フランス語の教師をはじめておよそ30年になる中条省平さん。フランス語に挫折してしまったあなたのために、「フランス語の大体が頭に入り、フランス語を恐れる気持ちが消える」ことを目指して書かれた『世界一簡単なフランス語の本』から、フランス語のはじめの一歩をご紹介します。
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フランス語の母音は基本ローマ字読みでOK!
さきほど、読まない子音について、語尾に「単独で」出てきたものは発音しない、と説明しました。じゃあ、子音のあとに母音が付いているとどうなるかといえば、当然発音することになります。
いちばん初めに出てきた Paris の a も i もごく普通に「ア」「イ」と発音します。だから、続けていうと「パリ」になるわけです。
このように、フランス語の母音の読み方の基本は、ローマ字読みです。a は「ア」、i は「イ」、o は「オ」。なんというやさしさ。
またまた引きあいに出して恐縮ですが、これが英語だったら、すべての母音に2つの読み方があって、いちいちどちらか単語ごとに憶えなくてはならないのですよ。
つまり、a は「ア」と「エイ」、i は「イ」と「アイ」、u は「ウ」と「ユー」、e は「エ」と「イー」、o は「オ」と「オウ」。しかも、この2つずつは基本で、ほかに例外がごちゃまんと出てくる。だって、one が「ワン」ですから。おまけに ough は……。
それに比べたら、フランス語はほんとにすっきりしています。
u は「ユ」、ouは「ウ」
ただし、u は「ユ」です。絶対に「ウ」にはなりませんから、注意してください。しかも、この原則はけっしてゆらぎませんから、単独で出てきた u は「ユ」とだけ憶えればいいのです。
「単独で」と断ったのは、u とほかの母音が重なった綴りのときに、発音の例外があるからです。しかし、この例外はよく出てくるものなので、いまやってしまいましょう。
それは、ou という綴りになった場合です。これは2文字ありますが、発音はたった1つの音で、「ウ」となります。絶対に「オウ」でも「アウ」でもありません。日本語の1つの文字と同じ「ウ」です。
例を出しましょう。まずは u 単独の場合。
楽器のフルート flûte のフランス語の発音は、「フリュトゥ」。語尾の e を読まないという大原則は、さっき説明しましたよね。こうして母音が消えてしまうので、母音を含まない軽い「トゥ」の音になるわけです。
u の上に変な記号がついていますが、発音上は無視してけっこうです。つまり、u の発音と û の発音はまったく同じです。このアルファベットの上に付く記号を、フランス語ではアクサン(アクセント記号)と呼んでいます。
ほかにも、母音にアクサンが付くものは、à â とか、é è ê とか、ô なんていうのが出てきますが、û と同じで、発音は「ア」「エ」「オ」「ユ」と、まったく変わりません。気にしないで、こういうバリエーションもあるのね、と軽く考えてください。
さて、oとu が重なって ou という綴りになり、「ウ」という1音で発音される場合です。
シュークリームというお菓子がありますね。あの「シュー」の部分はフランス語なのです。「キャベツ」という意味です。お菓子の形がキャベツに似ているからですね。chou と書きます。ただし、「シュー」はフランス語ですが、「クリーム」は英語。「シュークリーム」というのは、なぜかフランス語と英語が混じりあった和製外来語なんですね。
ここでまた新しい発音の要素が出てきました。ch です。chは2文字で子音1つの扱いで、かならず「シュ」という発音になります。けっして「チュ」にはならず、シャ、シュ、ショの「シュ」なので憶えておいてください。フランス語で歌を「シャンソン」といいますが、これも chanson。「チャンソン」ではないのです。
というわけで、chou は「シュ」となります。日本語では「シュー」クリームといいますが、フランス語では「シュ」。
u とou の違いは分かりましたか?
したがって、フランスの有名な料理人で、レストランの名前にもなっているロブションという人がいますが、この名前の綴りは Robuchon。ですから、日本語の「ロブション」は間違いで、正しい発音は「ロビュション」なのです。
日本語になったフランス語の発音の間違いはけっこうありますので、探してみるのも面白いかもしれません。
ところで、フランス語の響きを作る重要な特徴として、伸ばす音が少ないことが挙げられます。
英語の発音には、音楽用語でいうスラーがかかった感じがありますが、フランス語の発音は短い音を連ねるスタッカートのような印象をあたえます。そこがフランス語の音の響きの独特の魅力にもなっているのですね。英語的に1音1音を伸ばさないようにしてください。単独の母音は音を伸ばさず、「ア」「イ」「オ」「ユ」。「オー」とか「ユー」はダメですよ。
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eの発音やou以外の母音が重なったときの発音も規則的! 続きは幻冬舎新書『世界一簡単なフランス語の本』をご覧ください。
世界一簡単なフランス語の本
フランス語の教師をはじめて約30年の中条省平さん。フランス語に挫折してしまったあなたのために、「フランス語の大体が頭に入り、フランス語を恐れる気持ちが消える」ことを目指して書かれた『世界一簡単なフランス語の本』から、フランス語のはじめの一歩をご紹介します。