一進一退の状況が続くロシア・ウクライナ戦争、緊張感を増している米中関係、そしていつ起きてもおかしくない「台湾有事」……。これからの世界の勢力図について、白熱の議論をたたかわせた書籍『ウクライナ戦争と米中対立』。本書でホスト役をつとめたジャーナリストの峯村健司さんと、対談者の一人である元航空自衛隊空将の小野田治さんに、どのように情報を集め、どのように分析するのか、心がけている大切なことを教えてもらいました。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】峯村健司、小野田治と語る「『ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界』から学ぶこれからの世界情勢」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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スクープは日々の継続から生まれる
── 小野田さんは日ごろのインプットで、工夫していることはありますか?
小野田 英語を中心に、中国語、ウクライナ語、ロシア語と、情報の断片をなるべく広く集める努力をしています。集めた情報はすべてパソコンの中に入れて、あとから検索できるように必ずキーワードをつけておきます。それが大事なポイントですね。
たとえば講演を頼まれたときに、半年前にインプットした情報が必要になったとします。でも、いちいち思い出すのは大変ですよね。その点、キーワードをつけておけば、すぐに検索することができます。そうしてヒットした情報を、どんどんパワーポイントに組み入れていく。
峯村 謙虚におっしゃっていますが、ジェネラル(小野田さん)はハーバード大学にいらっしゃったときから、本当に細かくデータを追っていらっしゃいます。しかも、そうして集めたデータを、ご自身のきれいな字でまとめるんですよ。そういう努力って大事だなと思いますね。
── 峯村さんは、どのように情報収集をしているんですか?
峯村 私の場合、記者をしていたときから、基本動作はまったく一緒です。まず、OSINT(オープン・ソース・インテリジェンス、公開情報)をしっかり読み込む。アメリカや中国など、海外の新聞、テレビも当然チェックしています。
そのうえで、インプットした情報を自分なりに整理するんです。よく、グーグル検索をOSINTと勘違いしている人がいますが、まったく違います。
この作業は、毎日必ず行なっています。どんなに二日酔いでも、旅行先であっても、絶対に欠かしません。というのも、一日抜けただけで、変化に気づけなくなってしまうからです。
とくに中国情勢に関しては、このワードがなくなったなとか、この指導者が消えているなとか、そうしたわずかな変化がきわめて大きな意味を持つことがあるんです。
そのうえで、人に会いまくることを心がけています。最近は、ウェブで海外の人とコンタクトを取ることもしやすくなりましたから、多いときは一日に何件もミーティングを入れたりしています。
OSINTだけで十分、と主張する人もいますが、それは違うと私は思っています。いわゆるHUMINT(ヒューマン・インテリジェンス、人的諜報)と呼ばれる、人との接触で得られる情報が、何より大事なんです。
とはいえ、HUMINTだけでも不十分です。OSINTをしっかり押さえて、集めた情報をもとに立てた仮説を人にぶつけていく。それこそが、情報収集の基本だと思います。
みなさんからよく「どうやってスクープを取るんですか?」と聞かれるんですが、特別な裏技があるわけではないんです。なぜスクープを取れるのかといえば、今お話ししたような作業を、記者時代から25年間、休まずに続けてきたからだと思います。人との違いがあるとすれば、たぶんそこだと思います。
15秒で相手の心をつかむ方法
── 小野田さんも峯村さんも共通しているのは、ただ情報を集めるだけでなく、集めた情報を自分なりのやり方で整理、分析すること。そして、それを日々たゆまず続けることが、素晴らしいアウトプットのもとになっているんだと思いました。
小野田 蓄積は大事ですね。でも、蓄積することが目的化してはいけない。そこから何を分析するのか、問題意識を持っていないと絶対に発展はありません。
HUMINTの以前に、自分に中身がなければいけないんです。「こんなことも知らないの?」って相手に思われたら、この人と話していても得るものはないと判断されてしまいます。
自分の中に蓄積したものを実際に展開して、自分なりの分析を加えていくことが一番重要な作業なんです。
峯村 人とのコミュニケーションは、やっぱり大事ですね。私はワシントン時代に、ずいぶん鍛えられました。ワシントンって本当にシビアなんですよ。「こいつ話していても意味ないな」と思われたら、せっかく会っても20分で打ち切られてしまう。人間力が問われるんです。
みなさんにお勧めしたいのは「エレベータートーク」ですね。エレベーターに乗っている時間って、15秒くらいですよね。その15秒で、隣に立っている経営者や政府高官に、自分はこんな人間なんだってアピールして、「お前、面白いから連絡先渡せよ」って言われる。それが、目指すゴールです。
「エレベータートーク」の訓練ってけっこう重要だと思っていて、15秒がたとえば1分、5分、20分になったとき強さを見せるんです。15秒のコアさえつくっておけば、あとはいくらでも応用が効きます。就職面接などでも使える方法なので、ぜひ試してみていただければと思います。
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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書
AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。
この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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