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麻酔を使った出産がふつう
フィンランドでは、麻酔を使った出産が一般的だ。2019年の経膣出産では、92・8%で麻酔が使われている。出産時の麻酔が広がったのは1980年代。90年代に一般化し、99年には初産で60%の人が麻酔を受けていた。以下のグラフは、1999年から2019年までの間の麻酔を使った出産の割合を示している。
出産のプロセスは子宮口が全開するまでの第1期、胎児が子宮から降りてきて娩出(べんしゅつ)するまでの第2期、胎盤が排出される第3期に分けられる。
出産時の痛みは第1期、子宮の筋肉の強い収縮と子宮口を開くための筋肉の伸びによって起こる。第2期では、力んで胎児を娩出する衝動が起きる。麻酔が使われるのは第1期。
麻酔を使う「無痛分娩」は、メリットの方が大きい
フィンランドで最も一般的に使われているのはエピドラルという薬で、痛みが強くなり産婦が希望したら麻酔医が脊椎に注射する。分娩時に感じる痛みの平均は、骨折や末期ガンの痛みと同程度だという。麻酔のメリットは、分娩の異なる段階で使える、痛みが収まらない場合は追加できることなどだという。デメリットは分娩が15 ~30分程度長引くこと、うまく力めなくなることがあること。ごく稀に事故はありうるが、メリットの方が大きい。
日本では、麻酔を使った出産は「無痛分娩」と呼ばれている。英語圏でも同様だが、フィンランドには「無痛分娩」という言葉はなく、「出産時の痛みのケア」「出産時の医学的な苦痛軽減」「エピドラルを使った出産」のように呼ばれる。痛みの感じ方は、人それぞれ違う。無痛分娩は女性が無痛と感じたからつけられた名ではなく、むしろ女性の視点はない名称と思われる。
最近は「和痛分娩」という表現もある。痛みをなくすのではなく、和らげるという意味で「和痛」という言葉が使われているようだ。出産に恐れを感じる女性は多い。麻酔には痛みだけではなく、不安や恐れを和らげる意味もある。出産時に夫やパートナーがともにいるのも、出産時のケアの一つだ。安全な出産のためのケアには、痛みの医学的な軽減も含まれなければならない。
世界から遅れる日本の麻酔事情
日本で分娩時の麻酔は普及しておらず、麻酔医も少ない。日本産婦人科医会が2017年6月に実施したアンケート調査によると、すべての分娩中、麻酔を使ったのは6%である。2017年春以降、大阪府や京都府などの診療所で事故が相次いで発覚した。同年8月、厚生労働省内に研究班が立ち上がり、無痛分娩の実態把握や安全構築に向けた提言をまとめる方針だが、まだまだ時間がかかると報道されている。日本では、麻酔を使った分娩による母の死亡事故もしばしば起きている。
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