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悩むことは生きること 大人のための仏教塾

2023.02.04 公開 ポスト

2500年も前から「人生の悩み」も「この世の疑問」も解決してきた仏教を、学んでおいたほうが絶対いい!平井正修

情報が溢れ、何もかもが急速に変化している現代。悩みは尽きない。不安も多い。口に出せない黒い感情も出てきてしまう……。

こんな時代にこそ、仏教を紐解いてみませんか? なんといっても、2500年も前から「人間の原点」について向き合い、「人生の悩み」も「この世の疑問」も、解決してきたのが仏教だからです。

新成人のみなさん、入学・入社して日の浅いみなさんは、ちょうど人生が大きく変わるタイミングにいます。こんなときこそ、生きることについてのシンプルな学びの時間をとりたいもの。といって、何から学んだらいいか困るでしょうか?

そこで。新刊『悩むことは生きること ~大人のための仏教塾』では、日々、釈迦の教えを実践している禅僧が、仏教についての95の疑問に答えています。ぜひ、本書で手軽な学びの時間を! 本文より、一部公開します。まずは、まえがきから。

*    *    *

「生きること」に悩んでいるすべての人へ

人はなぜ生きるのか?

なぜ、自分は生まれてきたのか?

自分が生きていることに、いったいどんな意味や目的があるのか? 本当の自分とは、何なのか?

そうしたことを一度も考えたことがないという人は、おそらくいないでしょう。人間として生きていれば、誰もが、どこかで必ずぶつかる疑問です。また、簡単には答えが出ない疑問です。それもそのはず、人間は何千年も、何万年も、ずっとそのことを考え続けてきて、今も考え続けているのですから。その歴史の中から、哲学や、文学や、芸術や、宗教なども生まれてきました。

何歳になっても、生きているかぎり、そうした疑問はついて回るものです。社会や世間、他者といったものを意識し始める10代くらいから自覚するようになり、それは人生経験を積んで大人になっても、いいえ死ぬまで続きます。

そのうえで、「何のために生まれてきたのか」「生きているのか」という疑問に答えるとしたら、「何のためでもない」ということになるでしょう。

その答えを聞いて、「何だよ、それ」と、怒る人がいるかもしれません。でも、私はふざけているわけでも、ごまかしているわけでもありません。大まじめに答えています。

生まれようと思って、生まれた人はいない

そもそも、あなたは自分で生まれたいと思って、この世に生まれてきたわけではありません。いいえ、それはあなただけのことではなく、この世の中に、自分が生まれたいと思って生まれてきた人間など一人もいません。人間どころか、少なくとも今地球上に生きているすべての生命というものは、生まれようと思って生まれてきたものはひとつもありません。人間も、動物も、植物も、みんなそうです。そう考えると、「何のためでもない」と答えざるをえないのです。

春になると、道ばたにはタンポポの花が咲き、夏になると、セミが木の上で鳴いています。あの花や虫たちは、ただ一輪の花として咲き、一匹の虫として鳴き、与えられた“命”を一所懸命に生きています。そこには、何のためということはありません。

人間もまた、ひとつの命としてそこにあるだけで、何かのために生まれてこなければいけない理由などありません。

ただ、ひとついえることは、少なくともあなたは、両親がいなければ生まれてこなかったということです。さらに、あなたの両親は、そのまた両親がいなければ生まれませんでした。あなたは、そうした命の長いつながりのはてに生まれてきたのです。 それだけは、覚えておいてほしいと思います。

(写真:iStock.com/ArtRachen01)

仏教には人生の悩みを解決するヒントがいっぱい

私は、東京の谷中というところにある全生庵(ぜんしようあん)という寺の住職をしています。私の寺は、仏教の中でも、禅宗と呼ばれる宗派です。「禅とは何か」という問いに答えるのはとても難しいことですが、禅宗は坐禅を通して悟りを開くことを根源的な目標とする宗派です。

なぜ、坐禅なのかといえば、仏教の開祖として知られているお釈迦(しやか)さまが、インドにある菩提樹(ぼだいじゆ)の木の下で坐禅をして開いた悟りを、自分たち自身で追体験しようという思いがあるからです。禅宗はインドから中国に伝わったことで大成し、鎌倉時代に中国から日本に伝えられました。

禅宗のおおもとである仏教は、今から約2500年前にインドでお釈迦さまによって始まり、そこから長い歴史を刻んできました。その歴史の中で、冒頭に掲げたような疑問にえんえんと向き合ってきました。ですから、仏教には、そうした疑問について向き合うための智慧がたくさんあります。

また、日本に仏教が伝えられてから、およそ1500年になります。最初は外来の宗教としてスタートした日本の仏教ですが、この間に日本人の心の中にしっかりと根を張ってきました。仏教と聞くと、何か自分には縁遠いものと感じてしまう人もいるようですが、私たちの暮らしや文化の中には、仏教から始まったものが、今も数多くあります。

もともと本書は中学生にも理解できるように書いたものでした。しかし人間の根源的な問題は何歳になっても明確な正解がなかなか出るものではありません。

そこで、世代を超えて仏教の教えに触れていただけるよう、そして仏教の智慧や歴史に少しでも触れていただけるよう、手直しをしました。普段悩んでいること、疑問に思っていることを自分なりに考えるためのヒントにしていただけたらと思います。

本書の【目次】はこちら

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悩むことは生きること 大人のための仏教塾

生死のこと。心に浮かんでしまう良くない感情。抑えきれない不安。あなたの抱える悩みや苦しみに、2500年も前から向き合い、救いと解決の手立てを差し伸べてきたのが仏教だ。その教えは我々の生活や教養の一部となり、心を整える一助となっている。けれど、仏教のことちゃんと知ってる? 釈迦の教えを日々実践している禅僧が、今さら人に聞けない、基本的だが本質的な95の疑問に答える。情報が溢れ、変化の激しい現代だからこそ、仏教が説く人間の原点に立ち返り、生き抜く智慧を身につけよう。

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平井正修

臨済宗国泰寺派全生庵住職。学習院大学法学部政治学科卒業。一九九〇年静岡県三島市龍澤寺専門道場入山。二〇〇一年同道場下山。二〇〇二年より中曽根元首相や安倍元首相などが参禅する全生庵の第七世住職に就任。全生庵にて坐禅会、写経会を開催。二〇一六年より日本大学危機管理学部客員教授。二〇一八年より大学院大学至善館特任教授。臨済宗国泰寺派教学部長。『心がみるみる晴れる 坐禅のすすめ』『花のように、生きる。』『「見えないもの」を大切に生きる。』『老いて、自由になる。』(以上すべて幻冬舎)、『悩むことは生きること 大人のための仏教塾』(幻冬舎新書)、『山岡鉄舟修養訓』(致知出版社)、『忘れる力』(三笠書房)、『お坊さんにならう こころが調う 朝・昼・夜の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『三つの毒を捨てなさい』(KADOKAWA)など著書多数。

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