テレビ朝日系 火曜21時ドラマ『星降る夜に』の感動を完全収録したシナリオブックがついに発売!
心ときめく大人のピュア・ラブストーリーから、一部試し読みをお届けします。
★人物紹介★
雪宮 鈴(吉高由里子)……産婦人科医。常に冷静に振る舞い、誰かに頼ることが苦手。息抜きに行ったソロキャンプで、10歳下の柊一星と運命の出会いを果たすことに。
柊 一星(北村匠海)……遺品整理士の青年。感情豊かで明るい性格。音のない世界を生きる。手話や筆談などで会話をする。偶然出会った雪宮鈴に一目惚れする。
佐藤 春(千葉雄大)……一星と同じ職場に勤める遺品整理士。親友であり、先輩でもある一星のことを心から尊敬している。
麻呂川 三平(光石 研)……「マロニエ産婦人科医院」の院長。道化した言動も多いが器が大きい男。釣りが好き。
佐々木 深夜(ディーン・フジオカ)……45歳の新米医師。美しい風貌とは裏腹に、衝撃的なヘタレポンコツで、病院中のスタッフから毎日叱られている。
鈴の自宅マンション・LDK
朝。
パジャマ姿の鈴がカーテンを開ける。 いい天気だ。
鈴 「(手話で)青い空……白い雲……」
同・ベランダ
窓を開けベランダに出て、下の道を見る鈴。
歩いて行く人がいる。
鈴 「(手話で)ランドセル……花……鳥……」
同・玄関
出かけて行く鈴。
鈴 「(靴を履きながら)靴……(わからない)」
道
バス停にいる鈴。
スマホで、手話を調べる。
『靴』
鈴 「ふ~ん(なるほど)……(靴の手話をやってみる)靴」
バスが来る。
鈴 「バス……(腕時計を見る)10分遅れ……」
遺品整理のポラリス事務所・外観
同・中
誰も来ていない事務所の中で、スマホを立てかけ、動画を撮っている一星。
一 星「(スマホに向かって手話で)バス。……バス」
桃野が入って来る。
桃 野「おはようございまーす!(一星にジェスチャーで)おはようございまーす!」
一 星「(桃野に答えず動画で手話)今日は、バスが、10分遅れて来た」
春が入って来る。
春 「おはよ(一星の顔を見て、手話で)おはよう」
一 星「(春には答えず、動画で手話)今日は、バスが、10分遅れて来た」
春 「おやおやおや」
一 星「(春に構わず、手話で)わかった? じゃね(と動画を撮り終わり、鈴に送信して切る。春に手話で)何?」
春 「(手話で)幸せそうだね」
一 星「(手話で)こうやって、春にも教えただろ?」
春 「(手話で)なつかしいな~」
桃 野「一星さん、俺も1つ覚えたんです! 見て下さい。(手話と声で)桃野」
一星・春「(拍手)お~」
桃 野「うへへ。もう1つ。(手話と声で)岩田」
岩 田「(いつのまにかいて)おはよう。呼んだ?」
バスの中
スマホを見ている鈴。
鈴 「(手話と声で)今日はバスが10分遅れて来た」
メッセージアプリで『ありがとう』のスタンプを一星に送信。
マロニエ産婦人科医院・スタッフ控室
鈴がいるところに、深夜が入って来る。
深 夜「おはようございます」
鈴 「おはようございます」
深 夜「(鈴に背を向けている)」
鈴 「(手話で)医者、1年目」
深 夜「(振り返り)何かおっしゃいました?」
鈴 「別に」
深 夜「あ、すみません」
鈴 「……言った」
深 夜「え?」
鈴 「(手話と声で)医者1年目」
深 夜「先生、手話できるんですか!」
鈴 「ぜんぜん、入門コース入りたて」
深 夜「昔、妻と手話のドラマにはまったことありました」
鈴 「奥さんと……」
鈴の回想
鈴の脳裏にフラッシュバックする深夜の話。
3話より、深夜の自宅アパートで。
深 夜「10年前、妻と子どもを亡くしまして……」
鈴 「……!」
深 夜「何だか現実だと思えなくて、涙も出なくって」
鈴 「……」
マロニエ産婦人科医院・スタッフ控室
鈴 「奥さんと見た手話のドラマって、トヨエツの?」
深 夜「ええ、あれ見て、僕らも手話を覚えようって、挑戦したんですけど、2人とも、すぐ挫折しちゃって」
鈴 「そっか」
深 夜「今も覚えてるのは(手話と声で)ありがとう、と自分の名前くらいです。(手話と声で)佐々木深夜」
鈴 「……!(やりつつ)佐々木!」
深 夜「佐々木小次郎の佐々木です」
鈴 「佐々木。佐々木!」
深 夜「(手話の話で、いつになく弾ける鈴を、かわいいと思う)……(手話と声で)午前、午後、深夜です」
鈴 「(手話と声で)わたしの名前は雪・宮・鈴」
深 夜「(声と手話で)雪宮鈴」
いきなりチャーリーが入って来る。
チャーリー「イェイイェイウォウウォウ。今、先生達、踊ってたすか?」
鈴・深夜「は?」
チャーリー「(奇妙な真似)こんなこんな~」
深 夜「手話で、雪宮先生の名前を教えてもらってたんです」
チャーリー「え~テンアゲ! じゃ、チャーリーはどうやんすか? 添寝士は?」
犬山、蜂須賀、伊達が入って来る。
犬 山「正憲! 昨夜どこ行ってたんだ!」
チャーリー「本名で呼ぶな。働いてたんだよ、オールナイトで、鶴子」
犬 山「とっとと帰って、シャワーして寝ろ、クソ息子」
蜂須賀「一晩でどんだけ稼いだん、チャーリー」
チャーリー「 添寝一晩8時間コースで8万円」
一 同「……!」
チャーリー「で、 差し入れ買って来たからさ、みんなに、揚げたてコロッケだよん」
蜂須賀「8万稼いでコロッケかよ」
伊 達「わたしずっと聞きたかったんですけど、添寝士って、ホントにホントに並んで寝るだけなんですか?」
チャーリー「ウェイ。添寝士は孤独な現代人の心を癒すエンジェル。ひとりで寝るのが寂しい人のライフセーバー」
蜂須賀「わかるけど、お前とは寝ない」
鈴 「需要があるんだ、そんなに」
チャーリー「オールナイトはそんなにないす、2 時間コースが定番っす」
深 夜「チャーリー君は、特殊な才能があるんですね」
チャーリー「 男の方もOKですよ、先生、一度お試ししませんか?」
深 夜「へ……!」
犬 山「黙れ、バカ息子!」
チャーリー「(流して)鶴子元レディースだから、すぐカッカすんだよね」
一 同「レディース!」
チャーリー「え、 知らんかった? ピンクエンペラー」
蜂須賀「ピンクエンペラーって何」
と、麻呂川が入って来る。
麻呂川「佐々木先生、スクラブが逆だよ、イェイ」
深 夜「は……!(と慌てて着直そうとする)」
犬 山「(急に切り替え深夜に)今日、外来混んでますんで、早目に開始して下さい!?」
深 夜「はい、すぐ行きます」
蜂須賀「師長ピンクエンペラーって何すか」
犬 山「(無視して)コロッケは後、仕事仕事、院長も病棟回診ですよ」
麻呂川「あそうなの? コロッケって何?」
犬 山「それは後!」
麻呂川「あそうなの?」
みんな犬山に押し出されて行き、鈴とチャーリーだけになる。
チャーリー「(コロッケを差し出し)1個食べない? 先生」
鈴 「昼になったら冷めちゃうもんね」
蜂須賀「(戻って来てチャーリーに)え、師長レディースなん? 怖いんだが」
チャーリー「わかりみ深し」
鈴、コロッケをかじりながらスマホを出し、一星にメッセージを送る。
『添寝士って手話、どうやるの?』
駐車場~ポラリスのトラックの中
トラックの前、出発直前の一星と春。
春 「やべ。(手話で)忘れ物」
春、事務所に戻る。
一星だけトラックに乗り込むと、スマホに鈴からメッセージ『添寝士って手話、どうやるの?』
一 星「……?」
一星が返信『何それ?』
鈴『人に添寝してあげる仕事。添寝士』
星『鈴、添寝が必要なの?』
鈴『いや、師長の息子が添寝士なんだけど、手話でどうやるのかなって思っただけ』
一星『後で動画送る』
『週末のデート、忘れんなよ』
『(ビシッみたいなスタンプ)』
一 星「……」
いそいそトラックに乗り込んで来る春。
そんな一星を見て。
春 「……?」
一 星「(スマホで『添寝士』について調べる)」
『添寝サービス、料金相場は2時間2万円程度』
一 星「……!」
マロニエ産婦人科医院・外来診察室
患者(佐藤うた、実は春の妻)と話している深夜。
診察室には蜂須賀もいる。
うたは、キリリとしたスーツに身を包んだ、いかにも仕事ができそうな雰囲気の女性。
深 夜「妊娠6週目ですね。おめでとうございます!」
う た「……」
深 夜「予定日は今年の9月29日になりますね」
う た「そうですか(メモする)」
深 夜「これからつわりが出てくると思うんですよね。そういう場合は、食事を冷たくするとよいですよ。気持ち悪いからって食べないと、赤ちゃんにも栄養が行かないので。ね」
う た「はい」
深 夜「次回の診察は2週間後になります。けど何かあったら、いつでも電話して相談して下さいね」
う た「……」
深 夜「(うたの顔を見て)あの……何かご不安なこと、ありますか?」
う た「……いえいえ大丈夫です。ありがとうございました(と立つ)」
深 夜「あっ……どうぞお大事に!」
同・受付~待合室
浮かない顔で帰って行くうた。
春の妻とは知らないが、待合室を通りかかった鈴は、うたの浮かない表情がひっかかる。
鈴 「…………」
同・屋上
昼休み。ベンチで食事をしている鈴。やって来る深夜。多めの食事をまた買って来ている。
鈴 「……佐々木先生、1個ちょうだい」
深 夜「あ……どうぞ……(鈴の気遣いがわかり)……ありがとうございます」
鈴 「ん?」
深 夜「……」
鈴 「……」
深 夜「あの。午前中の患者さんに、妊娠を告げても、ニコリともしない人がいて……」
鈴 「あー。まぁ喜ばしい妊娠ばかりじゃないしね」
深 夜「不倫の末の妊娠とか、経済的事情とかですかね……おめでとうって言ってしまって、気まずい雰囲気になりまして」
鈴 「そういう事情は、医者には関係ないから」
深 夜「……」
鈴 「わたし達がやるべきことは、妊婦さんの体調を的確に診断すること」
深 夜「は……」
鈴 「産むも産まないも、生き方の選択は本人の自由だからさ」
深 夜「………そうですね………」
* * *
―ー妊娠が発覚するも、浮かない表情のうた。そこに隠された悩みとは……。続きは本誌にてお楽しみください。
星降る夜に
テレビ朝日火曜よる9時放送のドラマ『星降る夜に』のシナリオブック。
感情を忘れて孤独に生きる産婦人科医と、音のない世界で自由に生きる遺品整理士。
対照的な2人が織りなす大人のピュア・ラブストーリー。