強運に見える「経営のカリスマ」にはしかるべき理由があった!「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」等の企業ポリシーでも知られる日本電算会長/創業者・永守重信氏の、仕事でもプライベートでも運気を呼び込む最強の習慣が1冊に。新刊『運をつかむ』から試し読みをお届けします。
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「脱皮しない蛇は死ぬ」と言われるが、時代の変化に取り残された企業を待ち受けるものは、死である。今ほど変化の激しい時代は、かつて例がない。起こる変化に合わせて姿を変えていこうという待ちの姿勢では、あっという間に時代に追いつけなくなるだろう。目に見える大きな変化が表れてから行動するのでは、もう遅いのだ。
変化の予兆がわずかでもあれば、それを誰よりも早くとらえ、準備をしなければ、たちどころに「脱皮できない蛇」になりかねない。経営者にとって、これほど緊張感を強いられる時代はない。
朝令暮改という言葉はよくない意味で使われるが、私は時を置かず考え方を変えることは、まったく問題ないと考えている。むしろ、そのくらいの柔軟性があったほうがいい。
朝令暮改を積極的によしとするくらいの感覚でないと、変化が凄まじい今の時代にはついていけないのだ。このことは企業のみならず、個人の生き方においてもそうだろう。
その一方で、変えてはいけないものもある。私にとって、それは会社経営の基本方針であり、理念だ。これだけは一貫して変わらないし、これからも当然変えるつもりはない。
経営の基本方針や理念といったものは、会社を根底から支え続ける柱なのだ。朝令暮改というのは、あくまでもそのような中心軸を保った上で行うべきである。
人も会社も変化する。そこには自然と変化する部分もあれば、意識的に変えていかなくてはいけないものもある。
日本電産も、これまで幾度も新たな成長に向けて事業構造を変えてきた。創業して11年目の1983年には、それまでの主力製品だったフロッピーディスク・ドライブ用モーターから撤退し、ハードディスク・ドライブ用モーターへ思い切って舵を切った。
そして今、ハードディスク・ドライブ向けなどの精密小型モーターに代わり、「脱炭素化社会」が追い風となる電気自動車(EV)用駆動モーター、家電用省エネモーターなどの事業に軸足を移すべく動き始めている。
私自身も、仕事に対する基本的な姿勢は寸分も変わっていないが、働き方は大きく変わった。かつては毎日誰よりも早く出社し、夜遅くまで長い時間働いていた。今はさすがに、そういう働き方はしていない。
夕方5時になれば仕事を終えて家に帰るし、コロナ禍の影響もあって仕事の対応もオンラインで行うことがめっきり増えた。しかし、この働き方も環境の変化によって、また変わっていくだろう。
変化していくことは、人の宿命だ。変化を恐れてはいけない。ことに運をつかむには、複雑な変化の流れを巧みに読み、うまくそれに乗らなくてはならない。
だが変化してやまないものを、どうすればいち早くとらえられるのか。変化をとらえるにはアンテナを立てろとよくいうが、漠然とそうしているだけではダメだ。
微細な変化でもそれをつかむには、会社のモットーでもある「すぐやる」「必ずやる」「出来るまでやる」のうちの「すぐやる」が鍵を握っている。「すぐやる」を習慣化し、そのスピード感を身につければ、変化のちょっとした綾にも敏くなるからだ。
もう一つは、毎日するべき課題をしっかり片づけることである。課題が常に片づいた状態にあれば余裕が生まれ、ものごとを鳥の眼で冷静に俯瞰することができる。全体を広く大きく見る鳥の眼と低い地平から見つめる虫の眼があれば、隅のほうに生じる微かな兆しや変化にも、いち早く気づけるだろう。
変化に気づき、自らもいち早く変化していくには、スピード感を持った判断と行動が必要である。
以前、M&Aで日本電産の傘下に入ったある赤字会社は、高い技術力、優秀な人材、安定したマーケットを持ち、ある一つのことを除いて、ほぼ問題がなかった。
そのたった一つの問題点とは、経営判断のスピードであった。決断から実行までの時間が日本電産の3倍もかかっていたのだ。決断の遅い経営者とスピード感が欠落した社員がいただけで、赤字が100億円まで膨らんでしまったのである。
決断と実行のスピードの差は、そのままチャンスの差となり、変化に柔軟に対応して成長できるか否かを分けるということを、この赤字会社ははっきりと示してくれたのである。
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※試し読み公開はここまでです。続きは『運をつかむ』(永守重信著)をぜひお手にとってご高覧ください。
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