ビジネス英語を最大限に、実践的に使いこなすコツをわかりやすくまとめた話題書『出世する人の英語 アメリカ人の論理と思考習慣』(小林真美著)から、英語の学び直しのポイントをピックアップ。今回は、英語力を身につける最短ルートが個別にわかる「4つのステップ」をご紹介します。学ぶ道筋をしっかり見つけて効率よくいきましょう。
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ここで、私が英語を指導する際に使用しているワークシートを見ながら、具体的な場面設定と英語学習の方法をご紹介したいと思います。次の表をご覧ください。これは、私が指導しているAさんが、実際にワークシートに記入したものです。Aさんは、アメリカ人のクライアントを持つ営業担当者のアシスタントをしています。現在は英語ができる先輩の補佐ですが、近い将来、独り立ちを目指している女性です。
ワークシートに記入すると、自分に何が足りなくて、何をすべきなのかが一目瞭然になりますし、モチベーションアップにもつながるので、一石二鳥です。
■ステップ1 目標設定
まず、具体的に英語を使いたい仕事の場面を設定してください。目標とする時期も明確にしましょう。
Aさんの場合、アメリカ人のクライアントとの定例会議があり、まずはその会議の場面でステップアップするのが目標だといいます。
さらにその先に、「アメリカ人クライアントと一緒にランチに行く」「アメリカ人クライアントとの定例会議に1人で参加して、会議を仕切れるようになる」ことを目標として設定しました。
みなさんも、自分が英語を使いたい場面と時期を、ここで考えてみてください。たとえば、「今、1時間くらいかけて書いている英文メールを、1カ月くらいの間にもっと速く書けるようになりたい」「3カ月後に海外のワークショップに出席したとき、自己紹介をスムーズにしたい」など、目標はどんなものでも構いません。
■ステップ2 現状レベル把握
次に、目標設定した場面において「今すぐにその状況に自分が置かれたとき、英語で何がどこまでできるか」を考えてみましょう。
ここで、理想の自分とはかけ離れた現状を認識する人も多いと思います。しかしながら、現状の課題を整理すれば、優先的に身につけるべきものが見えやすくなります。
Aさんの場合、アメリカ人クライアントとの会議では「聞き取るのがやっとで、わからないことがあっても自分から質問できない」、ランチの場面では「(相手の)趣味を聞く程度」という状況でした。会議を仕切るとなると「質問やコメントがないかを尋ねる程度」の状態といいます。
■ステップ3 具体的に話したいことは?
現状を把握したら、そのうえで「将来、英語で言えるようになりたいことは何か」を考えて記入してください。
Aさんは、会議では「わからないことがあっても質問できない」のが現状の問題です。そこで、「(会議の)内容がわからないときは、適切な表現で質問したい」と記入しました。
ランチでは、現状は「趣味を聞く程度」のところ、「より相手を理解し、親しくなるために、関心があることなどを聞いてみたい」と言います。
会議を仕切る場面では、「会議をスマートに開始し、意見交換をして、時間内に終了できるようになりたい」というのが具体的な目標です。
■ステップ4 必要なフレーズは?
「言えるようになりたいこと」を書いたら、まずは日本語で「これを英語で言いたい」というフレーズを書いてみて、それを英語でどう言えばいいかを書き出します。
Aさんの場合、会議に参加する場面で具体的に必要なのは、「聞き取れなかったときに、もう一度言ってもらうフレーズ」「会議で質問するときに使えるフレーズ」でした。そこで、書き出したフレーズの一部は次の通りです。
・May I interrupt you for a moment?
(ちょっと割り込んでもよいでしょうか?)・Could you say that again?
(もう一度言ってもらえますか?)
ランチの場面で具体的に必要なのは、「適切な質問フレーズ」「話が盛り上がりそうな話題の振り方のフレーズ」だと考え、次のようなフレーズを日本語と英語で書き出しました。
・Do you have any plans for this summer?
(この夏は何か予定がありますか?)・Have you seen any interesting movies these days?
(最近何か面白い映画を見ましたか?)・How did you get into marketing?
(どのようなきっかけでマーケティングの仕事につきましたか?)
同様に、会議を仕切る場面を想定すると、
・Let's get down to business.
(それでは始めましょう)・How do you feel about this proposal?
(この提案についてはどう思いますか?)・Now, let's move on to the next item.
(では次の議題に移りましょう)・Let's wrap up.
(まとめましょう)
といったフレーズが必要そうです。
このように、4つのステップを通じて「具体的な場面、それに応じた英語」を明確にし、まずはそれをスムーズに使えるようになることを目指します。
具体的に使う場面を想定しているわけですから、練習しておけば、あとは実際に使ってみるだけです。
もちろん学習の過程で、基本的な文法や語彙に不安があれば、それらを同時に克服していく必要があります。そういったことも、実際に現場で使えるフレーズとあわせて学習していくと、記憶が定着する確率が格段に高まります。
このやり方は、「英語でやりたいことができるようになる」だけでなく、「英語で仕事をすることに対して自信をつける」という点でも有効です。
どんなに毎日英語を勉強していても、必要な状況に応じたフレーズを学んでいなければ、使いたいときに適切な表現が出てくることはありません。そして、とっさに言いたいことが言えないと、「こんなに勉強しているのに、簡単なやりとりもうまくできなかった」などと自己嫌悪に陥り、英語が苦手だ、英語で仕事をするのは難しい、などと思い込んでしまう人が少なくないのです。
しかし、日本人の多くは、学生時代に勉強した英語の素養があります。
また、ビジネスシーンで使う英語は、基本的に背景となる知識を持っていることが多く、たとえば金融業界で働いている人なら、金融に関する会話は、字幕なしの映画よりずっと聞き取りやすく理解しやすいものです。
私がビジネス英語を指導していて感じるのは、英語が苦手だと思い込んでしまっている人も、実はメンタルの問題が大きいということです。
そこでほんの一言、言いたいことを言えるだけで自信がついて、その後のビジネス英語学習がスムーズに進むことはよくあります。
みなさんもぜひ「実際に英語を使う場面」を考え、「言いたいこと」を想定したうえで、フレーズを身につける学習法を取り入れてみてください。
ちなみに、このシートを使って指導していて感じるのは、「何をどう言えば、外国人とのビジネスがうまくいくのか、日本語でも言えない人が非常に多い」ということです。
もちろん日本語と英語では、同じ意図を持っていても使うべき表現には違いが生じることもあります。しかし、そもそも日本語で何を言いたいか、何を言うべきかがわかっていない状態で、英語で適切な発言をするのは不可能です。
このような状態では、英語力以前に、ビジネスコミュニケーションの基礎力が足りないと考えなくてはなりません。心当たりがある人は、まず「ビジネスをうまく進めるために必要な会話」とはどんなものなのか、日本語で具体的に考えるステップをふむようにしてください。
出世する人の英語
「アメリカ人」のものの考え方や思考の癖がわかれば、英語はすぐに上達する!22年間、外資系企業で働いてきた著者が気づいた「出世する日本人の英語」と「出世できない日本人の英語」の違いとは。役立つ英語力が丸ごと身につくコツが満載。