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時をかける老女

2023.01.13 公開 ポスト

#44

介護1周年。殺人事件を起こさず乗り切った中川右介

2021年10月16日 土曜日

〈介護355日〉

今日昼から、水曜日までショートステイ。

そう伝えると、最初は驚いたが、毎月行っていると言うと、思い出したようで、自分で荷造りを始める。

昼食後、特養へ連れて行く。

というわけで、水曜日まで、介護休暇。今回は遠出はしない予定。

10月17日 日曜日 〜 10月19日 火曜日

ショートステイ。

10月20日 水曜日

〈介護359日〉

12時に近くの特養へ母を迎えに行く。帰宅して、トイレへ行って、5分ほどで

「わたし、今までどこかに行ってたわよね」

「老人ホームに行ってたでしょう」

「そうだったかしら」と、15分前までいたことも忘れている。

「一日いなかったのよね」「4泊5日」「そんなに」

それから何度も曜日の確認。

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時をかける老女

91歳の母親と、33年ぶりに一つ屋根の下で暮らすことになった。この日記は、介護殺人予防のために書き始めたものである。

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中川右介

一九六〇年東京都生まれ。編集者・作家。早稲田大学第二文学部卒業。出版社勤務の後、アルファベータを設立し、音楽家や文学者の評伝や写真集を編集・出版(二〇一四年まで)。クラシック音楽、歌舞伎、映画、歌謡曲、マンガ、政治、経済の分野で、主に人物の評伝を執筆。膨大な資料から埋もれていた史実を掘り起こし、データと物語を融合させるスタイルで人気を博している。『プロ野球「経営」全史』(日本実業出版社)、『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)、『国家と音楽家』(集英社文庫)、『悪の出世学』(幻冬舎新書)など著書多数。

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