乃木坂46イチの読書家である鈴木絢音さんの初書籍『言葉の海をさまよう』。本書は辞書愛に満ちた絢音さんと、辞書を作る人々との対談集です。
普段辞書を使わない方も楽しめるこちらの書籍。試し読み第4回は、印刷工場の方々との対談から抜粋してお届けします。
言葉の海への航海をぜひお楽しみください。
* * *
印刷工場
見学したところ
さんせいどう・いんさつ【三省堂印刷】
東京・八王子の約8000平米の敷地に本社・工場・倉庫を構える日本屈指の印刷会社。1889年、三省堂印刷所として創業し、1981年に三省堂より分離独立。三省堂の教科書や辞書はもちろん、その他出版社、官公庁・学校、諸団体などの刊行物も幅広く取り扱っている。
辞書はどうやってできる? 六つの工程を予習
西野 今日はよろしくお願いします。業務部の西野真一と申します。現場に行く前に、そもそも、辞書にはどういうパーツがあって、どのように組み合わさって本になるのかというところを説明させていただきます。あちらにバラバラにした辞書を用意しましたのでご覧ください。
鈴木 ありがとうございます。よろしくお願いします。
西野 大まかな流れで言うと、辞書ができあがるまでには六つの工程があります。(1)複数ページの塊をひたすら刷る (2)それを辞書のサイズに切って束ねる (3)束を糸で連結させる (4)ページの余計な部分を切り落とす (5)表紙をのりでつける (6)組み立てたケースに収める。今日はこの六工程すべてを見ていただこうと思っています。
鈴木 辞書はページ数が多いから、まずは大量に刷るんですね。
西野 はい。印刷効率を上げるために、1ページずつ刷るのではなく、複数ページを1枚の大きな紙で一気に刷っていきます。
鈴木 なるほど。大きな紙というのがどれぐらい大きいのか、気になります。
西野 今ご紹介したのは本当に大雑把な流れで、実際はもっと細かい工程が付随します。
鈴木 印刷工場を見学させていただくのは初めてなので、すごく楽しみです!
西野 では、早速工場へ移動しましょう!
鈴木 教科書で見たことがある、昔の印刷機械のようなものがたくさんあるのかな……。でも今、辞書は普及しているから、もっと近代っぽい機械があって、すごい生産量なのかも。よくわからないのでワクワクします。
巨大なトイレットペーパー?ドライヤーのお化け?
馬場 現場全般を見ている馬場久信です。質問事項があればお気軽に声をかけてください。
鈴木 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。……すごく天井が高くて、ビュオーという、急行電車が通過した時のような大きな音がしています! そしてとっても大きな機械と、巨大なトイレットペーパーみたいなものがありますね。これはなんですか?
馬場 この、トイレットペーパーのお化けみたいなものは、巻取紙と言います。この巻取紙を高速で回転させながら、どんどん文字を印刷していきます。
鈴木 すごいですね、めっちゃ速い! この1ロールでどのくらいのページを刷れるんですか?
馬場 辞書を作る場合で言うと、1万5000枚分くらい巻いてあります。1枚が64ページ分なので、つまり辞書96万ページ分です。1時間には192万ページくらい印刷できます。
鈴木 1時間に192万ページも! どうやって印刷するんですか?
馬場 では、こちらへ。……この高さ1メートルくらいの薄いボードを見てください。これはハンコのようなもので、これにインクをつけて印刷しています。
鈴木 なるほど……。わ、飛行機が離陸する時みたいな大きな音がしました!(作動した機械を見ながら)あれはなんですか?
馬場 はい。ドライヤーのお化けのようなものです。先ほど見ていただいた、トイレットペーパーのお化けのようなものに高速で印刷をした後、紙についたインクを乾かすための機械です。その後、切ったり折りたたんだりしてこのレーンから出てきます。
鈴木 (馬場さんが示したレーンの近くに移動して)きれいに束が並んで出てきますね。
馬場 今、ドライヤーで乾かしたばかりだから、ほんのり温かいんですよ。ちょっと触ってみてください(レーンから束を1部取り、鈴木さんに手渡す)。
鈴木 本当だ、あったかい! できたてほやほやの辞書ですね。
馬場 では、場所を移動しましょう。次は丁合という工程を見ていただきます。
鈴木 はい、よろしくお願いします。
* * *
印刷工場の見学はまだまだ続きます!
続きはぜひ書籍でお楽しみください。
言葉の海をさまよう
乃木坂46イチの読書家で、辞書への強い愛を持つ鈴木絢音さん。書籍の発売が決定いたしました。タイトルは『言葉の海をさまよう』。辞書愛に満ちた絢音さんと、辞書を作る人々との対談集です。辞書出版社の三省堂の多大なバックアップにより、辞書の編纂者、編集者、校正者、印刷会社、デザイナーなど、様々な方にお話をうかがった様子を一冊にまとめています。