外資系企業に通算22年務め、「出世する人の英語」を身をもって学んだ著者が、「アメリカ人と英語で仕事をする上で知っておきたい、アメリカ人のものの考え方」と「意図が伝わる英語の使い方」をまとめ話題となった『出世する人の英語 アメリカ人の論理と思考習慣』(小林真美著)。実践が凝縮された本書の中から、何かと誤解されがちな「ビジネス英語」のポイントを抜粋してご紹介します。英語を使ってリアルに働きたい人、必読です。
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第5章では、「これから英語を学び直して、ビジネス英語をものにしたい」と考えている方に向け、学び直しのポイントをお伝えしたいと思います。
最初に頭に入れていただきたいのは、「英語ペラペラになりたい」「英語をまったく不自由なく使えるようになりたい」といった非現実的な願望は捨てたほうがよい、ということです。
「英語ができる人」というと、多くの人は、「字幕なしで映画を見て、内容が全部わかる」「ビジネスのやりとりも趣味の話もできるし、冗談も言える」「ニュースを読んだり聞いたりして理解できる」といったイメージを抱くようです。
しかし断言しますが、このような「英語ペラペラ」に象徴される状態になるのは、まず無理です。
みなさんの周囲に、「英語ペラペラ」のように見え、英語でバリバリ仕事をしているビジネスパーソンがいたら、
「字幕なしで映画を見て、どれくらい内容がわかりますか?」
と尋ねてみてください。
おそらく、わかりやすい内容の映画でも、6~7割というのが順当なところではないかと思います。
「ビジネス英語がばっちりな人で、6~7割なの?」と不思議に思うかもしれませんが、そもそも映画やドラマを英語で理解するというのは非常に難しいのです。
というのも、映画やドラマは、その国の文化的背景への理解がないと、内容についていけないことがあるからです。
これは、逆の状況をイメージしていただくと、わかりやすいでしょう。
たとえば日本で働いているアメリカ人の同僚と、日本人のビジネスパーソン数人とで食事に行ったと考えてください。そこで日本人同士が、昔見ていたドラマや読んでいた漫画の話をした場合、アメリカ人がその内容を理解したり話についてきたりするのは難しそうだと思いませんか?
ビジネスで英語を使いたい人が「まずは日常会話から」と考えるのも間違いといえます。
理由は、映画やドラマが理解しにくいのと同じことです。日常会話というのは場面が多様ですし、相手によって話題もさまざまですから、その背景をふまえて意思疎通するのは、簡単なことではないのです。
「基礎から勉強」「TOEICから」も失敗パターン
ビジネスパーソンが英語を学び直そうとするときは、いくつかのパターンがあります。
1つは、「基礎から勉強し直さなくては」と考え、学生時代のように英単語集や英会話フレーズ集を頭から覚えようとする方法です。
「基礎からまんべんなく」というのは正しいアプローチだと考えられがちですが、実は非常に挫折しやすいといえます。それは、「今日頑張って覚えた単語やフレーズをいつどう使うのか」があいまいで、モチベーションを維持しにくく、英語力アップも実感しにくいからです。
「ビジネス英語ならやっぱりTOEIC」と考え、TOEIC用の参考書や単語集を準備して、試験勉強から入るケースも非常に多く見られます。
TOEICを受けるのは悪いことではありません。会社でスコアを求められているなら、頑張ってそれをクリアする意味はあるでしょうし、TOEICにはビジネス英語を学ぶのに最適な問題が多いのも確かです。
しかし、TOEICにこだわってしまうと、目標とするスコアをとることに一生懸命になりがちなことに注意が必要です。このパターンに陥り、いつまでたってもTOEICを「卒業」できない人もめずらしくありません。
「TOEICの勉強を毎日続けていれば、そのうち自然に英語を話したり聞き取ったりできるようになるのでは?」
そう思っている人がいるとしたら、ここではっきり「それはない」とお伝えしたいと思います。現実には、TOEICの学習に一生懸命取り組み、高スコアに達したにもかかわらず、その力を実践でどう生かすかを意識して学習していなかったために、会話力にまったくつながっていない人が多くいるのです。
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