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15歳からのリーダー養成講座

2022.10.29 公開 ポスト

「これ」さえ分かっていれば、人気も才能もなくても「いいリーダー」になれる工藤勇一(横浜創英中学・高等学校前校長)

「いいリーダー」には誰でもなれます。生まれつきの才能はいりません。人気者でなくても大丈夫です。でも、リーダーになる人が必ず知っておかなくてはならない、とても大切なことがあります。それは…… 。

数々の大胆な学校改革を実現し、各界からその手腕が注目される工藤校長。生徒たちに自ら「リーダーシップの基本」を講義した特別授業を書籍化した『改革のカリスマ直伝! 15歳からのリーダー養成講座』から一部抜粋してお届けします。

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(写真:iStock.com/Nuthawut Sowsuk)

僕がいつも大切にしていることを、まずひとつ挙げましょう。

それは、「人は簡単には動いてくれない」ということを、当たり前のように受け入れることです。

「人は簡単には動いてくれないことを受け入れる」とは、「人は動かなくて当たり前」「言葉は伝わらなくて当たり前」と考えられるようになるということです。

たとえばみんなで協力し合って何か達成しないといけないとき、やる気のないメンバーが混じっているとついイライラしませんか。とくに仕切り役の人はイライラするでしょう。

さらに、そのメンバーに「ちゃんとやってよ」とお願いしても態度が変わらないと、さらにイライラするはずです。

でも、いまの僕はそんなときでもほとんどイライラしなくなりました。

人は性格や考え方、その日の気分、目標などがバラバラなのは当たり前で、リーダーの思い通りに動くことなどありえないし、リーダーが一生懸命説明しても、その言葉の多くは相手に刺さらないという事実を僕は知っているからです。

ここは大事なところなので、もう一度言います。

人はみんな違います。

だから人は簡単には動きませんし、言葉も簡単には伝わりません。

そもそもメンバーには、リーダーの意見に同意したり、命令に従ったりする義務はありません。

そうした事実をすべて受け入れたうえで、チームを機能させていくのがリーダーの役割です。

冷静に考えると当たり前なのですが、ほとんどの人がそのことに気づいていません。ときには「熱く語れば言葉は伝わる」「圧力をかければ人は動く」と思い込んでいる。前提にしている考え方が違っているので、いざリーダーになったときに苦労することになるんですね。

「簡単には動かない人」を動かす方法について、「簡単には伝わらない言葉」を伝える方法について、もう少し踏み込んで考えてみましょう。

それには「戦略」が必要です。普段着のありのままの自分で正面突破をしようとしないと言ってもいいかもしれません。自分の考え方や熱い思いを真正面から一方的に主張し、合意を迫ることは、いいリーダーのすることではありません。

人の考え方はバラバラなので、正面突破をしようとすると必ずどこかで対立が起きます。意見の対立もあれば、感情の対立もあります。こうした対立を解消する方法は第7回[対立を解決する対話の方法]で説明しますが、とくに感情の対立ほどタチの悪いものはありません。人間関係がギクシャクするし、前向きな話がまったくできなくなるからです。

そもそも「戦略」という言葉は軍事用語で、戦況全体を見渡し、いつどこでどのように戦えば最小限の損失で自分たちの目標が実現できるのか考えることを言います。「あ、敵がいた。全員突っ込め、総攻撃だ!」といった戦い方は、非常に効率が悪いのです。

それにもかかわらず、世の中の多くのリーダーは正面突破型です。情熱、信念、正しさといった旗を高々と掲げて、真正面から勢いよく突っ込んでいきます。要は「自分の意見が絶対に正しいからお前も従え」という態度で、人を動かそうとしてしまうんですね。

その意味では、アップルのスティーブ・ジョブズさんも正面突破型だったのだと思います。自分の会社なのである程度のトップダウンが許される環境だったこともあるし、彼のこだわりや描いていたビジョンは、そのままアップル社の製品の魅力でもありました。それでも結局、敵をつくりすぎて会社を追い出されてしまったわけです。

正面突破型のリーダーは、思い通りに動いてくれない人がいると感情的になります。「何で言うことを聞いてくれないの!」と突然泣き出す真面目なクラス委員や、「お前ら言うことを聞け!」と高圧的な態度を取る先生がいるでしょう。

僕も駆け出し教員の頃は、生徒たちや理不尽な先輩教員に対して、正面突破を試みたこともありました。でも、その多くは失敗しました。悔しい思いもしました。

そしていつの頃からか、自分の失敗を教訓に変え、戦略を練ることができるようになってきました。

おそらくいまではどんな組織に放り込まれても、正面衝突をうまく回避しながら、全員を巻き込んで組織を変えることができると思います(もちろん、覚悟を持って真正面から勝負することだってありますよ)。

戦略を練るのは「技術」です。その方法はおいおい説明していきます。技術なので、最初のうちはうまくいかないこともありますが、失敗したことこそが大事な学びになります。

「僕は最近学校で人気者だから、生徒会長になればみんなついてきてくれるはずだ」とか「部活で後輩たちに慕われているからキャプテンが務まるはずだ」と考えるのも、正面突破をしようとしていることと同じです。

思い通りに動いてくれる人も何人かはいるでしょうが、全員が従うことはないでしょう。でもその事実を認めることができないリーダーは、「何で君は僕に従わないんだ!」などと言って、統制が取れない状況を、動かないメンバーのせいにしがちです。

チームが機能しない真の原因は、「人は簡単には動いてくれない」という当たり前のことを考えず、人に動いてもらう努力を怠っているリーダーにあります。まずはそのことを頭に入れておきましょう。

関連書籍

工藤勇一『改革のカリスマ直伝! 15歳からのリーダー養成講座』

結果を出せるリーダーになるための「基本の〈き〉」を身に付ける。 初めて部下を持つ人・チームを率いる人必読! 数々の大胆な学校改革を実現し、教育関係者だけでなく、経営者やビジネスパーソンからもその手腕が注目されるカリスマ校長・工藤勇一氏。工藤校長が、生徒たちに自ら「リーダーシップの基本」を講義した全8回の特別授業がついに本になりました。

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15歳からのリーダー養成講座

初めて部下を持つ人・チームを率いる人必読!
人はどうしたら動いてくれるのか。
迷ったときは、どう決断したらいいのか。
メンバーの対立はどう解消したらいいのか。
言いたいことはどうしたら伝わるのか。

数々の大胆な学校改革を実現し、教育関係者だけでなく、経営者やビジネスパーソンからもその手腕が注目されるカリスマ校長・工藤勇一氏。工藤校長が、生徒たちに自ら「リーダーシップの基本」を講義した全8回の特別授業を公開します!

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工藤勇一 横浜創英中学・高等学校前校長

横浜創英中学・高等学校前校長。1960年山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校長(~2020年3月)。教育再生実行会議委員、内閣府規制改革推進会議専門委員、経済産業省産業構造審議会臨時委員など公職を歴任。麹町中学校では、宿題廃止・定期テスト廃止・固定担任制廃止などの教育改革を実行し、教育関係者だけでなく、経営者・ビジネスパーソンの間でも注目を集める。初の著書『学校の「当たり前」をやめた。生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革』(時事通信社)は10万部を超えるベストセラーに。他に『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(SB新書)、『学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか』 (鴻上尚史氏との共著/講談社現代新書)、『子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む』(苫野一徳氏との共著/あさま社)など。

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