学校を卒業して何年も経つとなかなか実感できないかもしれませんが、日本の大学受験のシステムはここ20年で大きく様変わりしました。
これまで大半だったペーパーテスト中心の偏差値型はもはや少数派、AO入試をはじめ人物重視の選抜スタイルがどんどん増えています。そして、この変化は受験本番にとどまらず、その後の企業の人事採用など今のビジネスシーンにも大きく影響を与えるようになってきています。
この変化に気づけるかどうかで、職場で求められる人物像に近づけるかどうかは大きく変わってくるでしょう。また管理職の人にとっては、新しい時代の大学入試を経て社会人となった、若い人たちをまとめていくためのヒントも隠されています。
多くの学生を合格に導き、現在は一般企業の研修なども行っている著者の新刊『超選ばれる人』より、これからの時代に求められる人財の実情について抜粋してお届けします。
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“時代が求める人物像”は大きく変化している
みなさん、はじめまして。
まずはこの本を手に取っていただいたことを心から感謝いたします。
私は麻加真希といいます。この20年ほど、受験生や大学生、企業や官庁で働く社会人に向けて、“自分の強みを発見し、それを花開かせる方法”をテーマにした実践講義やセッションを行っています。
タイトルにもある通り、この本では、これからの時代において“選ばれる人”になるために必要なこと、そしてそれを自分の中に育てていく方法についてお話ししていこうと思います。
“選ばれる人”とは、自分の強みやオリジナリティを武器に、その人にしかない価値を周囲に伝えることができる人です。
そんな人は、多くの信頼を集め、自分の強みを活かせる場や出会いに恵まれます。新たなチャンスへの挑戦で、その人の価値は高まり、同時にその人が所属するチームや組織のメンバーもそれぞれの強みを磨き上げていくことができます。
自然とその人は周囲をまとめるリーダーシップを発揮するようになり、誰かの幸せや未来の一助になることで、本質的な幸福や豊かさを手に入れることができるのです。
“選ばれる人”の人物像は、今、時代の流れに合わせて大きく変わろうとしています。
今は、さまざまな世界観や価値観が激流のようにぶつかり合う時代。どう考え、どう動き、どう進むべきなのか、先を読んでいくのが本当に困難です。そんな時代に自分を活かしながら確実に前進できるのはどんな人物なのか?
その“選ばれる人”の人物像の変化が、まっさきに、そしてもっとも顕著に現れているのが、一流大学の入学選抜方法だと言われています。
“優秀な人材”の定義は180度変わった
日本の大学の入試システムはこの20年で大きく様変わりしました。
かつてのような、一斉ペーパーテストによる偏差値評価型入試だけではなく、総合型選抜入試(旧AO入試)や学校推薦型選抜入試(旧推薦入試)が昨今では重視されてきているのです。今では、日本の私立大学入学者の半数以上が、総合型(旧AO)または学校推薦型入試の合格者となっています。
総合型選抜・学校推薦型選抜入試とは、偏差値では測れない、その受験生のあらゆる角度から見た人格を審査し合否を決める判定方法です(総合型選抜〔旧AO〕入試は高校生の誰もが受験することができ、学校推薦型選抜入試は学校の推薦を前提に出願できるという違いがあります)。
どちらの入試も、志望理由書、活動報告書、面接、小論文、内申書などで総合的に判断され、とくに面接においては、書類だけでは測れないその人の人間性、個性、世界観や価値観、思考や行動のしかたについてなど深い部分が問われます。
日本では現在、東京大学、京都大学、東北大学、大阪大学、筑波大学、慶應義塾大学、早稲田大学ほかトップレベルの大学が総合型(旧AO)や学校推薦型の選抜入試を実施しています。
その理由はただひとつ、“より優秀な人材を確保したい”からです。
アメリカの一流大学はじめ海外の大学では高い能力を持つ人間を見極めるためにAO入試が一般的です。AO入試は大きな実績を上げており、日本はこれを参考に改革に着手していった形です。
優秀な人材は、偏差値重視のペーパーテストではなく、人物重視のAO入試によってあぶり出されるということがアメリカはもちろん、日本でも主流の考え方になってきたのです。
かつて、経済が右肩上がりに発展していった時代には、偏差値の高い大学に入り、大企業に就職し、定年まで勤め上げるといった人生の安定路線がありました。が、バブル崩壊、急激なIT化やDX化、グローバル化やその反動での保護主義など、今は、多様な価値観が渦巻く“正解のない時代”。トップクラスの大学では、そんな時代を引っ張っていける起業家精神のある人材、ゼロから1を生みだせる人材を求め、入試制度を改革していったのです。
私はこの20年間、総合型・学校推薦型選抜入試に向けた、人格や思考や自己アピールのメソッド講義や、個人セッションによるコンサルティングに重点を置いて仕事をしてきました。実績で約3万人の受験生を日本トップレベルの大学の合格へと導いています。
人格は、知識や暗記している量では決して判断できません。その人物が、どう考え、何を目指し、そのために自分の能力をどう活かして行動していこうとしているのか。その思考や個性を基準に、世界のトップを走る大学は学生を選抜しているのです。
“選ばれる人”の変化は、人間の思想や技術のイノベーションの源である一流大学への入口で現れはじめました。
そしてこの変化は世の中のいろいろな場所へどんどん浸透しています。これからもさらに広がっていくでしょう。今、日本で初めてこういった入試方式を経験した世代が、社会人としての経験を経て、徐々に企業や社会の意思決定層になりはじめています。
人に、組織に、社会に“選ばれる人”のタイプが今後大きく変わっていくのです。
すでにはじまっている新たな時代に、テクノロジーの進化と価値観の多様化の中で、自分自身をどう深めて、どのように社会へアピールし、輝かせていけばいいのか。それがこの本のテーマです。
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続きは本書『超選ばれる人』でお楽しみください。
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