情報が溢れ、何もかもが急速に変化している現代こそ、2500年も前から「人間の原点」について向き合い、「人生の悩み」も「この世の疑問」も、解決してきたのが仏教を学んで、自分の力にしたい。
新刊『悩むことは生きること ~大人のための仏教塾』より一部公開します。
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Q いつも悩んでばかりいます。悩みはなくなりませんか?
A 日々、あなたががんばって生きているから悩むのです。
いつも悩むのは、生きているからです。生きているかぎり、悩みのタネが尽きることはありません。
悩むと、人は考えます。どうしたら解決できるのだろう、どうしたらうまくいくのだろう、と。考えるからこそいろいろなことを経験できるし、考えるからこそ人も社会も発展します。ですから、悩みとは「生きていくうえでの原動力」といえるし、「生きることそれ自体だ」といってもいいかもしれません。
たとえば、悩みがまったくない人生というものを想像してみてください。楽しいと思いますか? 何だか生きている気がしないと思いませんか?
悩みが浮かんでくること自体、あなたが生きているという証拠です。それは決して悪いことではありません。問題は、その悩みとの付き合いかたです。どういうときに悩みが生まれることが多いのか、ちょっと考えてみましょう。
私たちは何かをするときに、これをしたらこうなるだろう、ああなるだろうと、その結果を予想してから始めます。逆に結果を予想しないでやみくもにやったら、むちゃくちゃだといわれてしまいます。
しかし、その予想と、現実の結果が、必ずしも一致するとは限りません。いつもうまくいくわけではありません。そのときに、人は悩むことが多いのではないでしょうか。どうして自分が予想したとおりにならないのだろう、と。
でも、それが当たり前なのです。その予想というのは、自分が勝手に思い描いたものです。ものごとがすべて自分の思いどおりになったら、かえって何だか恐ろしいと思いませんか。自分が予想していたことと違う結果になったときに、「そりゃ、そうだよな」とか、「まあ仕方ない」と思って現実の結果を受け入れ、頭を切り替えられれば、それほど悩むことはないと思います。その切り替えがうまくできないと、予想と現実のギャップによって、いつまでも悩んでしまうことになります。
悩み自体をネガティブ(否定的)にとらえてしまうと、かえって悩みから抜け出せなくなります。悩みが浮かんでくるのは悪いことではないとポジティブ(肯定的)にとらえ、違う予想を立てて、何度でもやり直せばいいのです。
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悩むことは生きること 大人のための仏教塾
生死のこと。心に浮かんでしまう良くない感情。抑えきれない不安。あなたの抱える悩みや苦しみに、2500年も前から向き合い、救いと解決の手立てを差し伸べてきたのが仏教だ。その教えは我々の生活や教養の一部となり、心を整える一助となっている。けれど、仏教のことちゃんと知ってる? 釈迦の教えを日々実践している禅僧が、今さら人に聞けない、基本的だが本質的な95の疑問に答える。情報が溢れ、変化の激しい現代だからこそ、仏教が説く人間の原点に立ち返り、生き抜く智慧を身につけよう。