誕生日が過ぎた。
今年も母から「おめでとう」の連絡が来なかった。
当たり前だ。母はもう他界しているのだから。毎年毎年、必ず誕生日には母からおめでとうのラインメッセージとなんだか可愛らしいスタンプが届いて、わたしからありがとうの電話を返す、というのが決まり事みたいに続いていた。父から連絡を貰ったことはない。これは別に「父」とか「母」とかいう属性のせいではなく個体差なのだけれど、わたしは母から毎年貰う「お誕生日おめでとう」がほんとうに嬉しかったんだなあと思い知る。メッセージは携帯の本体を交換しても残っていてくれるので、すごくありがたい。
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愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。