乃木坂46イチの読書家である鈴木絢音さんの初書籍『言葉の海をさまよう』。本書は辞書愛に満ちた絢音さんと、辞書を作る人々との対談集です。
普段辞書を使わない方も楽しめるこちらの書籍。試し読み最終回は、三省堂・販売企画部の林治信さんとの対談から抜粋してお届けします。
言葉の海への航海を最後までお楽しみください。
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辞書を売る人
お話を聞いた人
三省堂 販売企画部
はやし・はるのぶ【林治信】さん
1991年入社。辞書や教科書の学校営業を約15年経験した後、書店、販売会社などへの営業担当に。現在は辞書をはじめとする出版物全般のプロモーション活動にも携わっている。
Z世代にアプローチ! ラジオで辞書を「聴く」
林 はじめまして。販売企画部の林と申します。今日は辞書の売り方についてということですが、どうしたら辞書が売れるのかわかっているんだったら、私が一番知りたいというのが正直なところではあります。
鈴木 そうなんですか? それだけ、売るのが難しいということでしょうか。
林 言い訳から入ってしまってすみません。でも、本当に辞書の売り方がわかるんだったら、知りたい。そういう気持ちでいるということだけはご理解いただきたいです。ですから本日は、正解かどうかはわかりませんが、どんなことをやっているかという話をお伝えできればと思います。
鈴木 ありがとうございます。今は、電子書籍を手に取る人も少しずつ増えてきている気がするんですけれども、私はやっぱり紙の辞書を書店で買いたいという気持ちが強いです。ですから、これからも私みたいに紙の辞書を好きで買う方がいてくれるためにはどうしたらいいんだろうって私も考えながら、今日はお話を伺いたいと思っています。
林 全国民が鈴木さんのようであってほしいです(笑)。
鈴木 ありがとうございます(笑)。ではまず、林さんが所属されている販売企画部というのはどういうことをされているのか教えていただけますか?
林 販売促進と広告宣伝。ざっくり言うとこの二つですね。広告といっても限られていて、なかなかテレビとかに出稿するというわけにはいかないんですが。最近はラジオでCMを流しました。
鈴木 ラジオですか。
林 はい。2021年12月、『三省堂国語辞典』が改訂になった時に、時報広告って言うんですかね。語釈とか、どんな新語が入っているかというのを文章にして声優さんに読んでいただいたんです。例えば、ある声優さんには羽根付き餃子の語釈を読んでいただきました。ジューッという、焼く時の効果音を入れながら、「辞書はを写すかがみ。新しく載った言葉。ギョーザを焼くときに、そのまわりに羽根のようにうすくぱりぱりした部分ができるように仕上げたもの。羽根付き餃子。この8年で、素敵なメニューが広まりました。8年ぶりの全面改訂『三省堂国語辞典 第八版』。ことばを見つめて141年。三省堂が0時をお知らせします」という感じです。
鈴木 面白いですね! 辞書は読むのが当たり前だと思っていたので、聴くというのは新鮮です。
林 辞書はどうしても目で見るものになっちゃっているんだけれども、個人的には聴くというのも面白いんじゃないかと思っていたので、ちょっと取り組んでみました。あと、ラジオって、昔は1回流れたらおしまいだったけれど、今はradikoとかでわりと繰り返しの聴取があるので、聴かれる機会が増えている。若者でもけっこうラジオを聴いている人が多いようなので、Z世代向けの番組で流しました。
鈴木 若者に訴求したということですか?
林 はい。先ほど鈴木さんがおっしゃっていたように、今はデジタル媒体を使う方も増えていて、それを主に使っているのは、やっぱり若い方々。そういう世代にどうアプローチをしていくか。紙の辞書というだけではなくて、広く辞書を知ってもらうためにはどうすればいいのかなというところでプロモーションを行いました。
鈴木絢音が辞書のPOP作りに挑戦!
編集部 実は鈴木さんに、今日のお話をもとにPOPを作っていただきたいんです。
鈴木 え!そんな、できるかな……。うーん、どうしよう。先ほど林さんに教えていただいた書き方に倣うと、フォーマットは自由だけど、長くなりすぎないように注意して、その辞書ならではの特長を書いて、大事な部分は強調する……という感じですよね。
林 でも本当に、鈴木さんの好きなように書いていただけたらいいと思いますよ。
鈴木 わかりました。では、『三省堂国語辞典』の第八版のPOPを書いてみます。以前、編集の奥川さんにお伺いした特長を入れて、チャレンジしてみますね。
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絢音さんが制作したPOPは、ぜひ書籍でご覧ください。
ここまで6回に渡ってお届けした試し読みも最終回となりました。
本編には新津保建秀氏撮影の口絵も収録されていますので、こちらもぜひお楽しみください。
そして、本日3月28日は絢音さんが乃木坂46から卒業する日。
絢音さん、ご卒業おめでとうございます!
絢音さんが進む道が、夢と希望に溢れた素晴らしいものでありますように。
言葉の海をさまよう
乃木坂46イチの読書家で、辞書への強い愛を持つ鈴木絢音さん。書籍の発売が決定いたしました。タイトルは『言葉の海をさまよう』。辞書愛に満ちた絢音さんと、辞書を作る人々との対談集です。辞書出版社の三省堂の多大なバックアップにより、辞書の編纂者、編集者、校正者、印刷会社、デザイナーなど、様々な方にお話をうかがった様子を一冊にまとめています。