
新刊『2040年の日本』を上梓した、経済学者で一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さん。ミリオンセラーを記録した『「超」整理法』をはじめ、学びに関する著作でも多くの読者の心をつかんできました。そんな野口さんは、読書法として「古典を読むのがもっとも効率的」と断言します。その納得の理由とは? ご本人にうかがいました。
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一日中、仕事ができることが幸せ
── 先生は書籍を年間6冊ほど執筆し、それ以外にも連載を抱え、講演会やテレビ出演などにも精力的に取り組まれています。大変な仕事量だと思うのですが、一日のタイムスケジュールはどうされているのでしょう。

朝起きて仕事をして、昼まで仕事をし、午後も仕事をし、寝るまで仕事をする。つまり一日中、仕事をしています。
言い換えれば、無駄なことをしていないということです。たとえば、委員会に出席して何時間も時間をとられるようなことは、昔から一切していません。テレビもまったく見ません。せっかちなので、見たいニュースが出てくるまで待っていられないからです。
一日中、仕事をしていられるのが、私にとってもっとも楽しいことです。制約なしに、そうした時間の使い方ができることを、大変ありがたいことだと感謝しています。
── ご飯を食べたり、お風呂に入ったりする以外は、ずっと仕事をしているということですね。
いえ、食事や風呂の時間も仕事をしています。たとえばノートパソコンやタブレットがあれば、食事をしながら画面を見ることができます。新聞を読むことだってできます。消化にはよくなさそうなので、あまりおすすめはできませんが、私はたまにやっています。
また、風呂はものを考える絶好の環境です。私は風呂に入ってる間に、必ずひとつはアイデアを思いつきます。風呂に入っている時間は、大変重要な仕事の時間です。
ただし、何もしないでアイデアが天から振ってくるわけではありません。ふだんからつねに考えているからこそ、環境が変わったときにひらめく。机に向かっているときとは違いますから、脳が刺激されるのでしょうね。
私が強調したいのは、一日中仕事をしてるからこそアイデアが出てくるということです。これを私は、「ラーニング・バイ・ドゥーイング」をもじって「クリエイティング・バイ・ドゥーイング」と言っています。
私の造語なのですが、「仕事をしながらつくり出す」ということです。これは間違いなく、一番正しい仕事の方法だと思っています。
── しかし好きとはいえ、一日中仕事をしていると疲れませんか?
目が疲れるときはありますが、対処の方法はいろいろあります。たとえば私は、ノートパソコンを大きなディスプレイにつないで使っています。それで文字はいくらでも大きくできる。
さらに、画面のバックグラウンドを暗くして、文字を明るくしています。ふつうは白地に黒文字ですが、逆転させる。私が使っているテキストエディタでは、バックを濃い青に設定しています。こうすると、目が疲れにくくなります。
古典を読むのがもっとも効率的
── 以前、先生には『だから古典は面白い』という本を書いていただきましたが、なぜ古典を読むのがいいのでしょうか。

『だから古典は面白い』では、おもに文学書を取り上げましたが、そのほとんどは高校生のときに読んだものです。若いうちに文学書を読むことは、大変重要だと思っています。なぜなら、主人公が自分より年上だからです。
たとえばドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』には、イヴァンという主人公が出てきます。高校生の自分にとって、イヴァンは年上でした。だからこそ、イヴァンが展開する高遠な理論を一所懸命、理解しようと思って読みました。
大人になって初めて『カラマーゾフの兄弟』を読むとしたら、同じような気持ちで読むのは難しいと思います。高校生にとっては目上の人ですが、大人からすると「なんだ、この若造が」と思ってしまうかもしれない。
だからこそ、高校生のときに文学書を読むことが、大変重要だと思っています。
── でも、最近の若い人を見ていると、古典を読む文化がどんどんなくなっている気がします。
古典というのは何百年もの間、人々の批判にさらされてきた本です。それをくぐり抜けて今日まで残ってきた本なのですから、読む価値があると考えて間違いありません。古典を読むことは、もっとも効率的な方法です。
── でも、高校生のときの先生は、そういうことを考えずに古典を読んでいたわけですよね。
当時、古典を読んでいたのは、通っていた高校が、特殊な環境だったからだと思います。たとえば私は、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』を高校一年生のときに読んだのですが、それを友人に話したらバカにされた。「いまごろそんなの読んでいるのか。オレは小学生のときに読んだぞ」と。
友人と屋上に上がって、ドストエフスキーについて一所懸命、議論したことをいまでも思い出します。このような背伸びをする雰囲気があったことは、大変ありがたいことだったと思います。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】野口悠紀雄と語る「『2040年の日本』から学ぶ日本の危機」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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