一年3セットの服で生きるスタイリスト、あきやあさみさんによる著書『一年3セットの服で生きる「制服化」という最高の方法』が7月6日に発売されました。服選びの苦しみから抜け出して、自分が納得できる服を「制服」のように着ることをすすめる本書。納得できる服を着ると何が変わるのか? 勇気づけられる体験談を抜粋してお届けします。
「なりたい服」を着るとどんなことが起こるのか
ファッション講座を始めて1~2年過ぎたあたりから、思い切って服を変えたことによって「人生がちょっといい方向に変わったよ!」という嬉しい声が届くようになりました。とは言っても「服を変えただけで王子様が迎えにきてくれました!」というシンデレラストーリーではありません。
みなさん、自分と葛藤しながらもなんとか「なりたい服を買って」、勇気を持って「なりたい服を着て」、心から「なりたい自分になろう!」と全部自分で決意して意識を変えたことにより内面と行動が変わっていったのです。
「服を変えようと勇気を振り絞り行動したから、未来が変わった」のだと思っています。この一歩が踏み出せた人にだけ見える世界があるのです。「なりたい服」を着ることでどんな風に自分を取り巻く世界が変わっていったのか、ぜひ体験談を読んでみてください。
ケース(1) 30代前半Aさま
【強くて、自立しているかっこいい人になりたい】
どちらかというと優しい顔立ちで、明るい色合いの服を好んで着ていたので、上司や同僚にからかわれたり、女の子扱いされて意見が軽く見られることがよくありました。毅然とした態度で言い返しても「はいはい、悪かったね」と軽くあしらわれてしまい、対人関係のストレスがたまっていました。いつしか「自分の意見は聞いてもらえないのが当たり前」と引っ込み思案になっていました。
そんな私が昔からなりたい姿は「強くて、自立しているかっこいい人」。今の職場で出世したい、頼りにしてほしいという気持ちも抱いていました。「なりたい姿」をきちんと言語化できてから、思い切って「キリッと強く見えるようなモノトーンのジャケットスタイル」に服装を変えました。買いに行くのも緊張したし、本当に自分が着こなせるかどうか半信半疑でしたが、人生を変えるつもりで本気でファッションに挑みました。
服装を変えてみると、まずは自分の気持ちに変化がありました。「せっかくかっこいい服を着ているのだから中身もかっこいい自分でいたいな」と感じるようになったのです。「せっかくいいジャケットを着ているんだから、会議のときは自分から意見を伝えるようにしよう」「せっかく服を変えたんだから、忙しくて後回しにしていた後輩のサポートにしっかり向き合おう」など、今までは頼まれてから渋々していたことを自分から進んでするようになりました。
服装を変えたら「この服を着ている人はどんな仕事をするかな」という想像をして、行動も変わるようになりました。自信がついて、人の目を見てしっかり話せるようになったのも大きな変化でした。
気がついたら仕事で頼られることが多くなって、上司から「よかったら、次の昇格試験を受けてみないか?」と声をかけられました。好きな服を着ていたときよりも、今は仕事に打ち込める服が自分に合っていると感じます。また次の「なりたい姿」になれるようにこれからも服を選んでいきたいと思います!
ケース(2) 20代後半Bさま
【自分で自分を肯定できて、他の人にも寛容な心の広い人になりたい】
きれいなものやキラキラした世界が大好きだったのですが、小学生の頃クラスメートに「Bちゃんはピンク色似合わないね」と言われたことで、かわいらしい服が着られなくなってしまいました。確かに私は地味な顔立ちで、クラスで目立つ方でもなかったので「かわいいものは似合わないから着てはいけないんだ」と好きなものを心の奥に閉じ込めて生きてきました。
思春期になると「アイドルの○○は地味顔なのに、花柄なんて着て似合ってないな」「○○ちゃんはかわいくないのに化粧を頑張っていてバカみたい」と心の中で他人のルックスにまで文句をつけるようになってしまいました。このままでは自分の外見だけでなく、中身まで嫌いになってしまう。なぜこんなにも「見た目」に囚われてしまうんだろうと記憶を掘り返したら、「ピンク色が似合わない」と、たった1回だけ言われた言葉がずっと心に残っていることに気がつきました。
どんな人になりたいのかと真剣に考えているうちに「自分で自分を肯定できて、他の人にも寛容な心の広い人になりたい!」と強く思うようになりました。勇気を振り絞って、憧れていたけれど自分には相応(ふさわ)しくないと思っていた「レース刺繡のかわいいワンピース」を1着購入しました。本当は試着をしなきゃと分かってはいたのですが、店舗に行く勇気がどうしてもなくて、夜中にオンラインショップでこっそりと買いました。「かわいい服を買うのにどうして喜びではなく苦しみを感じているのだろう」と自分で思わず笑ってしまいましたが、まずは「買えた」ことに大きな進歩を感じていました。
最初に袖を通したときは「どうせ似合わないよ。笑われちゃうよ」と心の声が聞こえてきたのですが、これを乗り越えないと一生なりたい自分になれない! 服を着るだけで死ぬわけじゃないし、やってみよう! と、思い切って仲のいい友人とのランチに着て行きました。友人は「かわいいね、似合っているね、頑張ったね」と心から言ってくれて、嬉しくて涙が溢れました。
なんで今まで意地を張って好きな服を着られなかったんだろう、どうして他人を素直に褒められなかったんだろう、と心から反省して、かわいいものやキラキラしたものも少しずつ取り入れられるようになりました。一番コンプレックスだった服が変わると、心が前向きになって「今までどうせできないと思い込んでいたことをやってみよう!」という気持ちになりました。ダイエットを始めたり、メイクの練習をしてみたり、海外留学のための語学の勉強も始めたりして今は毎日が楽しいです。
ケース(3) 40代前半Cさま
【いきいきした個性的なおばあちゃんになりたい】
個性的な明るい色の服が大好きで高校生時代はよく着ていたのですが、会社に就職してから目立つのが嫌で「無難な服」しか着られなくなっていました。口癖は「将来は、毎日楽しいことをしているいきいきした個性的なおばあちゃんになりたい!」でした。漠然と、60~70代くらいになったら、人の目を気にせず服が着られるようになると思っていました。そんな中、60代の母に病気が見つかり、看病のために頻繁に病院に足を運ぶようになりました。
悲しい話ですが、体調を崩した母は「好きな服を着る」どころか好きなところにも自由に出かけられず、好きなものすらあまり食べられない状態でした。母を看取って落ち着いてから自分の人生を取り戻したいと思っていたのですが、なかなか前向きになれませんでした。「今は地味な服でいいんです。おばあちゃんになったら個性的な服を着ようと思ってるんです」と自分の口から出た瞬間、はっと大きな違和感を覚えて涙が止まらなくなりました。自分がいつまで健康でいられるか分からないのに、いつか来るはずの「個性的な服を着る日」をただ夢見て、「今の自分を蔑(ないがし)ろにしていること」に気がついてしまったからです。
「性格が明るいCさまには明るい服が似合うと思いますよ。おばあちゃんになったら着ようと思っていたような個性的な服、今、一度だけでいいので着てみませんか?」とアドバイスをしてもらい、百貨店に行って、鮮やかなオレンジ色のニットと柄スカートを着てみました。見たことがない華やかな自分を見て「ああ、闘病中の母に見せたら喜んでくれたかな」なんて思ってまた泣けてきましたが、後悔しても仕方ないと、思い切って購入してみました。
思えば「退職したら旅行に行こう」「仕事が落ち着いたら料理教室に通おう」と来ないかもしれない「いつか」を信じて先送りしていたことがいくつもありました。今を前向きに生きていない人が「いきいきしたおばあちゃん」になれるはずなんてないよね、と気がついて、やれることはやってみよう! と行動に移し始めました。
結婚は諦めていましたが、通い始めた料理教室で偶然いいパートナーと出会い一緒に暮らし始めました。なんで声をかけてくれたの? と聞いたら「いつも明るい服を着ていて、性格も明るい人なんだろうなってすぐに分かったから」と言われ、ああ、服を変えなければ、この人と出会えていなかったかもしれないんだな、服って大事なんだな、と初めて腑に落ちました。
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2022年7月6日発売『一年3セットの服で生きる 「制服化」という最高の方法』について