校まで学校の食堂で供される。
ビュッフェスタイルで、メニューにはベジタリアンやラクトースフリーなどの選択肢がある。子どもの給食当番はなく、エプロンを持ち帰って親が洗ったり、アイロンをかけて学校に持って行ったりの手間もない。またつけ加えると、子どもは学校の掃除はしない。自治体が、清掃会社と契約して出費している。日本では、子どもが雑巾と箒で教室を掃除。母親が雑巾を作ることを求める学校も多く、母と子の勤労奉仕によって行政は経費を節約している。
私立学校も普通は授業料無償で、利潤を得ることは禁じられている
フィンランドで、教育が無償になったのは1970年代。公立学校の運営は、クンタと呼ばれる自治体(日本の市町村に相当)が出費し、県は教育には関わらない。私立学校も、政府またはクンタなどからの公的資金で経営されるのが特徴だ。基本教育法第7条によって私立学校が利潤を得ることは禁じられており、授業料はないのが普通だが、親が多少必要経費を払うことはあるようだ。
日本やアメリカ、イギリスなどでは公立学校の教育は質が悪いが、私立学校は経済的に余裕がある家庭の子どもに質の高い教育を行う傾向がある。しかし、それは平等を重視するフィンランドの教育思想が嫌うことで、そうした差はほとんどない。
国が、17歳での経済的自立を支援する
17歳になると給付型奨学金、学習ローン、住居補助からなる公的な学習支援を受けることができて、親からの経済的自立を支える。金額はそれぞれの状況によって多少異なり、夏休みの3ヶ月は受けられないのでアルバイトなどが必要になるが、自助、共助ではなく国による公助が基本だ。日本では、生活保護世帯の子どもは大学に進学することができない。大学進学は、「贅沢」とみなされるためだ。「社会的弱者は排除されても仕方がないという発想」(*3)が国の制度になっている。貧困を生み出し、再生産しないために無償の教育を提供するフィンランドから見ると胸が痛む。学習支援について、詳しいことは拙著『フィンランドの教育はなぜ世界一なのか』(新潮新書)に書いているので、興味のある方はそちらをご覧いただきたい。
*3 桜井智恵子『教育は社会をどう変えたのか 個人化をもたらすリベラリズムの暴力』明石書店より
フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか
フィンランドは、世界幸福度ランキングで5年連続第1位に!
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