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未来のお金の稼ぎ方

2022.12.31 公開 ポスト

お金こそ「中立」が大事。情報に振り回さないスキルを身につける児玉隆洋

物価高に為替や金利の変動、さらには暗号資産の信用問題など、今、お金を取り巻く環境は激しく揺れています。こんな時代に、どんな知識を身につければいいのか不安になる人も多いのではないでしょうか? バージョンアップさせなければならない知識はありつつも、でも押さえるべきは基本。お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を主宰する児玉隆弘さん『未来のお金の稼ぎ方』より今身につけておきたいスキルをお伝えいたします。

(写真:iStock.com/rtisteer)

渋沢栄一の教え「視、観、察」を忘れない

中立な情報とは、バックに商品の売り込みや宣伝などがない、フラットな情報のことです。私たちはいつも自然に、そうした情報を求めています。レストランを探すときは、お店のホームページだけでなく、口コミサイトもチェックするのはごく一般的です。レビュー数が多いか、評価が高いか、残念な部分は何か……。こうしたサイトをチェックするのは利害関係のないところで、本音の評価を知りたいからではないでしょうか。

かつてはテレビCMをバーンと打てば世の中が動きました。しかし、今はそういう時代ではなく、自分が信用している人からの情報でないと動かない。情報も中央集権型ではなく、分散化して個が力を持っている時代といえるでしょう。

ですから今、支持を集めるのは中立な意見を話す人です。中田敦彦さんもそうですし、2ちゃんねる創設者で、今はパリに在住するひろゆきさんもそうです。ひろゆきさんが放つ意見は、しばしばネットで話題となり、若い人を中心に支持を集めていますが、これは彼が超中立的だということが大きいと思います。誰かに忖度する意見ではなく、純粋に自分の意見であることが今はとても重要なのです。

SNS全盛の今、ネットの情報に慣れた私たちは、その情報がPR案件なのか純粋な本人の意見なのか、ある程度見分ける力も持っています。SNSでもPRは「#PR」など、きちんと明記しないとステルスマーケティングとなり、炎上します。人気のあるインフルエンサーがPRと伝えず発信したものが裏でPR案件だったりすると、それはもう大変なバッシングとなります。そうした世の中なので発信する側も中立性を意識しているし、とても敏感です。

ですが、お金に関してはまだまだ中立な情報を見極める力は弱いです。中立な情報でないと偏りが出てしまうことは知っているのに、なぜかお金に関してだけは中立ではない情報に振り回されてしまう。これは、ひとえに私たちにお金のスキルを身につける機会がなかったからです。お金のスキルがないから思考停止状態になり、与えられた情報を吟味することもできない。お金の勉強をしてこなかった私たちは「お金は難しい」「とっつきにくい」といった苦手意識があります。私も本当にそうでした。苦手意識があるから、ちょっと難解なお金の話を見ると、思考が停止してしまいました。お金は人生で最も大事な道具であるのにもかかわらず、個の力の弱さから、中立かどうかを見極められない一因となっているのです。

たとえば、投資や保険もそろそろやらないと、と思って金融機関の窓口や保険ショップ、ファイナンシャルプランナーに相談に行くとします。このとき、相手とあなたの間にはお金のリテラシーに大きな差があります。知識の量は、当然ですが圧倒的に相手のほうが上です。ここに情報の非対称性が生まれます。

あなたは担当者の説明に納得し、金融商品を買うかもしれません。しかし、相手は手数料を取るビジネスです。力の弱いほうは、その手数料が高いかどうか、また自分にベストなのかどうか分かりません。さらに、他の金融商品と比べたくてもできません。相手が売りたいのは相手に手数料が入る商品だからです。

では、金融機関や保険ショップ、ファイナンシャルプランナーが悪いのかというと、そうではありません。堂々とビジネスをしているだけです。アパレルショップのスタッフが自社ブランドの服をおすすめするのとなんら変わりません。私たち買う側に知識が足りないだけなのです。

私も学生時代にサーフショップでアルバイトをしていましたが、よその店のサーフボードを売ることなどありえませんでした。おすすめするのは自分が働く店のサーフボードに決まっています。そして売れたらインセンティブが入って喜びました。なのに、なぜかお金に関してはそうしたからくりがあることを忘れてしまいやすい。これはあまりにもお金の情報の非対称性が強いからだと思います。

金融庁もこうした情報の非対称性を懸念し、2017年に「顧客本位の業務運営に関する原則」というものを発表しました。国民の安定的な資産形成を実現するために、金融機関に対して、フィデューシャリー・デューティー、受託者責任を果たすように求めたのです。対象は銀行、保険会社、証券会社、資産運用会社など多岐にわたります。

フィデューシャリー・デューティーとは金融機関に対し、顧客の利益を最大化させるために商品の開発や運用、販売を適切に行ってください、というもの。そこには手数料等の明確化も入っており、これは金融機関は金融商品の購入者に手数料をきちんと開示し、サービスの透明度を高める、というものです。これからは金融の世界もユーザーを重視し、ユーザビリティを追求する機関が生き残っていくでしょう。その鍵となるもののひとつは間違いなく、その人のために中立的な提案ができることだと思います。

一方で、個人のお金のスキルの弱さも改善していく必要があります。たとえば、ファッションも今は自分でセンスを磨く時代です。Instagramなどでチェックしたり、試行錯誤したりして自分なりのセンスが身についてくると、アパレルショップで「こちらが新作です!」「こちらがお似合いです!」と言われても、「それもいいけど、自分にはこっちかな」と、自分の頭で考えてジャッジすることができます。

それと同じで、お金の情報を取捨選択していくには自分で判断する力をつけることが大切なのです。金融機関やファイナンシャルプランナーがどんな情報や商品を提案してくれたとしても、それをどう選ぶかは自分次第です。面倒だから、考えたくないから、と誰かを頼ってしまうのは目的地までの運転を誰かに預けてしまうのと同じ。自分の人生の大事なハンドルを他人に渡していいわけがありません。

では、そうならないためにはどうしたらいいのか。溢れる情報を取捨選択していくためには何を鍛えればいいのか。まずは、お金の情報をシャワーのように浴びること。そして、少しでも資産形成を実践してみることです。この2つに尽きると思います。知識を実践しながら、その情報が中立かどうかを常に考える。お金のスキルを磨くのに近道はありません。地道な努力ですが、続けることで少しずつ確実に情報を見る目が磨かれていきます。

お金の情報を見極めるための手段として、とても参考になるものがあります。これから一万円札の顔となる、あの渋沢栄一※50が実践した極意です。日本経済の父と呼ばれた渋沢栄一は、こんな言葉を残しています。

「視、観、察のこの三つを以もって人を識別せねばならぬ」

お気づきの通り、「視(し)観(かん)察(さつ)」のすべての文字は「見る」という意味を持ちます。それぞれどういう意味かというと、「視」は、その人の言葉ではなく、行動を見る。次の「観」は、その人がその行動を起こす動機を見る。最後の「察」は、その人が何に満足するのかを見る。この3つを見ることで初めてその人のことが理解できると、渋沢栄一は伝えています。

表面的な言葉や情報に流されず、その人の行動をまず見る。その裏にはどんな動機があるのか。そして、どうなればその人は満足するのかを見る。金融商品も金融機関も、人生を豊かにするために必要な存在であるのは確かですが、お金のセミナーや保険ショップへ相談などに行く際やお金の情報に触れるときは、ぜひこの渋沢栄一の「視、観、察」を思い出してほしいと思います。

関連書籍

児玉隆洋『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』

私たちのお金は今、大きな変革の時を迎えようとしている。テクノロジーの急速な進化により、長く親しんだ紙幣は形を変え、その使い方や稼ぎ方も新しいステージへ進む。そんなお金の新しい時代に最低限必要なのは、お金の本質を理解し、お金とテクノロジーのメガトレンドを知っておくことだ。今、話題のお金のトレーニングスタジオABCashを運営する児玉隆洋氏が、未来のお金のスキルを伝授する。

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未来のお金の稼ぎ方

金融リテラシーを身につけ、加速する未来に備える。

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児玉隆洋

ABCash Technologies代表取締役社長。宮崎県出身。2007年、サイバーエージェントに新卒入社し、AmebaBlog事業部長、ABEMATV局長などを歴任。2018年、日本の金融教育の遅れ・お金の情報の非対称性に大きな課題を感じ、ABCash Technologiesを設立。お金のトレーニングスタジオABCashは累計受講者数20,000人を超え、パーソナル金融教育で日本最大級を誇る。「FINTECH JAPAN 2021準優勝」「日本スタートアップピッチファイナル金賞」など受賞歴多数。

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