気づかぬうちに多用していたほどよい距離感の「縁食」の場 -『縁食論──孤食と共食のあいだ』藤原辰史KIKI（モデル）

3年前に犬を飼いはじめて、1日2回の散歩に出るようになり、子どもの頃から見知った地元に、こんな小道があったのか、こんな店があったのか、という発見がたびたびあった。散歩ではいつも歩く駅やスーパーまでの近道ではなく、車も人通りも少ない、どこへ行くのも遠回りになるような道を選ぶ。すると豆腐屋さんあり青果屋さんあり、閉業してからだいぶ年月が経った銭湯あり。2年前に娘が生まれてからも、似たような経験を度々しており、犬や子どもを連れているからこその目線で、見知った街に新たな一面が生まれたのだった。