大学在学中に英語を学び、カナダでフリーランスデザイナーになった新井リオさん。「なぜ英語が話せるようになりたいのか?」を自分なりに咀嚼し、努力へと結びつける姿が詰まった著書『英語日記BOY』は、独自の英語学習法を教えてくれるだけでなく、勉強する気持ちを盛り上げてくれる一冊です。一部を抜粋してお届けします。
「自然な日本語」で日記を書く
自分はこの先、英語で何を言いたい?
「英語日記」勉強法で最初にやってほしいこと。
それは「自然な日本語」で日記を書くということだ。
いきなり英語で書きはじめると、既に知っているボキャブラリーでしか文章を作れないため、一向に語彙が増えない。
I went to school. I saw my friend. I ate lunch with him.
私は学校に行った。私は友達に会った。私は彼とランチを食べた。
極端に言うとこうなりかねない。けれど、僕たちはこんな不自然な文章を話すために英語を勉強しているわけではない。
そもそも僕たちが「英語日記を書く理由」は「自分がいつか使う英語フレーズ」を先回りしてに言えるようにするためだ。
そこで、自分は「日頃どんなことをして」「日頃どんなことを考えているのか」を、日本語の日記を書くことで整理してみる。
例:
前から約束していたユウコとのご飯が延期になっていたけど、今日、ついに会うことができた。やっぱりユウコは、全然変わっていなかったなあ。それにしても、親友との久々の再会って、最高!
このように書き出してみると、
「前から約束していた?」
「延期になる?」
「久々の再会?」
というように、英語でどう表現するかいまは見当もつかないかもしれないが「自分がいつか言えるようになったら確実に便利なフレーズ」が浮き彫りになる。これが大事なのだ。
「話し言葉」でもいい
また、ここでは「自分がいつか使う英語フレーズを知りたい」だけなので、「今日は〇〇をして…」といったオーソドックスな日記でなくていい。
例えば、アメリカ旅でジョセフに出会ったときの僕のように、今日1日を振り返って「感謝を伝えるフレーズが言えるようになりたい」と思ったなら、その日の日記には「ジョセフへの感謝の言葉」を、「話し言葉」でそのまま書けばいい。
例:
今日は、会ったばかりの僕に、こんなに親切にしてくれて本当にありがとう。優しさ、しっかり伝わりました。本当に感謝しています。いつか恩返しがしたいから、次はぜひ日本に来てね。
こちらも書き出してみると、
「会ったばかり?」
「親切にしてくれて?」
「恩返しがしたい?」
このように「あらかじめ言えるようにしておくべきだったフレーズ」がたくさん出てくる。その場で言えなかったことは悔しいかもしれないが「言いたかったのに言えなかった」フレーズは、もう一度使うチャンスが、いつか必ず訪れる。
いまここで完璧に言えるようにしておき、再び必要になったときに、切り札のようにそのフレーズを使えばいいのだ。
「10秒以内に言い終わる一文」にする
特に言えるようになりたい「一文」をピックアップする
いよいよ英語にしていくのだが、その前にもうひとつ大事なポイントがある。
それは、全文を英訳せず、特に言えるようになりたい「一文」だけを英語にするということだ。
なぜか?
量が多いと、瞬時に言えないからだ。
何度も言うが、僕たちはいま「自分が言いたいフレーズ」をあらかじめ知っておき、実際に必要になったときに「瞬時に言える」ようになることを目的とした勉強のプロセスにいる。
例えば、ここにふたつの英文がある。
どちらが言いやすいだろうか?
①日記の内容を全て英語にしたもの
The first thing I did when I lived in Canada was focusing on making cool designs that would catch peoples’ attention. It took around a year, but I gradually was able to make “graphic design” into my occupation. This is because people who were pleased with my designs were willing to pay me to work for them.
The important thing was not to focus on earning money. If we make an effort to make people happy, money will automatically come.
②日記のなかで「特に言えるようになりたい一文」だけを英語にしたもの
If we make an effort to make people happy, money will automatically come.
文章量の少ない②の方が、明らかに言いやすいと思う。
もちろん、①の例くらい、一気に英語が話せるようになりたい気持ちもわかる。しかし、せっかく作った長い英文を一ヶ月後に完全に忘れてしまうのなら、(スピーキングの観点から言うと)あまり意味がないのだ。いまの僕たちは、もっと小さい単位である「フレーズ(それだけで意味が成り立ついくつかの単語の集まり)」を確実に覚え、それを「瞬時に言えるようにする」練習に集中すべきである。
……と、このように明言できるのも、他ならない僕自身が「日記を全文英訳すること」に夢中になり「結局何も覚えておらず、実際に使うことができない」という時期を経験したからだ。なにより量が多いと、全文英訳だけで「勉強した気」になってしまうのだ。
5年間、試行錯誤しながら「英語日記」を書き続けてきた僕が思う、英語日記の英文の量の理想は「10秒以内に言い終わる一文」である。
そこで、先ほど書いた「自然な日本語日記」のなかで、「特に言えるようになりたい一文」をピックアップしてほしい。
例:
その日書いた日記
「今日は、5年ぶりに長野のおばあちゃんの家へ行った。大人になってから、どんどん田舎が好きになる。刺激が欲しくて東京に来たけど、いまは『癒し』がほしいかも。歳をとるにつれて、昔とは真逆の考えを持つようになったなあ。」
↓ 「特に言えるようになりたい一文」をピックアップ
「歳をとるにつれて、昔とは真逆の考えを持つようになった。」
日記内容を要約するような一文
また、書いた日記の日本語文のなかで「コレ」と言った一文が見つからなければ、「日記内容を要約するような一文」を作ってしまってもいい。
(例)
その日書いた日記
「中古CD屋で、ビートルズのレコードを買った。お父さんの影響でもう10年以上ビートルズを聴いているけれど、いまだに飽きない。最初は音楽が好きだったけれど、次第に彼らのファッションの魅力にも気づいて、完全にファンになってしまった。」
↓
日記内容を要約するような一文
「ビートルズのファンになった理由は、音楽だけでなくファッションにも魅力を感じるからだ。」
ちなみに、「10秒以内に言い終わる一文」とは言ったが、これはあくまで目安であり、少し長くなってしまったり、文章が二文に分かれても問題はない。
また、余力がある人や「ライティングスキル」を特に伸ばしたい人は、「日記を全文英訳した上で、一文だけピックアップする」というスタイルでも構わない。
ただ、どんなスタイルであれ、個人的なオススメは「1日に覚える文章は短めにしておく」ということだ。
なぜなら、「覚える文章量が短くていい」という事実は、勉強へ向かう精神的ハードルをかなり下げてくれる。「いまから大変な作業がはじまる」と思うと、僕たちはやらなくなってしまう。
ハードルを下げ「勉強に向き合いやすい状況」を作るところまで自分でデザインするのだ。
「言えなくて悔しい」を先取りする
言いたいフレーズをピックアップしたら(または「要約文」を作ったら)、英訳する前にまずは自分で、英語で言ってみよう。
たとえ言葉に詰まり「言えない…」と悔しい感情を抱いたとしても「自分で言おうとしてみる」というプロセスを挟むことが、そのフレーズの定着に繋がる。
「ドラマ」があればあるほど、フレーズは定着する。
自分で書き出した「日記」や「話し言葉」の時点で、既に教科書例文よりも「ドラマ」はあるのだが、ここで「言えなくて悔しい」という感情を味わうことで、より印象に残る一文となる。
例:
言おうとしたフレーズ
「人を幸せにするための努力を続ければ、お金は自然と集まるのだと思う。」
↓英語で言ってみようとする
「If I (努力するってなんて言うんだろう…) do my best?... and make people happy, I can earn money …(自然とってなんて言うんだろう…)」
すると、このように「うまく言えないフレーズ」にたくさん出くわすことになる。
これはすごくいいサインなのだ。
なぜか?
「いまの自分が英語で何を言えて、何を言えないか」がわかるからだ。
こうやって自分のレベルを自分で把握するのも、努力の一つである。
また、この一連の流れこそが「いつか海外に出たとき、まさに自分の身に起こるシチュエーション」なのだ。
いま、僕たちは「実際に英語を話すときの感覚に一番近いこと」をやっている。
僕自身「言えない…悔しい」というおもいを何度も経験した。恥ずかしいおもいは、いま、ひとりでやってしまおう。そしていつか訪れる本番に備えるのだ。
英語日記BOY
『英語日記BOY 海外で夢を叶える英語勉強法』について