今日一日の幸せを感じて生きる……そんな充足感あふれる日々のベースとなるのは“自信”、つまり“自己信頼”。それも他人を介さず手に入れる方法をまとめた書籍『「自分に生まれてよかった」と思えるようになる本』(藤野智哉著)から、一部を抜粋してお届けします。
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脳の仕組みを生かす
心がきつい状態のとき、SF作品のようなタイムトラべルをしてみるという想像は悪くないと思っています。
最近、10代から20代向けの映画に、タイムトラべルものが多いのは、面白い傾向だと感じています。
若い世代ほど発想が自由ですし、時空を超えることで、何かしらの意味や学びを見いだそうとしているのかもしれません。
精神科医としてすすめているわけではないですが、私は人が生きていくために必要な「思考」として、過去や未来に思いを馳せる、そういう想像やイメージはあっていいと思います。
特に明るい未来を思い描くことは、今、暗い気分にからめとられているとしたなら、それを一掃できてしまう方法のひとつです。
未来を想像する脳の機能には、「前頭前野」という部位が関係しています。さらに幸せな気分に浸ろうとするとき、働きが活発になる器官が3つあります。
ひとつめは「扁桃体」といい、2つめは「前帯状皮質」です。この2つの組織の連携は強く、自分がこうなったらうれしいというイメージを強く思い描くと、大いに働いてくれるのです。
反対に悲観的になりやすく、うつっぽくなりやすい人は、この働きが弱くなっていることがわかっています。
3つめは、「尾状核」という器官で、「いいことが起きそう」という報酬予測を脳に伝え、幸せな気持ちを呼び起こしてくれます。何に対しても前向きで、楽観的なタイプの人は、この3つの働きが強いのです。
この脳の仕組みは、人間の存続に欠かせないものといわれています。人類は希望や夢を描くことで、苦しいことがあっても生き延びてこられたのでしょう。
ですから、できるだけ楽しい未来図を想像してください。
時間軸をずらしてみる
たとえば10年後、20年後、あなたは何をしているでしょうか。今、あなたを悩ませている数々のこと、特に人間関係のストレスは、もうすっかりなくなっているかもしれません。
さんざん嫌な思いをさせられた人とは、とっくに離れていて、まったく関係のないところで生きているかもしれないのです。
その人はずいぶんと威張っていたけれど、会社から一歩外に出れば、なんのことはない、誰も知らない、ただの人だったではないかと笑ってしまうかもしれません。
つまり人生の長い尺度で見たら、一時、近いところにいたけれど、ほんの一瞬、少し関係しただけの人なのかもしれないのです。
そして……、今生きている人たちのほとんどは、100年後には、もういません。
それからもうひとつ、私は“空を飛ぶ鳥”のような視点、感覚を持つことも必要ではないかと思っています。
自分が鳥になったようなつもりで、空から地上を眺めてみるのです。都会なら、高いビルの合間で動いている人間や車を、なんて小さいものだと感じるでしょう。
もしもイメージがしづらかったら、実際に高度のあるビルの上階や塔の展望台に行ってみることをおすすめします。
はるかに見渡せる街々に、たくさんの人たちが住んでいる。そこで泣いたり、怒ったり、笑ったりしながら暮らしている……。
もっといえば、宇宙にぽっかり浮いている小さな青い惑星を眺めてみるのはいかがでしょう。グーグルで探せば、宇宙の映像はいろいろと出てきます。
そんな小さな星の上で、ひっきりなしに戦争をしたり、我こそはといい合いをしたりしている。
なんとも、ばかばかしく思えてくるのです。
地球儀を買ってくるくる回してみたり、世界地図を壁に貼ってみたりするのもよいかもしれません。
つまらないことだと思うかもしれませんが、毎日眺めているうちに、凝り固まった考えが和らいでくるのを感じると思います。
「自分に生まれてよかった」と思えるようになる本 心が軽くなる26のルール
幸せのコツを習得するほど、お得なことはありません。
・人によく見られたい、をやめる
・「他人と比べる」思考を抹消する
・自分という最大の味方をうまく使う
一度きりの人生なのに、他人と自分を比べて落ち込むばかりの毎日でいいはずがない。考え方を切り変えるだけで、人は「自分に生まれてよかった」と心から思える生き物なのだ。その根拠と方法について現役精神科医がわかりやすく解説します。