テレビ朝日系 火曜21時ドラマ『星降る夜に』の感動を完全収録したシナリオブックがついに発売!
心ときめく大人のピュア・ラブストーリーから、一部試し読みをお届けします。
★人物紹介★
雪宮 鈴(吉高由里子)……産婦人科医。常に冷静に振る舞い、誰かに頼ることが苦手。息抜きに行ったソロキャンプで、10歳下の柊一星と運命の出会いを果たすことに。
柊 一星(北村匠海)……遺品整理士の青年。感情豊かで明るい性格。音のない世界を生きる。手話や筆談などで会話をする。偶然出会った雪宮鈴に一目惚れする。
佐々木 深夜(ディーン・フジオカ)……45歳の新米医師。美しい風貌とは裏腹に、衝撃的なヘタレポンコツで、病院中のスタッフから毎日叱られている。
麻呂川 三平(光石 研)……「マロニエ産婦人科医院」の院長。道化した言動も多いが器が大きい男。釣りが好き。
プロローグ1
広がる満天の星―
無音。
プロローグ2
夜のキャンプ場。
やはり無音。
湖の桟橋の先で、ひとりの青年(柊一星)が、三脚を立てて、夜の空の写真を撮っている。
満天の星は湖面にも映っており、360度星のような風景。
ややあって一星は、違うカメラで、空以外の風景も撮り始める。
一 星「(人の気配を感じる)……?(振り返る)」
桟橋の入り口に立っている女性(雪宮鈴)がいて、こちらを見ている。
何かを話しかけるその女性に、思わず見とれる一星。
一 星「(そのまま、吸い込まれるようにシャッターを切る)」
驚いた顔の女性。
一 星「(そのまま撮り続ける)」
文字が出る。
『君と初めて出会ったのは、星降る夜のことだった』
時間経過して―
鈴のテントの前で、お酒を飲んでいる鈴と一星。
再びカメラを持ち、鈴を撮り出す一星。
一 星「(写真を撮りながら、鈴の顔に近づき、カメラを外して、突然、鈴にキス)」
鈴、思わず一星を殴る。
一 星「(ひるまない。微笑んでいる)」
一星の反応に戸惑っている鈴。何かを話そうとしているが人差し指で唇に触れ、それを遮る一星。
そのまま、2度目のキス。なぜか拒まない鈴。
(日替わり)
海辺のマロニエ産婦人科医院・外来診察室
産婦人科医師の雪宮鈴(35)と、看護師の伊達麻里奈(25)が、NSTを装着して、胎児の心拍を確認している。
鈴 「荒井さん、やはり赤ちゃんの心拍の音がちょっと弱いです。陣痛待たずに、今すぐ帝王切開しましょう」
荒 井「え、帝王切開?」
鈴 「手続きなどはご家族に連絡するので」
荒 井「あ、 赤ちゃんは、赤ちゃんは大丈夫なんですか!? あいたたたたたた」
伊 達「どうしました!?」
荒 井「あれっ陣痛も来たような気がする、ううううう」
モニターの胎児の心拍、どんどん落ちる。
鈴 「家族に連絡、点滴の準備。院長と佐々木先生呼んで。カイザーするよ」
同・廊下
手術室に向かって颯爽と走る産婦人科医・佐々木深夜(45)。長身で美しく白衣の似合うベテラン医師に見えるが実は新人。
トイレから、看護師・蜂須賀志信(30)が、検査用に採取した尿3人分のコップを持って出て来て、深夜と激突。検尿が深夜の白衣にもろにかかり、床にもこぼれる。
素早く飛びのいた蜂須賀は無事。
深 夜「……!」
蜂須賀「あ~あ~やっちまったやっちまった~」
深 夜「すみません……」
蜂須賀「なんつーか、ホンット顔だけっすよね」
深 夜「本当にすみません、顔だけで」
蜂須賀「尿もらい直すのダル……掃除オナシャ~ス(と何もかも放置して、去ってゆく)」
深 夜「い今僕、手術室に呼ばれ(てるんですけど)……」
そこにやって来る看護師長・犬山鶴子(50)。
犬 山「佐々木先生、オペやるよ! ってか何なんだ、このオシッコ」
深 夜「すみません、僕がその蜂須賀さんにぶつかってしまって」
犬 山「ボーっと生きてんじゃないよ、佐々木先生! 早く着替えて! やる気元気佐々木! 返事!」
深 夜「ハイッ」
同・手術室
妊婦には全身麻酔がかかっており、鈴の執刀で帝王切開中。
助手は深夜。機械出しは伊達。
麻酔医は院長の麻呂川三平(63)で、モニターを見ている。
助産師資格のある犬山もいる。
鈴 「(深夜に)ちゃんと腹膜把持して」
深 夜「あああ~……(手際が悪い)」
鈴 「(伊達に)クーパー。卵膜破膜します。(深夜に)羊水吸引」
深 夜「はいぃっ……」
鈴 「頭出たよ、胎児娩出します。臍帯クランプして」
お腹の中から赤ん坊を取り上げる鈴。
犬 山「よし来た! ……ん?」
犬山が受け取り、背中をさする。
しかし産声を上げない赤ん坊。
麻呂川「おろ……」
伊 達「泣かない……」
深 夜「あ~……どうしましょう、赤ちゃんが(と鈴を見てオロオロ)」
鈴 「佐々木先生、子宮筋膜縫合お願い」
深 夜「は……」
鈴、急いで聴診器で赤ん坊の心臓の音を聴く。
鈴 「……(どくんどくんと聞こえる)」
鈴、心音を聴きながら足の裏を刺激する。
やがて、びえ~~~と産声を上げる赤ん坊。
犬 山「よっしゃ!」
一 同「(ホッ)」
麻呂川「バイタル安定。(鈴に)お母さんも順調よ」
鈴 「(深夜が縫合を始めていないのを見る)縫合、どうしたの?」
深 夜「あっ、あああ今……」
鈴 「もういい、わたしがやります」
深 夜「(呆然)……」
鈴 「マチュ30、クーパ(手際よく縫合を始める)」
同・病室
麻酔から覚めた母親のもとに鈴、深夜、おくるみにくるまれた赤ん坊を抱いた犬山が来る。
鈴 「元気な男の子ですよ」
犬 山「ほぉら、ママですよ~」
荒 井「わぁ~」
深 夜「おめでとうございます! よかった……本当によかった(と言いながら変な顔になる)」
鈴 「……(深夜を見て)」
犬 山「また変な顔して」
同・スタッフ控室
入って来た鈴が、自分宛の郵便物を見ている。
法律事務所からの封筒がある。
鈴 「(封を切る)」
出て来た書類は医療過失についての通知書である。
鈴 「……」
麻呂川が入って来る。
麻呂川「雪宮先生、ご苦労さん、午後は任せて」
鈴 「すみません、今日は満月の大潮で、忙しくなるかもしれませんけど、よろしくお願いします」
麻呂川「大丈夫大丈夫」
鈴 「じゃお先に(と帰って行く)」
麻呂川「お疲れさん」
ややあって、深夜が入って来る。
深 夜「あ、院長」
麻呂川「今日もいっぱい叱られたけど、大丈夫?」
深 夜「はい……すみません」
麻呂川「謝ることはないよ。何でも一喜一憂しちゃうピュアな新人はかわいいもんだ」
深 夜「頑張ります。今朝のお産でも思ったんですけど、一組の男女が出会う確率、その男女の中の1個の卵子と1匹の精子が出会う確率、その受精卵が無事にお腹の中で育ち、人間として生まれて来る確率、それらを全部かけあわせると、約1000兆分の1じゃないですか」
麻呂川「おお~急にすごいしゃべるね」
深 夜「まさに奇跡だなって思うと、胸が、いっぱいになってしまって……」
麻呂川「それで、あの変な顔になっちゃうんだ(笑)」
深 夜「変な顔? 僕、変な顔してましたか?」
麻呂川「うん、変な顔しててもイケメンだけどね」
深 夜「……?」
麻呂川「まぁ一見ベテランに見えるところが、患者さんを混乱させそうで心配だけど……45歳の新人先生、頑張ってよ」
深 夜「はい、頑張ります」
キャンプ場
夕方、ソロキャンプ準備中の鈴。
テントを立てたり、お湯をわかして焼酎お湯割りを作り、音楽に乗って、体を少しだけゆすったりしながら―。
夜になっている。
鈴 「(空を見上げる)……」
満天の星。
鈴 「……」
鈴の視線の先に、湖の桟橋の先で、写真を撮っている青年(柊一星)がいる。
鈴 「……?」
美しい青年がカメラを覗く姿は、絵になっている。
違うカメラで、空以外の風景も撮り始める青年。
鈴 「(しばらく見ている)」
鈴、立ち上がって、一星の方に歩いて行く。
一 星「……(気配に気づき、鈴を見る)」
満天の星が、湖面にも映っている。
桟橋の上に2人。
鈴 「……きれいですね。星が降ってるみたい」
一 星「(カメラを鈴に向け、鈴の写真を撮る)」
鈴 「……!(断りもなく撮るなんて、と思う)」
一 星「(そのまま写真を撮り続ける)」
鈴 「……(手で顔を隠し)やめて下さい」
一 星「(撮った写真を見て、いいと思う)……(鈴に歩み寄り、撮った写真を見せる)」
鈴 「(予想外によく撮れているとは思うが、顔には出さない)……写真家さんですか?」
一 星「(聞こえない)……(また近くで鈴を撮ろうとする)」
鈴 「(手で遮る)やめて下さい、もう」
カメラを鈴が振り払おうとすると、一星はバランスを崩し、カメラを落としそうになる。
あっと、手を出す鈴。
一星と鈴の手が触れ合う。
アッと顔を見合わせる2人。
一 星「(危ないじゃないか! と、キッと厳しい表情になる)」
鈴 「……(そっちがいきなり写真撮るのが無礼だろう)……」
一 星「(スタスタと鈴のテントの前に歩いて行く)」
鈴 「……?」
一 星「(鈴が座っていた椅子に座る)」
鈴 「……!」
一 星「(鈴が持って来ていたコップで、鈴の焼酎を勝手に注ぎ、ドンと乱暴に大きな音を立ててボトルを置く)」
鈴 「……!」
一 星「(焼酎をストレートで飲む)」
鈴 「いただきますくらい言ったらどうですか?」
一 星「(いただきます、というようにコップを上げる)」
鈴 「(一星の態度が意味不明)……(さっきの残りのお湯割りを飲むが冷めている)……(ゾクッとして)さぶ~」
一 星「(立ち上がり鈴の前に来て、自分のマフラーを取り、鈴の首に巻く)」
鈴 「……!」
一 星「(じっと鈴を見る)」
鈴 「……(本当に寒いので、口元までマフラーを上げる)」
一 星「……(指でマフラーを下ろし、鈴の口元を出す)」
鈴 「(キスするのかと身構え、体を引く)」
一 星「(キスする気はなく、カメラを再び手に取り、鈴を撮り出す)」
鈴 「……(キスだと構えた自分が恥)……」
ファインダーの中の、美しい鈴。
一 星「(イイ女だと思う)」
鈴 「(元の椅子に座り、焼酎のお湯割りを作り直す)」
一 星「(撮り続けている)」
不愛想だが、色っぽく見えるファインダーの中の鈴。
一星、俄然欲情する。
一 星「(写真を撮りながら、鈴に近づいて行く)」
鈴 「(しゃべらない不思議な青年に写真を撮られ続け、酔いが回る)」
一 星「……」
鈴 「星撮ってたけど、星のこと、くわしいんですか?」
一 星「……」
鈴 「何でしゃべらないの?」
一 星「……」
鈴 「(空を見上げ)シリウス……ペテルギウス、オニオン、ん?(あれ、何? と一星に聞こうと、一星の方を見た瞬間)」
いきなり一星が鈴にキス。
鈴 「……!!」
鈴、思わず一星を殴る。
鈴 「あっ……ごめ……」
一 星「(ひるまない。微笑んでいる)」
鈴 「……何なの?」
一 星「(人差し指で唇に触れ、言葉を遮る)」
鈴 「……?」
一 星「(2度目のキス)」
鈴 「(なぜか拒否しない)」
* * *
―ーやけに図々しくも不思議な魅力をもつ一星。10歳差の2人の恋の行方はいかに⁉ 続きは本誌にてお楽しみください。
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