シンガーソングライター、俳優、コメンテーターなど、マルチに活躍する泉谷しげるさん。発売されたばかりの著書、『キャラは自分で作る どんな時代になっても生きるチカラを』も話題となっています。そんな泉谷さんですが、学生時代はまともに勉強したことがなかったそう。ところがあるとき、歴史小説の面白さに目覚めたといいます。いったいどんなところが心に響いたのか? 泉谷さんの意外な一面について伺いました。
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歴史の本で「人間を見つける」
── 泉谷さんは、歴史の本をたくさん読んでいらっしゃいますよね。
まあ、知的コンプレックスだと思うんですよ。学生時代は勉強なんかふざけんなっていうタイプだったから、まともに勉強してなくて、ほぼ中卒みたいなものなんです。ずっと勉強は退屈なものだと思っていたんだけど、本を読むようになって急に賢くなった気がしますね。
── 本を読むようになったのはいつごろですか?
人気が出てからですね。人気が出てバカだと困るんですよ。本も読んでいない、レコードも聴いていないだと、話についていけないんです。これじゃ場が持たないなっていうときに、じゃあ歴史でもかじってみるかと思ったんです。そうしたら、面白くなっちゃってね。
一番、ぶ厚いやつを読んだのが、司馬遼太郎さんの『国盗り物語』ですね。そのなかに、織田信長が上洛したとき、京都の食いものが気に入らなくて、大暴れする場面があるんですよ。今度まずいものを出したら、手打ちにしてやるって。
それで料理人たちが、元料理長にどうすればいいか聞きに行ったんです。そうしたら、「あいつは美濃の田舎者だから、味噌を入れておけばいいんだ」と。それで次の日、料理になんでもかんでも味噌を入れて出したら、信長はうまいって喜んで、ぜんぶ放免になったという(笑)。
これ読んで、おかしくておかしくてね。歴史に残るような人物にも、けっこうバカなところがあるんだなって。それで、歴史の本を読むのが好きになったんです。
── 歴史上の人物の、人間くさいキャラクターが楽しかったのでしょうか。
そうですね。宮本武蔵だって「剣豪」と呼ばれて美しくとらえられているけど、ある作家が書いた小説だと、しょうもない暴れん坊でね。
御前試合ってあるじゃないですか。そういうときも宮本武蔵は、勝負がついているのに感情的になって、倒れている相手を木刀でボコボコにしちゃうんです。まさに野獣のような人間で。
もちろん、最終的にはかっこよく終わるんですけどね。だから、人間くささを見つけたときですよね、歴史の本を読んでいて面白い瞬間は。
「役に立つかどうか」なんて考えるな
── 泉谷さんは映画にも詳しいですよね。
そうですね、面白そうなものは片っぱしから見てきました。だから、偏っていないです。でも、それは映画だけじゃないですね。「これは面白そう」っていう触角みたいなものが、俺のどこかについているんだろうな。本にしろ、レコードにしろ、あらゆるジャンルでピピッと反応する。
だから、栄養にしようとか、参考にしようとかではなくて、素直に楽しむっていうことですよ。本を読んだことで何かの役に立ったとか、そんなのつまらないと思う。この部分を引用してやろうとか、セコくないですか?
だから自分は、映画にしても、漫画にしても、小説にしても、絵画にしても、すべてエンターテイメントとして好きなんだよね。
── 絵もお描きになりますよね。
子どものころは体が弱かったから、一人で絵ばかり描いていたんですよ。だから親もデザイン学校に入れてくれたんだけど、時代が悪かったね。ビートルズとか、ラジオから流れてくるロックンロールに惹かれてしまった。
絵を描くのって地味じゃないですか(笑)。とくにその時代は、石を投げれば天才に当たるっていうくらい、あらゆる分野にツワモノがいたから、机に向かってコリコリ描いていると、うずうずしちゃうんですよ。まだ若かったしね。
── 他にも、俳優のお仕事もされていますが、泉谷さんは「役者はアルバイトだ」とおっしゃっています。
生意気言ってすみません(笑)。でも、自分は曲がりなりにも歌で出てきた人間だから、そう言わないと、ちゃんと勉強して役者をしている人に対して失礼じゃないですか。絵だってそうです。作品を売ってはいるけど、あえて「片手間アート」って言っています。
べつに得意になっているわけじゃないけど、できちゃったんですよね。だから、「不本意な勝利」なんです。望んではいないけど、できちゃったの。でも、できちゃうと楽しいですよ。
自分の中では、ライブ以上に大変なものはないと思うんです。ライブが一番、自分が全力を出せる瞬間だって。だから、他のことは片手間でいいんですよ。
── 最後に、リスナーのみなさんにメッセージをお願いします。
いま世界には、いろんな共通の問題があります。誰かの問題ではなく、みんなの問題がいっぱいある。それを乗り越えていくのは、すごく大変なことです。でも、負けるときは負けて、ぐずりたいときはぐずって、 痛いときは痛いって言ったほうが、俺はいいと思うんです。
やせ我慢のたくましさより、弱さの発見ですね。そうすると絶対、助けてくれる人が現れます。だから、ちゃんと「助けて」と言いましょう。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】泉谷しげると語る「『キャラは自分で作る どんな時代になっても生きるチカラを』から学ぶ自分らしい生き方」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
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この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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