携帯電話に友人から電話がかかってくると、ディスプレイにその名前が表示される。誰もが使っている当たり前の機能で、難しいことは何もない。
あらかじめ、自分の携帯電話に友人の名前と電話番号を登録しておく。電話がかかると、携帯に内蔵されたプログラムが発信元番号から名前を検索し、それをディスプレイに表示する。
コンピュータでデータベースを構築する際に求められるのは、必要な情報を膨大なデータの中から効率よく検索するための機能である。その基本設計に失敗すると、大金を投じたソフトウェアも何の役にも立たない。
どんな複雑・大規模なプログラムも、携帯電話の小さな検索プログラムと本質的な違いはない。コンピュータというのは、入力(インプット)されたデータをあらかじめ決められたルールに則って演算し、出力(アウトプット)する機械のことだ。少なくとも現在のところは、人間の脳のように推理したり、想像したりはできない。
たとえば、携帯電話に「ヤマダダロウ」という友人の電話番号を登録したとする。「ヤマタタロウ」と入力して検索しても、その番号は表示されない。インプットしたデータが違うからだ。
人間の脳なら、「ヤマタ」を「ヤマダ」の入力ミスと即座に判断できる。コンピュータでも似たようなことは可能だが、これは検索機能の設定をあいまいにしているだけで、CPUが両者の関連性を推測しているわけではない。検索条件を緩くすれば多少の入力ミスはカバーできるが、データ数が膨大だと出力結果が増えすぎて、かえって逆効果になることも多い。1,000万件を越える膨大なデータを扱うのなら、なおさらだ。
さて、ここからが本題だ。
銀行、クレジットカード会社、消費者金融業者などは、貸し倒れを防ぐ与信管理の手段として業界ごとに信用情報データベースを整備している。クレジット会社の多くは銀行の子会社か関連会社で、そのうえ最近では、銀行が消費者金融に続々と参入している。
2000年12月からクレジット会社と消費者金融業者のデータベースを接続するテラネットが稼動しており、これまで門外不出だった消費者金融の融資情報(ホワイト情報)も他業種に開放された。個人の信用情報は、事実上、ほとんどの金融機関に共有されている。
金融機関は、個人から融資(カード発行)の申込があると、信用情報データベースに個人情報を照会する。とはいえ、個人情報保護の原則のもと、不必要な個人情報の閲覧は金融機関に許されていない。あいまいな条件で情報を検索することはできないのだ。
では信用情報データベースは、どのような入力データをもとに検索対象を特定しているのだろうか?
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