テレビ朝日系 火曜21時ドラマ『星降る夜に』の感動を完全収録したシナリオブックがついに発売!
心ときめく大人のピュア・ラブストーリーから、一部試し読みをお届けします。
★人物紹介★
雪宮 鈴(吉高由里子)……産婦人科医。常に冷静に振る舞い、誰かに頼ることが苦手。息抜きに行ったソロキャンプで、10歳下の柊一星と運命の出会いを果たすことに。
柊 一星(北村匠海)……遺品整理士の青年。感情豊かで明るい性格。音のない世界を生きる。手話や筆談などで会話をする。偶然出会った雪宮鈴に一目惚れする。
麻呂川 三平(光石 研)……「マロニエ産婦人科医院」の院長。道化した言動も多いが器が大きい男。釣りが好き。
海星ヶ浜の堤防
1話ラストの鈴の手話「ありがとう」からリフレイン。
鈴 「……(覚えて来た手話を披露)ありがとう」
一 星「……!?」
鈴 「あなたに、母の遺品、整理してもらえて、よかった」
一 星「(口元と状況で、おおむね理解できる)」
鈴 「(もう一度、手話で)ありがとう」
一 星「……」
鈴 「……」
一 星「……」
鈴 「(更に覚えて来た手話で)でも、お前のキス、大したことなかったけどな」
一 星「……!」
鈴 「(ドヤ顔)」
一 星「(そんなドヤ顔の鈴の顔を見て)……(思わずぷっと笑う)」
鈴 「(何で笑うんだよ。ムカつきつつ、結局一緒に笑う)」
笑い合った後の変な間―
鈴 「(ジェスチャーしつつ)じゃ、帰ります」
一 星「……」
鈴 「(歩き出す)」
一 星「(鈴の腕をグイッとつかんで、引き留める)」
鈴 「……!?」
一 星「(手話で)ありがとうって言うなら、お礼して」
鈴 「……え?」
一 星「(ジェスチャーで)スマホ出せ」
鈴 「(スマホ? と思いつつ、出す)」
一 星「(素早く勝手にメッセージアプリをつなげる)」
鈴 「ちょっ……勝手にもう(図々しい!)」
と、スマホを奪い返すと、つながったばかりのメッセージアプリ画面に早速メッセージが来る。
一 星「(メッセージアプリで)お礼して」
鈴 「お礼、今言いましたけど」
一 星「(メッセージアプリで)今日休み?」
鈴 「休み、だけど何?」
一 星「(鈴が言い終わらないうちに、腕をつかんで歩き出す。猛烈強引)」
鈴 「おおお~っ……」
映画館・前
一星に腕をつかまれた鈴が来る。
一 星「(チケットをアッという間に2枚買う)」
鈴 「映画見るの?」
一 星「(チケットを鈴に渡す)」
鈴 「(チケットを見る)『ゾンビ・ハンサム・ヘブン』」
鈴のスマホが、バイブレーションする。
鈴 「(スマホを見る)」
一星からメッセージアプリで、『記憶喪失のゾンビが、トンネルの向こうの不思議な空飛ぶお城で、海賊王をめざすラブストーリー』
鈴 「何なんこれ???」
一 星「(ゴーグルを出す)」
鈴 「……?」
一 星「(メッセージアプリで)字幕が見える(また鈴の腕をつかんで、どんどん行く)」
鈴 「おおおおっ」
同・中
並んでゾンビ映画を見ている鈴と一星。
一星はゴーグルをかけている。
鈴・一星「(笑っている)」
時間経過して―
鈴 「(涙をぬぐっている)」
一 星「(ゴーグルを取り、泣いている鈴を、不思議そうに見る。これで泣くか?)」
ハンバーガー屋・店内
2人分、注文する鈴。財布を出す一星を見て、慌ててその手を止める鈴。
鈴 「(ジェスチャーで)払います。年上だし」
一 星「(OKという目)」
時間経過して―
食べている2人。
一 星「(メッセージアプリで)俺、月10本は映画見る」
鈴 「(へえ~と思うがツンとしている)……」
一 星「(メッセージアプリで)映画、キャンプ、写真、旅行、多趣味なんだ」
鈴 「(ふ~んと思うがツンとしている)……」
一 星「(メッセージアプリで)今日の映画はイマイチだったけど、隣のヤツが鼻水たらしてて、笑った」
鈴 「(ムッ)」
一 星「(メッセージアプリで)葬式の日も鼻水たらしてたし、キャンプの夜もゲロ吐いてたし、涙、鼻水、ゲロ、いろいろ出すね(笑っているスタンプ)」
鈴 「(思わず声で)鼻水なんかたらしてないです。(と気を取り直しメッセージアプリで)映画面白かった。ゾンビの空中戦、迫力あった」
一 星「(ありえね~、という顔)(メッセージアプリで)映画見る目ねえな」
鈴 「(メッセージアプリで)映画見たの15年ぶりなんで」
一 星「……!(メッセージアプリで)最後に見たの何?」
鈴 「(ちょっと考えて、メッセージアプリで)花男」
一 星「(メッセージアプリで)15年前、何してた?」
鈴 「(メッセージアプリで)医学部の学生。柊さんは?」
一 星「(メッセージアプリで)一星でいい」
鈴 「一星……」
食べたりスマホ打ったりで、忙しい鈴。
スマホの画面も、油で汚れる。
鈴 「あ~あ(とスマホの画面を拭いたりしている)」
一 星「(メッセージアプリで)俺の15年前は、10歳だ」
鈴 「……10コも若いの……」
一 星「(メッセージアプリで)たった10コだよ(生意気な顔)」
ハンバーガーを食べている一星の頬に、ケチャップがつく。
鈴 「(ついてる、とジェスチャー)」
一 星「(拭く)」
拭いても取れていない。
鈴 「まだ(と示す)」
一 星「(拭いて、今度は取れる)」
鈴 「子どもだな」
一 星「(何と言われているかわかって、フン)」
その時、鈴のスマホがバイブレーションする。
画面に『麻呂川院長』と出る。
鈴 「ちょっとゴメン(スマホを持って外に出る)はい」
マロニエ産婦人科医院・医局
電話している麻呂川。
麻呂川「飛び込みの匿名妊婦が、転がり込んで来ちゃってさ。追い出すわけにも行かないんだけど、今日、頼まれてる妊婦さんの分娩があって手が離せないのよ」
鈴の声「すぐ行きます」
麻呂川「悪いな~。ちょっと佐々木先生には荷が重いと思って」
ハンバーガー屋・店内
鈴が一星の所に来て、メッセージを送る。
『緊急で呼ばれたから、行かないとならないの』とある。
鈴 「ごめんね」
一 星「(手話で)どぞどぞ」
鈴 「じゃ(走り去る)」
一 星「(颯爽としていて、カッコいいと思う)」
マロニエ産婦人科医院・廊下
~スタッフ控室
鈴に深夜が状況を説明している。
深 夜「保険証も出さないし、名前を聞いても言わないんです」
鈴 「妊娠週数は?」
深 夜「え、あ、わかりません、何にも言わないので」
犬山が来る。
犬 山「匿名妊婦、子宮口7センチ、展開80%、胎児の推定体重は2400グラムです」
鈴 「母体に感染症があるかもしれないから、抗体検査とクロスマッチやって」
犬 山「ハイッ!」
鈴と犬山、出て行く。
相手にされていないと思いつつ、ついて行く深夜。
深 夜「……」
同・外観
夕方になっている。
元気な産声。
同・分娩室
鈴、臍帯を切り新生児を犬山に渡す。
犬 山「おめでとうございます、かわいい女の子ですよぉ」
深 夜「(いつもの変な顔になっている)よかった……うちに来てくれて……よかった……」
鈴 「(深夜を見て、不可解な顔だと思っている)」
犬山が赤ん坊を妊婦(名乗らない匿名妊婦)のお腹に乗せる。
犬 山「ほら、お母さんですよ」
匿名妊婦「(横を向いて、子どもの顔を見ない)」
犬 山「……?」
鈴 「……?」
深 夜「……?」
匿名妊婦「(赤ん坊を絶対に見ない)……」
鈴・犬山「(顔を見合わせる)」
深 夜「……?」
犬 山「じゃ赤ちゃんきれいにしますね」
匿名妊婦「(何かつぶやく)」
深 夜「何ですか?」
匿名妊婦「子ども……」
鈴 「……?」
深 夜「お子さん、もう一度見たいですか?」
匿名妊婦「いらない」
鈴 「……?」
匿名妊婦「子どもなんて、いらない」
鈴 「……!」
深 夜「……!」
* * *
―ー子どもっぽくて無邪気な一星に、鈴の心は徐々にほぐれていく。続きは本誌にてお楽しみください。
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星降る夜に
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