テクノロジーの発展や、「人生100年時代」の到来によって激変している私たちの働く環境。ロバート・フェルドマンさん、加藤晃さんの共著『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』は、DX、AI、SDGs、MOTなど、理解しているようでしていない新しい概念をはじめ、ビジネスパーソンが身につけておくべきテーマをまとめた一冊。激動の時代をサバイブするために、ぜひ目を通しておきたい本書から、内容の一部をご紹介します。
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学び続けない人に未来はない
第三次産業革命、グローバル化の進展、さらに昨今言われる第四次産業革命になると、一所懸命モデルは機能しづらくなると考えています。図表4をご覧ください。
その理由は、新しい技術の開発、人々の価値観の変化の前に、学校で学んだ知識、社内教育で習得した知識・スキル(関係特殊的資産)の賞味期限は短くなり、能力が幅の狭い弧を描いて下がってしまうからです。
グローバル競争に晒される企業は、業務遂行能力の低下した社員に高い給料を払い続けることはできません。労働分配率を考えれば、年齢を問わず優秀な人により多く払わなければ、優秀な社員ほど辞めてしまい競争力が低下してしまうからです。第二新卒などからすでに始まっていますが、労働市場はさらに流動化すると思われます。
第三次、さらに第四次産業革命下では、採用時において何を専攻してきたか、より専門性が問われるようになるでしょう。なぜなら、2章で詳述しますが、AIやDXといった進化する技術が経営の業績・競争力を左右するからです。
したがって、収入が業務遂行能力を上回る「A領域」の期間は短く、かつ優秀な人材は奪い合いになるので、企業としては高い給与を提示する必要があります。
ライバルは日本人だけではありません。最近、日系企業もようやくそうした実態・ニーズに対応する雇用制度を導入し始めました。もちろん、一定の要件をクリアーできなければ減給や降格の対象となります。条件によっては、雇用が継続されないこともあるでしょう。Pay for Performanceであれば、不思議なことではありません。
考えてみれば、科学技術が急速に進歩し、人々の価値観も変化しつつある現代社会では、10年前、20年前に大学で4年間学んだだけで、一生通用するというのは無理なことのように思えます。
高まる「学び直し」の重要性
それではどうしたら良いでしょうか。業務遂行能力の維持・向上が求められる中、答えは「学び直し(リカレント教育)」以外にないと思います。それが、図表4の中で下がってしまっている弧から上に伸びる太い矢印です。「学び直し」によって、キャリア・業務遂行能力は短い期間で急上昇しています。
ライフスタイル、ライフサイクルは人それぞれです。長い職業人生の中で、一度と言わず、二度、三度の学び直しは新常識になりつつあると考えています。
学び直すことで、社内での昇進や転職など、人生の転機におけるキャリア交渉力が確実に高まります。しかも国内で学び直しをすれば、海外留学のように収入が途絶えることはありません。
筆者の一人(加藤)が、長く人事・教育に携わってきた役員の方とキャリアについて雑談をしていた時のことです。その役員の方は、こうおっしゃっていました。
「適材適所という言葉がありますが、苦労して適性を探して配置するのですが、はかばかしい業績が出ない人は、次の部署でも同じ傾向が見られます。一方、活躍している人は、あえて少し畑違いの部署に異動させても、独自に勉強して工夫しながら立派な業績を出します。最近、人事のキーワードは再現性ではないかと思っています」
それではどうすれば再現性を担保することができるのでしょうか。再現性とは企業にとっては指示した仕事の成果であり、アウトプットと解釈すれば、社会が変化する中でアウトプットを高めるには、継続的なインプットがどうしても必要です。
それも、質の良いインプットです。私たちは、そうしたインプットを「学び直し」と呼んでいます。
盾と矛
テクノロジーの発展や、「人生100年時代」の到来によって激変している私たちの働く環境。ロバート・フェルドマンさん、加藤晃さんの共著『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』は、DX、AI、SDGs、MOTなど、理解しているようでしていない新しい概念をはじめ、ビジネスパーソンが身につけておくべきテーマをまとめた一冊。激動の時代をサバイブするために、ぜひ目を通しておきたい本書から、内容の一部をご紹介します。