世界共通語だといわれるサッカー。でも、サッカーを語る言葉にはそれぞれの国の文化や歴史が反映されているのです。語学は仕事や資格のためのものだけではありません。サッカーを通じて、言語の多様さや深さに触れてみるのはいかがでしょうか? 『DO YOU SPEAK FOOTBALL? 世界のフットボール表現事典』より、昨年ワールドカップカタール大会での日本対戦国の言葉を一部抜粋してご紹介。三戦目は驚きの勝利のスペイン戦、予選リーグを突破しました。
Spain スペイン
スペインのサッカー用語は、果てしないコントラストを紡ぎだす。ここは、クラブの試合では創造性が花開くが、代表は強度と力が狂気のように混じり合うことを死守し、la furia roja(ラ・フーリア・ロハ、「赤い怒り」)と呼ばれる国なのだ。スペインは常にスキル溢れる選手を生み出してきたが、2000年代初期のフットボールを沈滞の危機に陥れた激しいフィジカルの潮流がついに去ると(フットボールの進化サイクルを司る月の引力に引き戻されたのだ)、ようやく芸術的テクニックが陽の光を浴びたのである。海底で磨かれた小石に陽が当たるように。
またスペインのサッカー用語はバルセロナとレアル・マドリーの用語であることも避けられない。この2つの対立するイデオロギーは、エブロ川を挟んで永遠に敵対する運命にあり、そのライバル関係は熾烈で、スペインの他のスポーツは何もかも片隅に追いやられるほどである。スペイン語のサッカー用語を旅すると、寝室にも、トイレにも、ディナーテーブルにも連れて行かれるし、農場と闘牛場にも、地獄の外縁と入り口にも行くことになるが、いつも(そう、必ずいつも)、ベルナベウとカンプノウに引き戻されて終わる。
abrir la lata アブリール・ラ・ラタ 缶を開ける
試合前に膨れあがった緊張が最初のゴールで一気に解放されるのを、缶入り飲料のプルトップを開けることに例える。
armario アルマリオ たんす
大柄で頑丈で、妥協しない選手。基本的に、ジェラール・ピケ以前のすべてのスペイン人センターバックはこうだった。
chupón チュポン ボールを吸い続ける奴
「吸う」を意味する動詞、chuparの派生語であるチュポンは、ボールをパスしない選手をいう。赤ちゃんのおしゃぶりの意味もある。
comepipas コメピパス 種食い
ヒマワリの種を噛む観客は、強い陽光下のスペインのゴール裏ではお馴染みの光景だが、コメピパス「種食い」と呼ばれたなら、おまえは立ち上がってちゃんと応援せずにただ受け身で観戦していると責められているのである。
croqueta クロケータ コロッケ
ラ・クロケタ「コロッケ」はテクニックの1つで、選手が両足の間ですばやくボールを動かして、タックルを避け、相手選手のすき間をすり抜けようとする動きである。料理人がコロッケをフライパンの端から端へ軽く揺すって動かすのに似ている。この技の守護聖人はミカエル・ラウドルップで、直近のもっとも有名な実践家はアンドレス・イニエスタである。
salir a por uvas サリル・ア・ポル・ウバス ブドウ狩りに行く
この表現は、ゴールキーパーが無思慮にゴールラインから前に出てクロスやルーズボールを捕ろうとし、うまくいかなかった時に使われる。一般の会話でも、誰かが泥沼にはまることを指す。
……ほか『DO YOU SPEAK FOOTBALL? 世界のフットボール表現事典』にはまだまだたくさんのサッカー用語が紹介されています。
DO YOU SPEAK FOOTBALL?
『DO YOU SPEAK FOOTBALL? 世界のフットボール表現事典』に学ぶ自由で豊かなサッカーの言葉