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病院にかかるお金がありません!

2023.01.07 公開 ポスト

“都会の大病院”より“地方の名医”の方が「割安」な理由志賀貢 / 医学博士

物価上昇に歯止めが効かない日本経済。日々の消費はなんとか我慢して抑えられたとしても、急にやってきて払わなければならないお金の代表が「医療費」です。わたしたちは、日頃からどんな備えをしておけばよいのか。人気病院長の志賀貢さんによる『病院にかかるお金がありません!』から、知っておくべき医療費にまつわる情報をお届けします。

(写真:iStock.com/kazuma seki)

かかりつけ医は二人持て。金のかからない貴重な財産になる

75の声を聞いたら、名医探しと病院探しに神経を尖らせたほうがよいと思います。

年とともに、基礎疾患や持病が増えてくるのも高齢者の特徴です。

75歳以上の死亡原因となる病気を調べてみると、第1位悪性新生物、第2位心疾患、第3位脳血管疾患、第4位肺炎、第5位不慮の事故(厚労省調べ)と重症化する病気が明らかになっています。

こうした病気の他に風邪、腹痛、便秘、下痢、皮膚炎などごくありふれた病気も頻発する傾向が強くなります。

そこで、日常的に起こる病気には、家からごく近い所の診療所、あるいは規模の小さな病院をかかりつけ医として決めておく。

そして、持病などの投薬や検査の記録が記載されているカルテを保存してもらっておく。

これがいざという時に役に立ちます。

急病の際には、そのかかりつけ医から顔のきく、より高度の二次・三次医療のできる病院を紹介してもらうこともできるからです。

もう一つは、そうした二次医療の設備が整った病院に顔をつないでおくことです。

といっても難しい手続きが必要なわけではありません。

健康診断や、人間ドックなどでつながりができていれば、大病にかかった疑いがある時などは、その病院の窓口に緊急連絡をすれば、カルテが5年間保存されていますから一見の患者よりは有利です。

都会の大病院より遠くても地方の名医のほうが割安

都内で救急車を頼んでも、すぐに病院を見つけることはなかなか困難です。

それは、あまりにも救急車の出動を頼む人が多く、また運よくすぐ救急車が駆けつけてくれたとしても、どこの病院も救急患者があふれていて、受け入れる所がないのが実情です。

特に祝日、週末、それに夜間は搬送先の病院を見つけることがなかなか困難で、救急隊が四苦八苦することも少なくないようです。

そんな時は、首都圏の都内に近い都市の病院を探すことも頭に入れておきましょう。

都内の病院ばかりにこだわっていると、手遅れを招く恐れがあります。地方といっても都心から1、2時間車を走らせると、設備の良い病院を近郊に見つけることができる場合も、まま、あります。

例えば、東京の隣の埼玉では、病院、老健、特養などの介護施設、さらには在宅医療のための診療所を整えた医療法人があります。

これは、私の知人が理事長を務め、経営している病院ですが、その病院の規模と設備は、都内の市中病院などと比較しても引けを取らないほどです。

確かに、交通の便はいいとは言えませんが、都内で搬送先が見つからないと何時間も救急車の中で待機せざるを得なくなることを考えると、患者の急場を凌ぐためには、地方でも構わないと思います。

救急救命士の乗った介護タクシーを頼む手もある

横浜あたりでは、救急救命士が自ら運転をして、患者を移送する介護タクシーも登場しています。

車の中には、AED、心電計、酸素吸入装置など、さまざまな緊急処置の医療器具を揃え、相当遠くの地方まで患者を運んでくれるので、頼りにされています。

先ほどお話しした私の知人の病院ではCTやMRIなどの診断装置を整え、脳卒中の発症直後の患者を受け入れています。とにかく、急患は、分単位で病状が悪化する場合があり、蘇生の処置をしながら病院に搬送する、などということが起こります。

都会も田舎もありません。

設備を整え、しかも腕のよい専門医を揃えた救急病院を普段からマークしておけば、少々遠くて交通費がかかっても結局は割安なのです。

 

 

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志賀貢 / 医学博士

北海道生まれ。医学博士、作家。昭和大学医学部大学院博士課程修了。長らく同大学評議員、理事、監事などを歴任し、大学経営、教育に精通している。内科医として約55年にわたり診療を続け、僻地の病院経営に15年従事。また介護施設の運営にも携わり、医療制度に関して造詣が深い。その傍ら執筆活動を行い、数百冊の作品を上梓している。近著には、『臨終医のないしょ話』『孤独は男の勲章だ』『臨終の七不思議』(いずれも幻冬舎)等がある。

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