幻冬舎営業局主催の、書店員さん向けのオンライン会議。2月1日に、キングコング西野亮廣さんをゲストとしてお呼びしました。
4月にビジネス書『夢と金』の刊行を控えている西野さん。書店員の皆さんに向けてしてくださった評判のトーク、後半をこちらで公開。
プレイヤーであり、NFTのプロジェクトオーナーだからこそ書くべき、NFTのリスク
――今回の『夢と金』のもう一つお伝えしたいポイントは、「NFT」について書いてることです。以前、『革命のファンファーレ』のときに、クラウドファンディングについて書いてましたが、当時はまだ全然理解されていなかった。今となっては『革命のファンファーレ』に書かれていることにみんなが「なるほど」ってなっているけど、当時はやっぱり難しかったじゃないですか。で、今回の『夢と金』では、それが「NFT」なんですよね。
西野 はいはい。
――ものすごくわかりやすく書かれていますが、書くにあたって西野さんが意識されたことは?
西野 ちゃんとリスクを書くっていうことです。僕は、日本でNFTを積極的にやっている人に対しては、半分賛成で、半分ちょっと懐疑的なんです。危ないなって思うのは、だいたい、「NFTやったら儲かりますよ」って感じで、「とにかくお客さん呼ぶ」みたいなことやってる情報商材系。あれ、結構危なくて、価値が急にガーンと落ちることがある。100万円とかで買ってしまった人が、翌日に0円になったりする。要するに、それまでのNFTが生んでるお金っていうのは、最後の最後にババを引いてしまった人の負債の上に成り立っている。
「自分たちが買ったNFTの価値を上げていくゲーム」をずっと続けてしまうと、そのNFTが暴落したときに、不幸な人が出ちゃうリスクは絶対にあるので、そこを話さないまま、「NFTいいよ」っていうの僕はあんまり好きじゃない。
そういうリスクはちゃんとあるし、プレイヤーや、NFTのプロジェクトオーナーは、そういうことはちゃんと話していかなきゃいけない一方で、やっぱり、すごい技術というか、選択肢ができたなあと思います。
僕は、日本人のやってるNFTにあまり興味がないんですけど、NFTで「あっ、それしっくりくるな。誰も損してないな」っていうNFTの使い方って、たぶん「支援」なんですよね。「寄付」。
NFTの履歴性に注目した!そして見つけた「支援NFT」という道
西野 僕、ラオスっていう国に、学校を建てたんですよ。寄付したんです。ほんとに胸を打たれて寄付したんですけど。
何年か前のラジオで、「学校を寄付されたんですか?」って聞かれて、ちょっとニヤニヤしてる自分がいたんです。嬉しかったんですよ、そのことに触れてもらったことが。支援なんだから、リターンなんか要らないはずなのに、触れてもらって、ちょっとうれしかったんですよ。
で、考えたんです。「支援」とかって、これまで、「自分が支援した」って言わないと、支援したことが伝わらなかった。被災地支援でも。孤児院の支援でも。
でも、たぶん支援した人の2割くらいは「よそからバレたらいいのに」みたいな感情が絶対ある。でも自分では言いたくないな、みたいな。
って考えたときに、NFTだなと。NFTっていうのは履歴なので。
ぼくたちは、もう既にやっているんです。絵本ってどうやって売ればいいのかな? って考えたときに、「『本を読む人』に売るのが最適解なのか?」、それとも「『本を読む人に“贈りたい”人』に売るのが最適解なのか?」って。
ランドセルって、孫が買っているわけじゃなくって、おじいちゃんおばあちゃんが買っている。「『利用者に売る』商品・サービス」と、「『贈りたい人に売る』商品・サービス」ってのを考えたとき、絵本は後者な気がしたんです。親子で絵本を買うって言っても、絵本もそんな安いものじゃないですから。で、さっきの富裕層の話に戻るんですけど、シングル家庭に絵本を送りたいニーズっていうのがあって。
僕らは去年(2022年)の12月、シングル家庭に、『えんとつ町のプペル』を5000冊くらい寄付してるんです。うち3000冊くらいは自社から出したんですけど、2000冊くらいは、「えんとつ町のㇷ゚ぺルを寄付したい」っていうおじさん達がいて、その人たちが買ってくださった。そのあとはこっちでマッチングしたんですけど。
【施設の子供たちに『えんとつ町のプぺル』を50冊支援しました】っていうことを証明してくれるNFTを、支援してくれた方お渡しすれば、その人のNFTのウォレットに履歴が残る。「このひとは2022年の12月に子供施設に50冊の絵本を送ったんだ」という履歴が一生残り続ける。
ほら、社長とかがキャバクラ行ったときとかにやたら自分の愛車とか別荘とか、画像とか見せて自慢したりしますが、俺いいことしてるでしょ、俺結果出してるでしょ、俺有能でしょみたいなことを、“何かに代弁させる”ってあるじゃないですか。高級腕時計持ってることで、この人すごい人なんだとか。
この先、「自分のウォレットを全世界の人が見られる」っていう世界線になってきたとき、「この人がどれだけ支援したか」っていうのは、“ドヤりニーズ”としてあるなって思って。これまでは「支援」っていうのはその場その場で消えてしまっていましたが、「この人はこれだけ支援している」っていう履歴がずーと残る手段としてのNFTはめちゃくちゃ面白いし、これだと誰も傷つかないし、本人も納得でやっているから、こういうのは面白いなぁと思いますね。
NFTに関して、世間一般的に批判があまり起きてないという状況が、ヤバすぎる!
――たぶん今はほとんどの人が、NFTってだいたい投機的な目的と思っているので、「支援」に西野さんが落としどころを見つけたっていうのが、新しいっていうか……。
西野 自分がファンビジネスみたいなことやっている、お客さんに応援してもらわないといけないっていう仕事をしていますから、お客さんに何かを勧ねるとき、投機だけは絶対勧められない。どれだけそれが新しいテクノロジーで、新しい選択しであろうと、損する人がいないと投機は成立しないので。
なので、僕がNFTを触ろうと思ったときに、まず“抜いた”のが投機なんですよ。「とにかく僕たちは投機には触らないぞ」ってことをまず決めて、自分たちの活動も続けつつ、社会に還元できる方法が何かないかなって探ってったところ、「支援」っていうのはめちゃくちゃ相性がよかったっていう感じですね。
――『革命のファンファーレ』から数年後、クラウドファンディングがメジャーになったように、今から数年後、NFTは、「支援NFT」としての立ち位置がどうなっているのかな。
西野 僕、ちょっとこれもいよいよ危ないなって思っていることがあって……。
クラウドファンディングとかオンラインサロンまでは、まだみんな、批判できたんですよ。「銭ゲバじゃね?」とか「宗教だ!」とか言えた。「ネットでお金集めはよくない!」とか。でも、NFTに関しては、世間一般的に、あんまり批判が起きてないんですよね、ぶっちゃけ。……っていうのは、波がまったく追いついてないから、批判の仕方すらわかってない。これぐらい遅れちゃってるっていうのが、本当にやばいと思ったんですよ。
今、自分たちは、NFTを絡めて、毎週、子どもの施設に絵本を100冊とかずっと送り続けているんです。シングル家庭だったり、お父さんお母さんがいない施設の子とかって本がなかなか買えないんですね。でもNFTっていう選択肢を絡めれば、ずーとその子たちが「プレゼントされ続ける」っていうモデルを僕が作れるわけじゃないですか。
でも「この選択肢を日本中が知らない」。以前は、まだ批判があったから、批判に対して「こういうことだよ」って言えたんですけど、今はもう、ついていけてないっていう状態……。この遅れっぷりは超ヤバいし、だれも救われてないから、本当にちゃんとしなきゃなって。
――なるほどですね。まさに今回の『夢と金』は「日本やばいぞ」の本ですよね。
西野 そうなんですよ。なんか、僕ね、本書いてて、最後の方泣きそうになっちゃってて。熱くなっちゃって。なんでみんな勉強しないんだ?と。僕は子供を相手にする仕事をしてるから、「なんで大人がこんなに無責任なことをやるんだ」って悔しくなってきて。
最初、説教からスタートしている、最悪の本で。途中冷静になって、普通に書いていたんですけど、最後の方で泣きそうになっちゃって。……情緒不安定のヤバイやつです(笑)。
――たしかにビジネス書なんだけど、感動しちゃうんですよね。
西野 親戚のおじさんみたいなかんじになっちゃってる。
――親戚のおじさんだ(笑)! 親戚のおじさんが、説教したり、冷静になったり、熱くなったりしながら教えてくれる本。前書きで「80分時間を下さい」って書いてありますが、本当に一気に読める本になってます。
――ところで普段、西野さんは「街の本屋さんを元気にしよう」っておっしゃってますよね。ちなみに今日は過去最高の参加者が見てくださっています。
西野 ありがとうございます! 暇なんで、マネージャに言って、刊行日の前後10日くらいはスケジュール空けたんですよ。で、動けるんで、呼んでください。いつでも行きます。やりたいですよ。どぶ板営業しかないですよ。とことんやるっていう。
本屋さんだけじゃなくて、著者もがんばれって思いますね。本に限らずですが、売ることを丸投げにしてるって何なの?と。すべての表現者に言えることだと思うんですけど……。ホリエモンってよくよく知っているんですが、めっちゃ脚使うんですよ。スマホでピコピコやっている人じゃなくて、めっちゃ脚使ってます。彼がロケット飛ばすときも、地元に行き、地元の漁師さんと膝突き合わせてよろしくお願いしますってやっているのを見たんですれど。著者も、もうちょっとやっていかないとな、と思うんで、僕がやって、ちゃんと結果出して、他の著者が見ているところで結果出して、あ、そうすりゃいいのね、みたいな感じでそれをやろうとおもういます。4月の19日からは10日くらい暇なんで。呼んでください。すぐ行きます!
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