物価高に為替や金利の変動、さらには暗号資産の信用問題など、今、お金を取り巻く環境は激しく揺れています。こんな時代に、どんな知識を身につければいいのか不安になる人も多いのではないでしょうか? バージョンアップさせなければならない知識はありつつも、でも押さえるべきは基本。お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を主宰する児玉隆弘さん『未来のお金の稼ぎ方』より今身につけておきたいスキルをお伝えいたします。
相場観を養って身を守る
投資詐欺になんてあわないから大丈夫、と思っていないでしょうか? 詐欺はお金のプロでも引っかかります。実際、詐欺の被害はいつの時代も減りません。分かっていても騙されてしまう人がそれだけ多いからです。
最も伝統的で、100年以上廃(すた)れない……というのもおかしな話ですが、いまだに手を替え、品を替え、登場する詐欺があります。ポンジ・スキームです。ポンジ・スキームとはその昔、チャールズ・ポンジ(注:1900年代初め、アメリカに実在した詐欺師。国際返信切手と為替レートの差を活用するば儲かると話し資金を募るが、詐欺が判明し投獄された)という人が始めた詐欺で、彼の名前を取ってそう呼ばれています。この詐欺は元本保証がありながら、異常に高い利回りをうたうのが最大の特徴です。「今100万円を預けてくれたら、5年後に200万円にして返しますよ」「今なら利回り15%を保証します」など、普通に考えたら「おかしい」のですが、手口が巧妙でなんとなく信用してしまい、引っかかってしまうのです。
日本の銀行や証券会社が騙された事件もあります。犯人はバーナード・マドフというアメリカの元ナスダック会長です。この人は10%という高い利回りを「必ず出す」と約束するファンドを作り、国内外で資金を集めていきました。彼の経歴から「いいファンドに違いない」と信用して買う人が国内外に増加しましたが、実は運用の実態はなく、集めていたお金の一部を取り崩して配当を出しているだけ。最終的にはリーマンショックで破綻し、逮捕され禁固150年の刑に処されることになるのですが、その被害総額はなんと7兆円です。あのスティーブン・スピルバーグ監督も被害者のひとりに名を連ねています。
つまり、ポンジ・スキームは分かりやすい手口でありながら、よく騙されることがあるスキームなのです。そして、今でも非常に多いです。このスキームのこわいところは、投資している側は騙されていると気づかずにいい投資だと思ってしまうところ。信用できる人であっても、「元本保証&高利回り」をうたっていたら、あやしいと思ったほうがよいでしょう。
そして、このあやしいと思える感覚こそ身につけたいお金のスキルです。何をもってその感覚を持つかというと、「相場観」です。たとえば、牛丼の相場。私も会社近くの牛丼屋によく行くのですが、牛丼がいくらぐらいするものなのか、ほとんどの人は知っていると思います。1杯380円の牛丼が売られていたら、おそらく「まあ、普通だな」と思うでしょう。では、同じサイズで1杯100円だったらどうでしょうか。安すぎてちょっと心配になりませんか? 牛丼の相場を知っていれば、「100円はいくらなんでも安すぎる。賞味期限切れの肉なのではないか?」と疑う目を持つことができ、危険を回避できます。
ですが、お金の相場は分からない人がまだまだ多いのが現状です。「100万円預けてくれたら、1年後には105万円にする」と言われて、いい投資と思うかどうか。「110万円にする」「120万円にする」と言われたら、どう感じるか。相場観がなければ、簡単に騙されてしまいます。
相場観があれば、「105万円ならアメリカの株式で運用するのかな?」「110万円? かなりハイリスクかも」「120万円? いやいや詐欺でしょ」と、感覚的にジャッジすることができます。手数料もそうです。投資信託の手数料も相場を知っていれば、不当に高い商品に気づけます。貯蓄型保険の利回り、投資のリターンなど、金融にはなんでも相場があります。相場が分からないものには手を出さない。これも立派なお金のスキルです。
情報が複雑化する時代では、広く知識を増やし、相場観を養うことが身を守るスキルとして、とても重要になってくるのです。
未来のお金の稼ぎ方
金融リテラシーを身につけ、加速する未来に備える。