セックスレス化が進んでいるといわれる日本人カップル。性の悩みはなかなか人に相談できないものですが、そんなときあなたを助けてくれる一冊があります。半世紀以上、5000人の女性と向き合ってきた「AV界の生ける伝説」、代々木忠監督の『生きる哲学としてのセックス』です。真のオーガズムとは何か、精力増強には何がキクのか……。性に悩むすべての男女へ捧ぐ本書、その中身をこっそりご紹介します。
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「イク」ことがゴールではない
かつての僕もそうだったが、世間一般では「イク」ことや「オーガズム」がセックスのゴール、セックスで得られる最大の悦びだと考えている。
だが、前項で紹介した「イク」にこだわっていた女性たちからもわかるように、「イク」が明確にわからなくても、幸福感や満足感は十分得られる。
ということは、「オーガズム」や「イク」というのは、ゴールではなく副産物、神様が与えてくれる偶然の「ご褒美」くらいに考えればよいのではないだろうか。
オーガズムの悦びを「ご褒美をもらった」と言い表した女性がいた。80年代に活躍したAV女優・栗原早記である。早記は『いんらんパフォーマンス』というシリーズで、加藤鷹とセックスし、鷹とともにオーガズムを体験した。
早記は鷹を愛撫し、鷹もそれに身をゆだねる。大きな快感が押し寄せる中、鷹は泣きじゃくるようにヨガッていく。といっても、早記は特別なことはしていない。言葉も道具も使っていない。ただ裸で抱き合っているだけである。
しかし、2人は次第に高まるにつれ、ふだんとは違う様子を見せる。相手の体を愛おしむように撫で、見つめ合い、さすり、つかみ合う。お互いの体にむしゃぶりつきながら、体と体をしなやかに絡ませていく。まるで2つの体が溶け合わんばかりである。
と、その瞬間、鷹は射精し失神してしまった。
早記もまた鷹の精液を舐めながら、手で舌で鷹の体を愛撫しながら涙している。その光景を見て、スタッフも僕も思わず目を潤ませてしまった。いったい二人の間で何が起きていたのか。まずは鷹に訊いてみる。
感じるままにすべてを明け渡そう
「こんなの初めて……ともかく射精とはまったく違う。気づいたら全身に鳥肌が立っていて……。ある段階までは性器に意識があったんですけど、性器から意識が離れてからは、もう何もわかんない、覚えていないんですよね」
つまり鷹は性器とは無関係のところで多幸感の津波に飲まれ、失神してしまったというわけだ。
一方早記は、撮影の最後、満面の笑みでこう語った。
「手と手って(合わせても)一緒にならないじゃん。でも水とジュースだと混ざるじゃない」
「人ってみんな、生まれてくる価値とか、存在している意味とか、あるんだなーって。それってうれしいことだなって……ありがとうございました。ご褒美、もらった。みんな本当にありがとう」
早記が語ったように、セックスでは互いのすべてを明け渡すと、混ざり合い、一つに溶け合うことができる。溶け合って一体となったとき、相手の悦びも自分の悦びとなり、大きな幸福感に包まれる。オーガズムとは、性器の快感を超えて、もっと大きな、根源的な気づきをもたらしてくれるのである。
男性の多くは、セックスで女性を征服することに重点を置く。声を出してヨガッたり失神するなんて恥ずかしいことだと思っている。その結果、相手に身をゆだねられず、束の間の快楽と射精をセックスのすべてだと思い込むようになってしまった。
だが、快楽と射精を繰り返しても、心が満たされることはない。心が満ち足りるセックスをするには、「女を征服したい」「男はこうあるべき」などという思考は捨てて、ただ感じるままに身をゆだねればいい。
見つめ合い、自分のすべてを明け渡した男が、多幸感の津波の中で新しく生まれ変わっていく姿を、僕は幾度となく目にしてきた。セックスにおける明け渡しは挑戦に値するのである。
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