東京から湖のある山の村に引っ越して八か月が経った。
あっという間だった。
生まれて初めて見るレベルの豪雪や、部屋の中なのにマイナス5度を記録する寒さ、一瞬で冷める風呂、戦い方の分からない湿気、毎朝一リットル取れる窓の結露、信じられない場所に生えるカビ、窓を開けると聞こえる鹿の鳴き声、最寄りコンビニまで歩いて三十分など、関東生まれ関東育ち、人生の半分を東京二十三区で過ごしたわたしにはかなりのカルチャーショックだった。特に、朝起きて自分の寝ている布団の表面がびっしり濡れているのにはおののいた。怪奇現象かと思った。結局、それもまた結露だったわけだけれど。自分に結露が積もることがあるなんて考えたこともなかった。
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愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。