積立投資、インデックスファンド、保険、確定申告、住宅ローン、税制優遇、NISA、iDeCo……。みなさんは、どこまでちゃんと理解しているでしょうか? 少しでも不安のある方におすすめしたいのが、元東京国税局職員・小林義崇さんの『元東京国税局職員が教えるお金の基本』。お金のことで失敗しないために、絶対知っておきたい「お金の基本」をやさしく教えてくれる本書から、一部をご紹介します。
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知らないともったいない控除がある
年末調整をすれば、会社員の税金計算は基本的に完了します。ただ、場合によっては年末調整の後に確定申告をすることで、還付金(所得税の支払い過ぎなどの理由により、納税者へ返還されるべき税額のこと)を増やせる可能性があります。
確定申告をすべきケースのひとつ目は、「会社の年末調整を正しく行えなかった場合」です。たとえば、保険会社の控除証明書が届かずに年末調整の期限に間に合わなかったときや、年の途中で退職して年末調整できなかったとき、年末調整の後に扶養家族が増減したときなどが該当します。
このような場合は、確定申告のときに年末調整で申請できなかった控除を申告でき、還付金を受け取れます。
次のケースは、「年末調整で手続きできない控除を受ける場合」です。控除の多くは年末調整で手続きが可能なのですが、一部、確定申告が必要なものがあります。
【年末調整で手続きできない控除の例】
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
- 配当控除
- 住宅借入金等特別控除(1年目)
このような控除を利用するには、その控除が発生した翌年以降に確定申告をします。たとえば2022年に医療費をたくさん支払ったのであれば、2023年以降に確定申告で医療費控除の申告を行います。
ちなみに、確定申告の期限は納税が生じる場合と、還付金が生じる場合で分かれています。納税が必要な場合は期限が短いうえ、遅れると加算税や延滞税といったペナルティがつくことがあるので、早めに手続きをしておきましょう。
覚えておきたい「特定支出控除」
会社員は年末調整や確定申告で控除を利用できますが、必要経費を計上することは基本的にできません。
そのため、会社員の方は不公平と感じるかもしれませんが、それは違います。なぜなら、必要経費の代わりに「給与所得控除」というものが引かれているからです。会社員の給与収入にそのまま税金がかかっているわけではなく、給与所得控除を引いた後の給与所得が税金の基準になります。
「給与収入」とは、給与明細に書かれている、税金や社会保険料などを差し引く前の金額を意味しています。ちなみに勤務先から支給される出張費や通勤手当は非課税なので、給与収入には含まれません。
そして、給与収入から差し引ける「給与所得控除」は、次のとおり給与収入に応じて自動的に決まります。
たとえば給与収入が500万円であれば、給与所得控除額は144万円となり、給与所得は差額の356万円。実際に500万円の給料があっても、課税対象となるのは356万円になります。
会社員の場合、仕事のために支払った費用であれば、会社で経費精算するのが一般的ですよね。実際に年収500万円の会社員が年間144万円もの経費を自己負担することは考えにくいのですが、自己負担の有無にかかわらず給与所得控除は自動的に差し引かれるのです。
これだけでも会社員の税金は優遇されていると言えますが、さらに課税所得を引き下げられる可能性があります。仕事のために自己負担したお金が一定額を超えたときに使える「特定支出控除」を使うのです。
【特定支出控除の対象となる一般的な費用】
(1) 通勤費用
(2) 仕事のための旅行費
(3) 転勤に伴う転居費用
(4) 職務のための研修費用
(5) 職務に関連する資格取得費(弁護士、公認会計士、税理士なども含む)
(6) 単身赴任などで、自宅への旅行のための支出
(7) 次に掲げる支出で、業務に必要であることを勤務先から証明がされたもの(65万円を上限)
・書籍、雑誌などの費用
・制服、事務服、作業服など、勤務場所で着用する衣服の購入費
・会社の得意先などに対する、交際費、接待費など
これらの特定支出控除の金額を、1月1日から12月31日の1年分合計した結果、「本来の給与所得控除×1/2」を超えたら、超えた金額を給与所得控除に加算することができます。
会社員の場合、そもそもの給与所得控除が大きいので、特定支出控除を使う場面はあまりないかもしれません。
ただ、資格取得のためにスクールに通うときや、高額なセミナーを受けるときなど、仕事に関わる大きな出費があったときは、特定支出控除の存在を思い出してください。
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